性癖
ベタベタされるのが苦手だった。
どんなに仲のいいやつでも、四六時中一緒にいられると、そいつから離れたくなる。距離を置きたくなる。
だけど不思議なもので、自分からいくのは平気だった。むしろ自分からベタベタするのは楽しいくらいだった。
しかしそうかと思った相手にベタベタされるようになると、今まで俺から懐いていたことなんて嘘だったかのように、一気に心が冷めるのだ。
つまり俺にとって理想的な交友関係とは、相手からはベタベタされず、逆に多少素っ気ないくらいで、自分からは好きなだけベタベタする、そんな関係なのだ。
要するに俺はマゾなのか。
そんな自分の性癖に気づいたのは中三のとき。
高校に入って、章輔に出会った。
クールそうな見た目で、いいなと思った。
話しかけてみると、予想通りクールであまり喋らないやつだった。
最初のうちはほとんど会話にならなかったけど、めげずに話しかけているうちに少し打ち解けてくれたみたいで、相槌以外の言葉も返してくれるようになり、たまには章輔の方からも話しかけてくれるようになった。
クラスには同じ中学のやつもいたけど、中学ではほとんど喋ったことのないやつだったし、それよりも章輔といる方が楽しかったのでずっと章輔と二人でいた。
章輔の方も中学の友達がいるみたいだが、章輔はもともと誰とも喋らない一匹狼タイプなので、その友達と一緒にいることは全然なかった。
打ち解けてからも、章輔はクールなやつだった。教室移動も、班分けも、弁当も、帰りも、遊びに行くのも、全て俺の方から誘ってばっかりで、章輔から誘ってくれることは一切なかった。もちろん、俺以外の誰かを誘うこともしない。
俺が誘わないときは平然と一人で行動している。
だけど、誘えば必ず、あっさりと二つ返事で承諾してくれた。
俺はその態度が、距離感が、たまらなく心地好くて、もう章輔に夢中だった。




