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幻想星勇伝  作者: 五三竜
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第4話 次元眼の脅威

 カスミはそのモンスターを見た時、即座に魔法を発動した。


「”螺炎らえん”」


 そして、サッとその場から離れる。


「キマイラか。雰囲気がいつもと違うな……」


 カスミはブツブツと呟きながら更に発動式を2つ完成させる。


「今日は肉弾戦だ。”凱亜がいあ””走天そうてん”」


 発動式から光が放たれる。その光は瞬く間にカスミにまとわりつき、カスミの身体能力が向上する。


「あにあに〜、おんぶ〜」


 抱き抱えていたラミィがそんなことを言ってきた。カスミはゆっくりと着地をしてラミィをおんぶし直す。そして、サッとその場から離れる。


「振り落とされるなよ!」


 カスミはそう言ってキマイラに向かって走り出した。そして、発動式を描き武器を召喚する。


「”召喚サモンズ暗黒剣ダークネス”」


 カスミはその剣を握りしめてキマイラに向けて勢いよく振り下ろす。すると、キマイラは爪を立ててその刃を防いだ。


 さらに、キマイラはそのしっぽで攻撃を仕掛けてきた。カスミは空中で体を捻りその攻撃を躱す。


 地面に上手く着地をすると、そのまま走り出した。そして、動きを止めることなくキマイラの背後に回り込んで攻撃を仕掛ける。


 キマイラはそんなカスミを見て翼を羽ばたかせた。そして、その翼から小さな羽をいくつも放つ。カスミはその羽を全て剣で切り落とすと、右翼まで飛び上がり切り裂いた。


「まずは1つ目だ」


 カスミはそう言ってキマイラの前に立つ。キマイラはカスミを見て狙いを定めると、巨大な爪を振り下ろした。しかし、その爪をカスミは剣で受け止め、はじき返す。


「”稲光いなびかり”」


 カスミは発動式を即座に描き、剣を差し込む。すると、剣に光り輝く雷がまとわりついた。


「これで終わりだ」


 カスミはそう言ってキマイラに向かって走り出す。キマイラもそれを見て攻撃を仕掛ける。カスミは迫り来る爪や羽、尻尾を全て躱して足元に入り込むと、光り輝く剣を勢いよく振り下ろした。


 剣から巨大な雷が放射状に放たれ、剣の軌跡を残す。そして、キマイラの体は真っ二つに切り裂かれてしまった。


 切り裂かれたキマイラは紫色の粒子を放出しながら消えていく。


「フッ、ざっとこんなもんよ」


 カスミはそう言ってキメ顔で笑った。ラミィもそれを見て真似をする。


「さて、なんでこいつがここにいたのか調べる必要があるな」


 カスミはラミィを下ろすとそう呟いて当たりを調べだした。そして、キマイラが現れた場所をよく調べる。


「……なんで俺がこんなことしなきなならねぇんだよ。後で絶対アイツを殴ってやる」


 カスミはそう言ってため息を着くと、地面を触ったり気を触ったりしてなにか無いか探し始めた。


「あにあに?まだ?」


「俺はもう諦めたいんだけどな……」


 カスミはそう呟いて発動式を描いた。


「反応するかどうか……”探索たんさく”」


 カスミはそう言って魔力を地面に流し込んだ。その刹那、突如として魔力が暴走した。そして、地面が割れていく。


「え?え?え?」


 カスミは高揚する気持ちを抑えながら後ずさり、割れた地面の中を覗き込もうとする。すると、その割れ目から急に光が溢れ出てきた。


「え!?」


「あにあに!これは!」


 2人は光を目にして盛り上がる。そして、期待に満ちた笑みで光が収まるのを待った。しかし、いつまでたっても光は収まらない。


「……?」


 カスミはゆっくりと光の中を覗いた。すると、何も無かった。


「おぉい!なんやこれ!」


 カスミは割れ目に向けて叫んだ。


「あにあに?」


 ラミィが残念そうにカスミを見る。カスミはあからさまに落ち込んでいる様子を見せた。そして、帰ろうとする。しかし、ラミィは帰ろうとしない。何故か割れ目の中を見つめている。


「ん?どした?」


「あにあに、これなに?」


「え?……っ!?」


 カスミはラミィが指を指したものを見て言葉を失った。


「勇者の……残し物……」


 カスミは少し恐れながら呟く。そして、落ちていたフラグメントレリックを拾い上げる。


「……これ……」


 カスミはそれをよく見て分析する。しかし、これといって何かわかる訳でもない。


「何だこれ?ルーペか……?」


 カスミはそれを目に当てた。そして、ラミィを見た。しかし、何も起こらない。効力が無いのかもしれない。もしくは、使い方が間違っているとか、そのようなことなのかもしれない。


