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やってきたのは札幌

 ということで。


「やってきたぞー! 札幌ー!」

「雪すごいっすねぇ」

「あらあら、吹雪なのね。面白いわぁ」

「我らが父よ、数歩先が真っ白なのですが……」


 最初から天候が前途多難だった。

 ナイアやシュブはともかくとして、ヨグは困惑した声でスクナに問いかける。足元の雪で、雪玉を作ってナイアに投げつけようとしていたスクナは、きょとりとした顔で。


「え、それが?」

「いえ……ダンジョンまではどうやって行くのかと」

「歩いてだけど?」

「歩いて……」


 ヨグのヴェールが凄まじくはためく吹雪の中での会話。むしろ歩き以外あるの? と言わんばかりのスクナの口調に、冗談じゃないんだなとヨグは悟る。正直、ナイアが言ったならば正気か? と一発張り飛ばすところだが。


「だって、ダンジョン三歩先だし」

「三歩……?」

「なるべく近いほうがいいかなって思って」


 ついでに天気調べたら吹雪いてるって出てたから。真っ白だったのは雪の壁だったからである。

 当然のように言われて、スクナが考えたうえでここに移動してきたことがわかった。我らが父の優しさに感謝、と思ったところで。


 スクナの横顔に雪玉が当たった。


 犯人は、にひひ笑いながら雪玉を増産していたナイアである。

 本人も当てる気はなかったのか、驚いた顔をしているし、何より目の前で行われた蛮行にシュブとヨグがキレた。


「ナイア、死んで詫びなさい」

「身罷ってちょうだい?」

「いや、当たるとかおもわごふっ」


 顔面に岩でも投げつけられたような衝撃で、ナイアは倒れた。鼻から鮮血を出しながら。

 クトゥルフ神話の生みの親であるラヴ・クラフト氏はタコやイカが嫌いだった。だからこそ、忌まわしいとされる邪神たちにその姿を与えた。アザトースも宇宙的な観点から見れば十分タコの分類だ。それは本体の話だが。

 そもそも化身とは、スクナのように一つならば本体の力が百%使える。逆にナイアのように「千の顔を持つ」と言われるほどに化身がいれば、使える力は小さくなる。

 つまり何が言いたいかというと。全身筋肉と言われるタコの筋力を余すことなく使った岩のような雪玉がナイアに当たった、ということだ。

 おそるおそる、シュブとヨグがスクナを見ると、酷く冷たい目でナイアを睨んでいた。


「喧嘩売ってんの?」

「まっさかー! 我らが父にそんな不敬しないっすよ!」

「雪玉当ててきた時点で十分不敬なんだけど?」

「いや、当たるとは思わなくて」

「ぼくが愚鈍だと言いたいのか?」

「いえ! 申し訳ありませんっす」

「次はないから」


 スクナの冷え切った視線にぞくぞくと身を震わせながら、深く頭を下げるナイア。ここまで反省しているならいいか、と見下げるのをやめた。

 スクナはナイアが恐怖に震えていると思ったが、実際は恍惚に震えていただけである。


「とりあえず、ダンジョン入る?」


 スクナの問いに、全員が頷いた。


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