天使ラブリエルと女神アイノミコト
(木下さんと付き合えますように)
近所の愛神神社でそんな願い事をしているのは、天田優斗。恋する中学一年生である。そんな優斗が恋するのは、木下仁保クラスのマドンナともいうべき美少女。
優斗はそんな木下さんに一目惚れをしてしまった。だが、優斗は好きな人に対する緊張のせいで、遊ぶどころか話しかけすら出来ないのだ。だから、毎日この神社に入り浸り木下さんと付き合うという願望を垂れ流す日々。当然神社に行ったところで何かが変わる訳もないのだが。しかしお参りをし続けて3年、高校一年生の夏休み木下さんと同じクラスになれたことに運命を感じながらお参りしていた時、
ピカッ
急に目の前が真っ白になった。
気がつけば僕は白い空間に居た。目の前に立つのは神々しい衣を纏った女の人。
そんな急な展開にもかかわらず、優斗の心は冷静だった。
(きっとここは天界で、この方は女神様に違いない)
そうと決まれば話は早い。優斗は、全力で地面(といっても雲の上)にあたまを擦り付けた。
「お願いします!僕と木下さんを付き合わせてください!」
だがその女神は血相を変え
「礼儀を知らんのか、馬鹿者。初対面で名も名乗らず頼み事をする奴が居るか。」
優斗を叱責する。ごもっともである。
「ご、ごめんなさい。僕は天田優斗です。それで、その、、、木下さんと付き合えますでしょうか?」
優斗が名乗ったことで女神はとりあえず満足したようだ。
「よろしい。儂はこの神社の大権現・愛命長年の努力褒めて遣わす」そして、三年間の優斗の努力を褒め称えた。しかし
「残念じゃが儂のような神は人界に関わってはならぬ、故に儂の力を使って付き合う、というのは無理な話じゃ」
女神は悲しそうに首を振る。これには優斗も絶望し、そのまま地面に倒れ込む。そんな優斗を見て女神は
「じゃがな、例えばワシの知人をお前に紹介するとしよう。そして、その知人がお主の恋を導く。これなら良いと思わんか?お主が勝手に助かるだけじゃろう。」
ん?、と女神は同意を求める。なんと!遂に僕の恋が叶うのか!優斗は再び目の輝きを取り戻した。嗚呼、優斗の三年間の努力は無駄ではなかったのだ。
「そ、それでお願いします。」
優斗は死に物狂いで、頭を擦り付ける。その瞬間、女神がニヤりと笑ったのは気のせいだろうか?
「分かった。それで良いなら良いんじゃが、、、少し困ったことになってのう、ワシの願いも聞いてくれるか?」
女神は申し訳なさそうに言った。だが優斗の決意は揺らがない。木下さんと付き合うためならどんなことでも。
「良し、了解じゃな!では、今日からお主はここの神主になれ。」
「え、神主?」
思わず聞き返してしまう優斗。何故ここの神主に成らなければいけないのだ?そんな優斗の心情を察した女神は、
「実は儂は姉上、、、恋命のところに帰らねばならぬ。その間そこをお主が管理してくれ、
勿論お前一人ではない、おい、ラブリエル」
「はーい!なんですか愛様?」
女神の影から現れたのは、サラサラとした長い銀髪に黒く輝く瞳を持った、14〜16歳くらいの美少女。名はラブリエルらしい。
「げ、なにコイツ。」
優斗を見てあからさまに嫌な顔をするラブリエル。どうやら初対面の優斗を警戒しているらしい。
「ラブリエル。此奴が儂が留守の間、神主を代行してくれる天田優斗じゃ。」
しかし、まだラブリエルは優斗を訝しんでいる。
「え、神主ってコイツ!?なんで私が人間なんかと同棲しなきゃなんねーの!?」
口振りから察するに、このラブリエルは神主がかわる、ということまでしか聞いていないらしい。
だが、ここまで露骨に拒絶されるとさすがに傷つく。それを見かねた女神は取り敢えず優斗にも、この美少女の素性を明かすことにしたらしい。
「お主にも紹介しよう、優斗。このちびっ子がお前の神職と恋路をサポートしてくれる天使ラブリエルじゃ。
ま、此奴を天使と見るかヒロインと見るか」はお主次第じゃがな。
そう言って性悪に笑う女神。いや、愛様。
「ヒロインって、、、僕の好きな人は木下さんです」
「愛様!」
優斗とラブリエルは驚き、抗議の声を上げる。ラブリエルに至っては顔を真っ赤にし、手で顔を覆っている。
「お、おいそこのお前覚えとけよ!お前みたいな人畜如きが私に釣り合うわけがないんだぞ!」