「……マジで使い方が分からん」


 そんなことを呟いていると、新しい事実を発見した。


「あ、これルーペじゃなくてモノクルだ」


 そう言って左目につけた。しかし、何も起こらない。


「……これマジで何なんだ……?」


 そう呟いていると、人の気配を感じた。


「……?」


 カスミは無言で振り向く。


「誰?」


 ラミィはそう聞く。


「……」


 しかし、答えは何も返ってこない。しかも、だんだん人影が見えてくるが、フードで顔を隠しているためそれが男なのか女なのかすら分からない。


「止まれ!」


 カスミはラミィを抱き寄せ相手に向かって叫ぶ。しかし、その男は全く聞かない。何も言わずに歩いてくる。


「止まれと言ってるだろ!」


「……」


 カスミはその人の様子を見て警戒した。そして、ラミィを抱き抱えて後ろに飛び退く。さらに、発動式を3つ描いた。


「”螺炎らえん”」


 3つの渦巻く炎が放たれる。その炎は謎の人に襲いかかる。そして、瞬く間に謎の人を覆い尽くした。


「……」


 その人はフードを脱ぐと男の顔が現れる。そして、その男は恐怖を覚えるほどの笑みを浮かべながらカスミを見ていた。その目には次元眼ディメンティアが浮かんでいる。


次元眼ディメンティアだと……!」


 カスミはその目を見て顔をしかめる。そして、地面に着地すると再びラミィをおんぶした。そして、強化魔法をかけ直して男と対峙する。


「悪いけど、その目に着けてるやつは渡せないんだ。奪わせてもらうよ」


 そう言って男は次元眼ディメンティアを浮かべる両目を黄色く光らせる。


「渡せないな。お前みたいな正体不明なやつに」


「……フッ、渡してもらうなんて言って無いよ。奪うって言ったんだ。それと、正体不明はお互い様さ。ただ……今回は例外でね。僕は君達を知っている」


 男はそう言ってニヤリと笑う。そして、手を挙げて言った。


「歯向かうなら……容赦はしないよ」


 そして、男の腕が振り下ろされる。すると、カスミ達の少し右にずれた場所がごっそりと無くなった。


「「「っ!?」」」


(これが次元眼ディメンティア……!)


 カスミはそう呟くと発動式を2つ描く。


「効かないよ!」


 男はそう言って腕を横に振り払った。すると、カスミが描いた発動式だけ消される。


「クソッ……!」


 カスミは男の攻撃を見て即座に後退した。そして、相手に背を向けないようになるべく離れる。


(なるべく範囲外に……)


「っ!?」


 その時、唐突に男の姿が消える。そして、カスミの背後に現れた。


「僕の勝ちだ。死にたくないならそれを渡してくれるかな?いや、殺したくないから渡してくれよ」


 カスミはそう言われて直ぐに振り返る。しかし、その瞬間に首を掴まれてしまった。


「グゥッ……!」


 男は狂気じみた笑みでカスミの首を絞める。


「言ったろ。殺しはしない。ただ、それを渡しさえすればいいんだ。それに、お前にはそれは必要ないだろ?」


「……っ!?」


 男はそう言った。しかし、カスミにはその意味が理解できない、そもそも、このフラグメントレリックの使い方が分からない以上、渡すのはかなり危険だ。


「あにあにを離せ!」


 ラミィがそう言ってカスミの首を掴む男の腕を殴る。しかし、男には全く通じない。


「お嬢さん。やめておいた方がいいさ。それに、君は目の力を使えないし、使わない方がいい」


 男はそう言った。よく見たらラミィの目に時間眼クロニクルが浮かんでいる。


「やめ……ろ……!ラミィ……に……手を出すな……!」


 カスミはそう言って発動式を描く。そして、左目に幻影眼ファントメイトを浮かべた。


「無駄だ!」


 男はそう言って発動式を次元眼ディメンティアで見た。すると、発動式があからさまにおかしくなる。


「発動しない方がいい。暴走するだけだ」


 カスミはその言葉を聞いて何も出来なくなる。


「さぁ、渡せ」


 男はそう言って次元眼ディメンティアでカスミの目をのぞき込む。


「……!くれ……て……やる……よ……!」


 カスミはそう言って左目につけていたフラグメントレリックを投げ飛ばす。すると、男はカスミを離しフラグメントレリックを取りに行く。


 カスミは唐突に離されたため、尻もちを着いた。その勢いでラミィも地面に尻もちを着く。


「フフ、物分りが良くて助かるよ」


 男はそう言って落ちたフラグメントレリックを拾った。カスミはそんな男を見ながらすぐさま立ち上がり、ラミィを抱き抱える。そして、振り返り発動式を描いた。


「そう来ることは分かっていたよ!」


 男はそう言って次元眼ディメンティアでその発動式を見た。すると、発動式がぐにゃりと歪む。


「それはこっちのセリフだ!」


 カスミはそう叫んで振り返る。そして、ラミィを守るために発動式を描いた。


 そして、発動式は暴走する。発動式は眩い光を出して当たりを見えなくさせる。元々は雷玉を1つ放つはずだったものから四方八方に雷の弾丸が飛ばされた。


「っ!?しまった……!」


 男は思わず後ずさる。そして、光から目を守るために腕で覆い隠した。


「……」


 ……それから少しすると光は収まり始めた。辺りが見えるようになると、もうそこにはカスミの姿は無い。


「逃げたか。まぁ、目的のものは手に入ったからね。またどこかえで会おうよ。カスミ……」


 男はそう言ってニヤリと笑うと、振り返りどこかに向けて歩き始める。そして、手にしたフラグメントレリックを空に掲げた。


「これで……僕も……」


 男は先程よりさらに強く笑みを浮かべた。

読んでいただきありがとうございます。

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