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となりの悪魔  作者: 錦燈籠
名前のない前奏
8/16

Karte―世界―

途中地図っぽい挿絵ありますが、地名とか書いてないです。

美貌の青年が目の前にある状態でベッドで寝ていた理由と経緯を思い出して、ようやく頭もはっきりしてきた。

なぜだか妙に気怠いのは気のせいだろうか。

それにしても。

(動けない…)

起き上がろうにも頑丈に拘束(としか言いようがない)されていて、抜け出せない。

無論、動けない。

どうしようか、まさかこのままこの男が目を覚ますまで、この整った寝顔を見続けろとでもいうのか。

「……」

6年余りを、善くない記憶とともに過ごした人間の顔など、正直見飽きている。

もう自分ももう一度寝てしまおうか、とその時だ。

ぱちりと瞼が開いて青い瞳が少年を見る。

「おはよう。よく眠れたかな?」

返答に困った。

「…」

何も言わないでいたら、返答を期待していたわけでもないらしく、少年をしっかり捕まえていた腕をあっさりと解いて、のっそり起き上がった。

少年も続けて身を起こす。

堅い床ではなく柔らかい布団の上で寝たためか、今までよりも体を起こすのが軽い、ように感じる。

しかし、直後に僅かな怠さがきた。

あまり気に掛けず、青年に視線を移す。ヴァルゲンは窓の外を見ていた。

「この分じゃ、まだ昼前だね」

昨日眠りに就いたのは日が落ちてすぐのあたり。つまりほぼ夕方。

そんな時間に就寝したにしてはかなり眠っているのではないか。

今までこんなに長く・・・・・・寝ていたことはない。

どんなに眠気が残っていようが日の昇り出さないうちから容赦なく叩き起こされて家畜小屋の掃除、庭の草むしり、屋敷の仕事をさせられていたから。

「…つかいのへんじって、いつくるの」

これ以上は苦痛の記憶も思い出しそうで、質問でその思考を遮った。

ヴァルゲンは「ん?」と顔を向けて、

「今日の夕方かな。主に夜に行動するから」

と答えた。

夕方。それまで随分時間があるな、と思う。

何をして時間を潰せばよいやら。

「それまで何か、使えそうなものでも探そうかね」

「使えそうなもの……例えば?」

「食糧とか」

そのまま部屋を出ようとするヴァルゲンの後に、今回はついていく。

正直、少年もこの城がどういうものなのか気になっていた。

「おや、ついてくるのかい」

一人で出歩くには広すぎるだろうことは予想がついた。昨日この男に担いで運ばれた時、地下室から今の部屋に辿り着くまでに結構かかっていたから。

一人で好き勝手に歩き回って迷子、は洒落にならない。

「ここ…どこにあるのかわかる?」

「わからないねぇ」

からかいではない、本当に判らないらしい。

廊下を結構歩き、階段をいくつか降りた。

そのうち一際大きくて広い廊下の先に、とても大きな、ともすれば巨大な扉が見えた。

(…こんなに大きい意味ってなんだ…)

「開いた口が塞がらない、といった感じだね」

「…とびらは人が通れたらじゅうぶんだと思う」

「ふむ、確かに。幅はともかく、この高さじゃまるで巨人族を歓迎しているみたいだ」

「キョジン?」

「…本当、何も知らないんだね」

世界にある様々な種族の一つだよ、と教えてくれた。

どうやらこの巨大な扉は、大人一人でどうこうできるものではないらしい。

踵を返す。外に出るなら他に出入口があるだろうから、と。

しかしそれは後で探すつもりらしい。

城の天辺近くだろう階に上がり、そこの中央に当たる部屋の前まで来た(下がったり上がったりで、少年はここまでで完全に息がきれている)。

入ると、左右の壁がそのまま本棚になっていて、厚みのある本がぎっしりと詰められている。

入口と対する正面の壁には大きな額縁に収まった、何かの図絵が掛けられている。その壁を背にするように椅子が大きめの机と置かれている。

「書斎か、もしくは執務室だね」

「?」

「書物…いろんな物事を記録してあったりするものを置いておく部屋だ。この程度の広さだと書斎と呼ぶ。けど、もっと大きくて、建物そのものがそうなっているところもある」

「へえ」

「図書館というんだ。いつか連れて行ってあげようね」

いまからそれが楽しみのように笑って言う。

「…オレ、字読めないよ…」

「教えるから」

そう言って、図絵のかかった壁に近づく。

近くでよく見ると、図絵には小さな文字らしきものがちらほらとあちこちにある。


挿絵(By みてみん)


