028●そんなものを集めるの?
追われている。
ラベリアは強い。本隊と合流して、体勢を立て直さなければ。
ジュリアンは焦っていた。
峡谷を出たばかりのラベリアのゴメスが指揮する部隊を叩く、
という作戦は妥当だった。
こちらはすでに布陣を終えており、
展開できないままのラベリア軍に一定の打撃を与えた。
だが、すぐに反撃を受けた。
ヴァルター将軍でなくとも、有能な指揮官は多い。
ラベリア、恐るべし。
ラベンダー伯爵からの手紙が届いた。
なるほど、このまま我々が本隊と合流すれば、
敵の本隊と、今追撃されている部隊軍とが合流してしまい、正面会戦となる。
不利な形勢は変わらない。では、どうすれば?
なに?!・・・そんなものを集めてどうするんだ?
・・・役に立つのか!
なるほど、わかった!
ラベリアの分隊は、本隊との合流をめざしながら、
逃げるボレリア部隊を攻撃しつつ進軍する。
ラベリア軍の一軍を指揮するゴメスは笑った。
「逃げ足が速いな、ボレリア。まあ、それしか能がない。追撃しつつ、ゴンザレス将軍と合流。敵の戦力を削いでおくぞ!」
彼の脳裏には、本隊と合流し、
数の上では優勢なボレリア軍を殲滅する光景が浮かんでいた。
夜が明けようとしていた。
ゴメスはまだ来ないのか?
ゴンザレス将軍は何度も部下に問いただす。
我が軍は兵の質でボレリアを圧倒している。
だが、会戦にはゴメスの兵力が必要だ。
何をしているのか。遅い!
敵には増援が着いているようだ。うーむ・・・。
よし、ゴメス軍に一撃を与え、無事戻ってきたか!
よくやった、ジュリアン!ラベンダー伯爵からは、こちらにも手紙が届いている。
レタービーの連中、素早いな。
明朝、会戦だ。よく休んでおけ。
「どちらだ? どちらの道で逃げている?」
「ゴメス司令、斥候の報告では左に敵の逃げた形跡があります。点々と馬糞や折れた旗、剣などが見つかっています。」
「敗走とはみじめなものだな。よし、追うぞ!」
少人数で構成されたボレリア工作隊は、急遽集めた‘ごみ’を少しずつ撒いていく。
馬糞、破損した武器・防具、破れた旗や行軍中に不要となったもの。
その散布距離、通常の軍の行程で丸二日。最後は山で行き止まり。
ラベリアは合流を果たせず、会戦の時を迎えることとなった。
「馬糞を集めよ」は、カール・フォン・クラウゼヴィッツによって実行された。
彼はプロイセン王国の軍人、軍事学者である。
ナポレオン戦争の経験に基づき、戦争の本質を深く探求した。
彼の主著「戦争論」は、軍事理論の古典として名高い。
彼の最も有名な思想は、
「戦争は政治の継続」というもので、政治と戦争の不可分な関係を説いた。
また、「摩擦」や「戦場の霧」といった、戦争における不確実性の概念を提唱したことでも知られる。
彼の思想は、現代の戦略論にも影響を与えている。




