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《最後の天使》

作者: 甘太郎
掲載日:2026/02/01

【開場】雪の中の出会い


舞台: ハルビン、真冬の深夜、大雪が降りしきる


零下三十度。


人気のない通りに、音もなく雪が舞い落ちているだけだ。


ぼろぼろの綿入れをまとった一人のホームレスが、雪道を艱難辛苦して歩いていた。誰も彼の名前を知らない。みんなからはアミンと呼ばれ、路上で半年を過ごしていた。


突然、彼は雪の塊りの中に、小さな何かを見つけた。


近づき、雪を払いのける。


子犬だった。


全身真っ白なその子犬は、もう凍えきって硬直し、目を閉じたまま微動だにしない。


アミンは、もう死んでいると考えた。


しゃがみ込み、手で子犬の身体を撫でてみた。


その時、かすかな息遣いを感じた。


「まだ……生きている……」


アミンはすぐに、自分が持つ唯一の清潔な肌着を脱ぎ、子犬をくるみ、胸に抱きしめた。


子犬は抵抗せず、ただ目を開いてアミンを見つめた。


その瞳は、清らかで、優しく、恐怖も疑いもない。


アミンの体温で、子犬はゆっくりと意識を取り戻し、そっと彼の胸に顔をすり寄せた。


その瞬間から、二人は互いにとって唯一のよりどころとなった。


---


【第一幕】寄り添い生きる


舞台: ハルビンの路上、その後数ヶ月


子犬を得て、アミンの生活に意味が生まれた。


彼は子犬に「ユキ」と名付けた。雪の中で出会ったからだ。


毎朝、アミンはレストランの前のゴミ箱を漁り、残飯を探した。


「ユキ、今日はお肉があるよ!」彼は嬉しそうに子犬に話しかける。


ユキはしっぽを振り、彼の手の中の食べ物を一心に見つめる。


アミンはいつも、一番良い部分をユキに与え、自分は残りを食べた。


「君がお腹いっぱいなら、それで僕は幸せだ。」


ユキは次第に元気になり、毛並みはつややかで、瞳は輝きを増していった。


二人は路上を共にさまよい、雪の中を共に歩き、寒風の中で共に暖を取った。


アミンはもう孤独を感じなかった。


彼にはユキがいた。


ユキにもアミンがいた。


---


【第二幕】「お前に飼う資格があるのか」


舞台: ハルビンの路上、二ヶ月後


冬はますます寒くなり、食べ物はますます見つかりにくくなった。


アミンの身体は弱っていったが、それでも毎日ゴミ箱を漁り、ユキの食べ物を探した。


ある日、通りかかった通行人が、アミンがユキを抱いているのを見て、眉をひそめた。


「おい、ゴミあさり。その犬を放してやれ。」


「お前にその犬を飼う資格がどこにある? 野良犬でいる方が、まだ生き延びるチャンスはあるんだぞ!」


アミンは顔を上げ、確かな眼差しで言った。


「俺のことを何て呼んでも構わない。だが、ユキは野良犬じゃない。」


「俺には何もない。」


「だが、彼は俺の唯一の家族だ。」


「たとえ俺が食べずとも、ユキを満腹にさせる。」


ユキは頭でアミンの手をそっと押し、まるで言っているようだった。「わかってるよ。絶対に離れないから。」


通行人はしばし黙り、ポケットからいくらかのお金を取り出し、アミンの前に置いた。


「犬に食べ物を買ってやれ。」


そう言うと、彼は背を向けて去っていった。


アミンはその背中を見つめ、涙を流した。


「ありがとう……」


---


【第三幕】最後の夜


舞台: ハルビンの路上、年の瀬の前夜


零下四十度。


ハルビンで最も寒い夜となった。


アミンとユキは、廃棄された段ボール箱の中に身を寄せ合った。


アミンはできる限りの防寒方法を尽くした:ぼろぼろの綿入れ、新聞紙、ビニール袋……彼は暖められるもの全てをユキにかけていた。


「ユキ、今夜はひどく寒い……でも、一緒なら怖くない。」


ユキは身体をぴったりとアミンに寄せ、まるで自分の温もりを伝えようとしているようだった。


アミンはユキを抱きしめ、静かに囁いた。


「知ってるか? 以前の俺は、自分が惨めだと思ってた。」


「金もない、家もない、友達もいない……」


「でも、君に会ってから気づいたんだ。俺は実は幸せなんだと。」


「君がいるから。」


「君は俺の唯一の家族だ。」


ユキは潤んだ瞳でアミンを見つめ、かすかに鳴いた。


まるで言っているようだった。「僕もだよ。君は僕の唯一の家族だ。」


---


【尾聲】最も純粋な天使


舞台: ハルビンの路上、翌朝


雪は止んでいた。


陽の光が雪原に降り注ぎ、きらきらと輝いている。


通りかかった通行人が、段ボール箱の中に寄り添うアミンとユキの姿を目にした。


二人はしっかりと抱き合い、安らかな微笑みを浮かべていた。


もう呼吸はしていない。


だが、二人の顔には苦痛も恐怖もなく、ただ静けさと幸福だけがあった。


通行人は立ち尽くし、やがて静かに帽子を脱ぎ、二人に向かって一礼した。


「天使だ……」


その瞬間、空に二筋の光が走ったかのようだった。


一筋は高く、一筋は低く、しっかりと寄り添っている。


それはアミンとユキだった。


彼らは最も純粋な天使となった。


天国で、彼らは今も一緒にいる。


彼らの瞳にも心にも、お互いしか映っていないから。


---


[[QRコード暴聾。天使、進化を見せびらかす。]]

「あなたの心の中に、まだ、静かに聴く耳は残っていますか」

「誰の目にも映らないところで、そっと灯る温もりを、まだ信じられますか」

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