「世界図か。丁度いい」

「何が」

「さっき、世界には様々な種族があると言ったろう?これをつかって説明しよう」

ヴァルゲンは世界図とそう呼んだ図絵の前に立ち、少年を隣に立たせて図絵の右部分にある白抜きされた部分を指して少年を見る。

「白いのが陸、黒いのが海だ。陸と海の違いを?」

「ウミ、は水がたくさんあるところ…だよね?」

「…まあ、概ねそうだ」

図絵に向き直る。右部分を指したまま。

「こちらの大陸が、主に人間が大多数住んでいる。人族領域」

図絵の右部分の大きな白抜き、その上にある小さな白抜き、大きな白抜きに囲まれているかのような小さく散らばった白抜きを順に指し、まとめてぐるりとなぞる。

「この散らばったものは諸島群だ」

指が図絵の下部分に移動する。

「下のここに、獣人族が暮らす」

図絵下部分・左側の大きな白抜きと細長くつながって伸びて、端が膨らんだような部分を囲む。

「さっき言った巨人族はここらだね。魔族領域と獣人族の領域の、丁度真ん中あたり。挟まれているようにそこで暮らしてる。おかげで人間との交流が少ない」

「まぞく、ってこっちの?」

少年が左部分の大きな白抜きを指す。

「ああそうだよ、よくわかったね」

「今ヴァルゲンが言った。こっちがじゅうじん、の住んでるところなら、きょじんが住むところを挟んでるのと反対のこっちが、まぞくのところ、でしょ?」

「そうだよ。どっちがどっちかわかることじゃなく、そう考えられるのが賢いってことさ」

「…ふぅん」

「お前は賢いよ」

「……」

(それに、とても強い子だ)

最後、ヴァルゲンは敢えて言わないでおいた。

少年がもう少し成長したら、言おうと思ったからだ。

「さて、と。これだと世界がどういった形かは解るけど、肝心のこの場所が判らないね」

「そうなの?」

「これは全体図だから。どこかにここら一帯を切り取って詳しく記してあるものがある筈だよ」

そう言って、今度は机を弄りだす。机の上にあるものを引っ掻き回し、机の引き出しの中のものを引っ張り出し、お目当てのものを探す。

「ああ、これかな」

ヴァルゲンが一つの紙切れを手に持つ。

覗いてみると、紙の左端にやたらと多く文字が書き込まれていて、その一帯から少々ひん曲がった線が伸びて、一つの点と結ばれている。その点のすぐ傍にもまた文字がある。

ヴァルゲンはその点を指さす。

「これが、今いる場所」

「…この線、何」

「この左に書いてある街からここまで来るのにかかる道筋を表してる」

「…これが?」

少年の返答にクスリ、と笑って紙を折りたたんだ。

「人間域の大分辺境らしいね。近くの街は、小国の端っこらしいし、大陸としても端だから、一番近くの大国よりも獣人域の方が距離的に近いくらいだ」

どうやら、文字が書き込まれているのは街らしい。

「さっきも言ってたけど、じゅうじん、て何」

「ああ、それは…」

ヴァルゲンが少年の問いに答えようとした時だ。


くぅ〜…ぅ…


「…」

「…」

「……」

「……」

少年の可愛らしい腹の音が鳴った。

そういえば起きてからまだ何も食べていなかった。

「そうだった、朝ごはん、まだだったね」

ヴァルゲンが、ぺしり、と自分の頭をはたく。

口に出してはいないが、「やっちまったぜ」とでも言いたげな。

なぜか無性に何か言ってやりたくなったが、なんと言ってやればようかもわからず、結局何も言えずにおいた。

かわりに腹の音が再度鳴った。

流石に笑い出すヴァルゲン。

少年は笑い出したそいつを置いて、元いた部屋に戻ろうと書斎から早足で歩いて出て行った。

慌ててヴァルゲンが追い駆けてくる。


まだまだ夕方まで時間があった。


次でようやくお迎えが来ます。

あ、死神じゃねっスよw

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