初陣の発令、新たな出会い
「ロンド、ワルツ、オラトリオ、バラッド。以上四名に、ソラキアの森に巣食う漆黒の魔物討伐の任を与える。」
すっかり寒さも本格的になった冬の早朝。オスカー団長より直々の呼び出しで四人は団長室に集められていた。団長席の後ろ窓から見える空はどんよりと分厚い灰色の雲が広がっている。
「ソラキアの森には、すでに先遣部隊を向かわせたのだが、向かったものは皆、森に足を踏み入れた後、行方不明になっている。そこで、漆黒の魔物への対抗力を持つものの助力が必要との判断から、オラトリオ、君に白羽の矢が立った。団長である俺としてしては、正式な団員ではない君に重い任務を預けるのは気が引けるが、他に頼めるものがいない。」
オスカーは心底すまなそうにオラトリオに告げる。
「いえ、もう僕も十分に団に馴染んで来ましたから、お気になさらないでください。先遣隊の皆さんもご無事なら助けたい……。これ以上、犠牲を出さないよう。僕が討伐を果たします。」
「オラトリオ、君は本当に心根も勇者然としているな。いつもその姿勢には感心させられるよ。さて、それでロンド、ワルツ、バラッドの三名にはオラトリオの援護ならびに魔物討伐を頼む。」
各々が承知したと声を揃える。それを聞いてオスカーは続ける。
「それと、今回はもう一人同行してもらうメンバーがいる。風魔法と弓を使い頼れる者だ。お前たち四人に足りない能力を補ってくれる人材かと思う。ということだ、入ってくれ。」
オスカーの言葉とともに背後のドアがかちゃりと音を立て、紺のロングヘアに紫の瞳をしたミステリアスな雰囲気の青年が入ってくる。
「やっとお呼びがかかりましたね。お待ちしておりました。この季節の廊下、意外と寒いんですよ。皆さんどうも、僕はフーガです。オラトリオさん、バラッドさん、初めまして。ワルツさんとロンドさんはお久しぶりです。半年ぶり?ですかね?」
彼の容姿に見覚えがなく、ワルツとロンド両名はどこで出会ったものかと目を合わせ首を捻る。
「あぁ、えっと……」
そう言いつつフーガはローブのフードを目深に被り、顔を見えなくしてから声の調子や口調を変えて話す。
「ワルツさん。その後、お怪我はいかがですか?僕がワルツさんのご指示ない怪我のことも変に気を回して鷹に乗せて飛ばしてしまったので……さらに必要なかった負傷をされたと噂で聞きました。それもかなり重症と……その節は……申し訳ない……。」
「あなた!あの時馬宿でお会いしたの諜報の方ですか。いえ、あなたのせいではありません。私の計算が足りなかっただけです。伝えて頂きたくないなら、口止めなどすべきでした、気を使わせて申し訳ありません。それにしても……あの時はお顔もはっきり見えず話し方の雰囲気も違ったので、気付けませんでした。」
「いや、これが諜報のあり方なので、気にしてませんよ。相手に自分を印象付けない。こういう人間だと気取らせない、が諜報の掟で、それは団内の人間にあっても同じという方針でね。任務の特性上しょうがないんだ。だが、今回の任務から諜報から抜け、表の仕事をせよ命ぜられたので、名無しの諜報員から、実名であるフーガとして表の部隊、担当は戦闘要員として動くことになった。今の所、以降はこのチームに混ざるようにと指令をいただいているから、今回の任地から無事に戻れたら生活や以降の任務を共にすることになるので、どうぞ末長くよろしく。」
「えぇ、こちらこそ。助かります。どうぞよろしくお願いします。」
「弓と風魔法が使えるなら心強ぇ。願ったり叶ったりだ。よろしくな。」
「初めまして、僕は一応勇者の素質を授けて頂いていますが、まだまだ若輩者なので、どうかお力を貸してください。今後、よろしくお願いします。」
「風魔法か、またどう使うか擦り合わせていいか?俺は炎魔法だから、連携出来ることもあると思う。よろしくお願いする。」
それぞれ、挨拶を交わし、五人は顔を見合わせる。今回の任地は戦闘慣れしている守護団員から行方不明者も出ている。気を引き締めようとお互いの視線に語り合った。
「改めて皆さん、よろしくお願いします。気を引き締めていきましょう」
オラトリオの凜とした声に全員が背筋を伸ばした。オスカー団長に皆が向き直り、
「「「「「この度の任務、拝命いたします。」」」」」
声を揃えて礼をする。後ろ窓の外には小降りながらもふわふわと雪が降り始め、ガラスがほんのりと曇っていた。