慌てふためきそれだけ言うと、ふん!と鼻を鳴らし、ラブリエルは逃げる様に愛様の影に入る。
「すまんのう此奴は色恋沙汰に疎くてな。他人はともかく、自分が関係しておる時はいつもああなるのじゃ」
愛様は笑いながら言う。
「まあ、お前の恋を導くだけなら出来るじゃろうが、、、惚れるなよ?」
「「なに言ってんですか」」
優斗は再び抗議の声を上げる。気づけば影から半身を出した、ラブリエルの声も被っている。
「はは、そんなに嫌か?まぁよい。では、お主は荷造りが済み次第この神社に来るのじゃ」
後は任せたぞ、と言う声と共にまた目の前が真白になり、気付けば神社だった。まるで今までの事が嘘だったかの様に、なにも変わっていなかった。ある一点を除けば。
「オラ、早く歩け」
優斗の影に隠れたラブリエルが怒鳴る。そのまま優斗は家に戻り、荷造りをして神社へと向かった。不思議な事に、両親は優斗の家出と取れる行為に対して、唯いってらっしゃいとしか言わなかった。(これも女神様の力なのだろうか)と、優斗は考え込む。すると、それを叱咤するかの如く優斗の影から手が伸び、尻をぺちっとはたく。ラブリエルである。要は唯のおしりペンペンなのだが、天使がすると物凄い威力となり、叩かれた優斗の尻はそのまま前にぶっ飛んだ。まるで鞭を打たれた馬かの様に、優斗は神社へと進んでいった。だが、優斗が進むと当然影の中に入ったラブリエルも進むので、優斗は結局神社に着くまで尻を叩かれまくった。そしてへとへとになり神社に着いた頃には、優斗の尻は真っ赤に腫れ上がっていた。
「ぷぷ、だっせー笑」
いつの間にか影から抜け出したラブリエルは笑って優斗を見下ろした。
(こいつ...本当に天使か?)
悪魔の様な天使を優斗は恨めしく見上げる。そんな優斗の考えを見透かしたの如くラブリエルは、
「おい、人間。その傷治してほしいか?」
その傷、と言うのはラブリエルが優斗をぶっ飛ばした時に、出来た腕の擦り傷だ。あまり血は出ていないが痛いらしい。天使の力を誇示するチャンスだと考え、ラブリエルは手を差し伸べる。
「いや、お前なんかなら助けてもらうくらいなら治らなくてもいい!」
優斗は、女神の前での謙虚さから一転し、ラブリエルを憎々しく睨む。どうやらお尻ぺんぺんが相当屈辱的であったらしい。
「そうか、じゃあ治さなくてもいいな。」
そう言うと、ラブリエルは優斗の傷を爪で引っ掻く。
「んぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ」
優斗は悲痛の声を上げる。傷口は抉られ、血が噴き出ている。
「痛だだぁだだ」
「助けてほしい?」
ラブリエルがニヤニヤしながら聞いてくる。
ここまで来たらもう、完璧に悪魔だが、優斗にそんなことを考える暇はない。
「助けてください!」
プライドなんてクソ喰らえだ。
「天使が傷を治すには、舐めなきゃいけないんだよねぇ傷を。」
ラブリエルは告げる。
「ここを、どうしてほしいの?」
ラブリエルは傷をつつきながら問いかける。
優斗はなりふり構っていられなかった。
「舐めて下さい!ラブリエルさん、そこを舐めて下さい!」
優斗は必死に叫んだが、ラブリエルはふーんと満足げに笑ったかと思うと、優斗の傷に触れた。すると、優斗の傷は見る見る塞がり、優斗の痛みも消えた。
「あれ、触っただけ?」
優斗は拍子抜けしたかの様に言葉をこぼす。
「ん、そうだけど?舐めなきゃいけないのは、下級天使だけだよ。もしかして、舐めて欲しかったの?」
ラブリエルはまたにやにやと笑う。
「そんなわけないでしょ!」
優斗の魂の叫びにラブリエルは、レコーダーを取り出す。そしてそのレコーダーの真っ赤なスイッチを押すと、
「「舐めて下さい!ラブリエルさん、そこを舐めて下さい!」」
優斗の声が流れ出す。優斗は瞬時に嵌められた、と思った。と同時に、土下座をした。
ラブリエルは土下座の優斗を見下ろし、
「私には逆らわない。毎日飯を作る。家事もお前一人。」
そして、
「明日までに、おまえの学校の制服を用意しておけ。サイズは、154。」
一通り要求を言い終えると高らかに笑い、
「今日は眠いからもう寝る。布団が準備できたら呼べ。」
そう言い残し、ラブリエルは優斗の影の中に消える。
こうして、特に助言を貰うわけでもなく、奴隷になる事でこの天使との同棲生活は始まった。




