ダンジョン配信
どうせなら椅子に座って食べようと、あたりにあるカラフルなパラソルが刺さっている円形のテーブルで、空いているものを探す。
案外食べ歩きのほうが多いのか、すぐに見つかったテーブルと四脚の椅子に座り。
甘いものが好きなスクナは濃厚な抹茶といちごの甘酸っぱさのコントラストを楽しんで味わっていた。
ナイアは早々に食べきり道行く人々を観察してはにやにやと嗤っていたし、ヨグは粛々と目を伏せて食べ進め、シュブは食べ終わると、クレープを包んでいた紙で遊んでいた。こちらは特に味わっていない側である。
「『ハロー! ミクニのダンジョン配信の時間だよ!』」
「うわ、びっくりした。なにあれ」
「でっかいテレビっすねー」
「本当だわぁ」
「驚きました」
時計の針が十三時を指した瞬間。
突如として立ち並ぶビルにつけられている、大型モニターの画面がつき、『ミクニのダンジョン配信』が始まった。上に赤い丸がついていることからリアル配信なのだろう。
歓声が上がったことから、かなり人気があることがうかがえる。
突然の大声とも言える音量に目を瞬かせたスクナ、驚くところはそこじゃないナイアとシュブ、顔色どころか声色一つ変えずに「驚いた」といったヨグに。
本当に驚いたのかよ、と奇しくもスクナたちのテーブルを横切ってしまった男は思った。
「『今回はここ! みんな見えてるかー!? 新一万円札で有名になった場所、深谷市! え、長ネギもあるだろうって? 知ってる知ってる、ふっかちゃん可愛いよな! ここで新しい小規模ダンジョンが見つかったってんで、オレが呼ばれたってワケ。存分にPRしてくれって言われてるからどんどん行くぞー!!』」
ウルフカットの細身の男……多分この男がミクニなのだろう。ミクニは氷で出来た崖のような場で、画面に手を降る。
「『いま三層目なんだけどさ、ここのモンスター、ガラスみたいで綺麗なんだよな!』」
ダンジョンは地下に潜る型が多い。にも関わらず、あたりは昼間のように明るい。これは、ダンジョン自身が光を発しているからだと考えられている。
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