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世界線をこえて 第4部 001●タスケーテ宙域にて

「世界線をこえて 第4部」


記憶は交錯する。世界線は、まだ終わらない。


公国と名を変えた伯爵領。

しかし、その統治は、史上初となる公爵位を辞退した伯爵が行うという。


宇宙空間ではラベンダー提督の奇策が発動される。

また、連邦調査艦隊は、ドタバタと活躍を繰り広げる。


高校で語られるゴンタの夢に亜子は・・・?


そして、ついに人狼アキラの出生の秘密が!


交差する世界線で、あらたな冒険が始まる。


完全に不意を突かれた。

ブリッジの末席を占めるグレッグ少佐は、歯ぎしりをする。

この宙域にいたのは、我が第13艦隊のみ。司令艦は旗艦1隻だけの、1個艦隊だ。

敵はその10倍。彼我の力がこれほど違うのに、ラベンダー提督は取り乱さない。

アストラ・コンコード司令部より、応援が来るというが、それでも3個艦隊がせいぜいだ。


「提督、応援がくるまで待ちましょう。宙域を一時、離脱です。」

幕僚たちが言う。

いや、このままでええんか?

こんなん、いきなり後ろからスコップでどつかれるようなもんやん。

「進言!せめて、何発かだけでも、どつきかえせませんか?」

悔しさに堪えながらのわたしの進言に、ロイ・ラベンダー提督は、

いつもどおり静かに微笑んでお応えになった。

「そうですね。何もしないでいると、宙域の惑星に攻撃がかけられ、占領される恐れがあります。ノクティス・ドミナは無血占領はしないでしょう。略奪だけでは済まない。今、手をこまねいていると、ただの保身ですよね。迎え討ちましょう。」

提督の微笑みには、同時に不退転の決意が表れている。

「お国言葉が出るということは、グレッグ、本気の興奮ですね。その意気や、よし!ですね。」

提督!すんません!せやけど、10個艦隊、相手にとって、不足あれへん!


人類が地球を出て、もう数世紀。

その過程で、植民宙域がアストラ・コンコードとノクティス・ドミナの2大勢力に分かれ、それぞれが覇権を取ろうと小競り合いを続けている。

双方とも銀河連邦テラに所属しているが、取り巻くほとんどの星域はどちらかの勢力下にある。

エンジェラム星間連合は別格であったが。

今回のノクティスの、大々的な、あからさまな侵攻を、アストラは予想していなかった。


宇宙での戦いは物量がすべて。それが常識である。

司令艦1隻で操るのは、約1万隻の無人自律戦闘艦艇である。

各自律戦闘艦艇は、司令艦からの作戦指示を傍受して、最適な戦闘パターンを導き出す。僚艦の動きも自動入力して結果的に陣形をとり、最善の戦術を実行して対戦する。


敗戦が明らかとなれば、司令艦は避難・撤退する。自律艦も後に続く。無人の艦艇は司令艦の盾となり、追撃を遅らせることに使われるのが常だ。追撃する方も、自律艦をいくら攻撃しても、最終的・決定的勝利を得られないことを知っている。自軍の自律艦に敵の有人の旗艦や司令艦を追わせ、拿捕、ないしは撃沈しようとする。こうなると、勝利が確定した司令艦は、後方の安全宙域で高見の見物となる。


可哀想と言えなくもないのは、通信や自律航行ができなくなった無人艦艇である。それらの最期の思考は、中枢部分を内部爆破させること。外見上はわからないが、鹵獲されて機密を奪われること、敵の艦艇として再利用されることを防ぐためである。また、司令艦が明らかに航行不能、あるいは撃沈されたと自律艦艇が判断した場合、それらは自動的に同じ措置を取る。心無い者たちは、これを「セップク」と呼んだ。


今、自分たちの目の前の、圧倒的な戦力差をどうすればよいのか?

3個艦隊が来るまでの時間稼ぎしかない。その艦隊が来たとしても、戦力差は覆らない。しかも、増援が間に合わなければ?

ただ1隻の司令艦、すなわち旗艦。そのクルーたちは、覚悟を決めつつあった。


わたしが、この無謀ともいえる迎撃に必死で当座の指示を飛ばしていると、

提督が柔らかに言葉をかけてこられる。

「少佐、この旗艦に匹敵する大型自律艦、ありましたよね。」

「はい、提督。重攻撃艦が複数ありますが。」

旗艦を特定されない意味もあり、同型戦闘艦は多い。

「1つ選んで、作戦を実施しましょう。」

「えっ、1艦に特攻でもさせるんですか?!意味はないと思いますが。」

「そんなことは、しません。あたなのお国言葉でいうと、ちゃう、ちゃう、ですね。」


ロイ・ラベンダー提督は、静かに策を説明した。

幕僚たちは皆、唖然として言葉を失った。あまりにも常識外れだ。

「それは、ペテンみたいなものですね、提督。」

「うーん、定石外ですよ。」

「うまくいきますかねえ?」

「はまれば、すごいでしょうね。」

「でも、ある程度以上の物的損害は出ますねえ。我々の命も危ないかも。」

提督は静かに、しかし確固たる口調で言った。

「どのみち、通常の作戦では負けます。惑星上の国民を守るには、これしかないでしょう。お願いします。」

提督が部下に、お願いします、なんて聞いたことないでえ。わたしは、反射的に言う。

「わかりました!負かしといてください!やってみせますわ。心配ありませんて!やったる!」

幕僚たちも、燃える!よし、イテコマシタル!


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