天草討伐
健軍駐屯地を飛び立ち、南西に進路をとる。
「で、ゴードン・ダックワース少佐はどうして?」
「魔法銃だな」
「まあ、押しかけてきそうって思ってたけど」
「正式にMCIを退職して、自衛隊に入隊希望をだした。芦田中将が特例で認めてくれた」
「自衛官ってことか。MCIの契約違反で違約金高いんじゃね?」
「客は自衛隊だ。必要な数も残した。移籍だなって認められた」
「メジャーリーガーのトレードか」
「ああ。で現在は、特殊防衛連隊機動偵察隊に仮配属。だが海兵隊を作れと言われてもいる」
「え?」
「日本の海兵隊、水陸機動団をどうするかはまだ未定だが、特殊防衛連隊海兵隊を組織しようって方向だろう」
「……」
「で、オレはケント少佐の部下な。オレに付いてきたヤツラと一緒に正式編入したい」
「歓迎するよ」
「サンキュー・サー」
「同階級だろ。それにゴードンが先任だ」
「オレは少佐のままで入隊を認められたが、ケント少佐は中佐に昇進って聞いたぞ?」
「はあ? 俺は聞いてないぞ」
「芦田中将の本音は、統合幕僚長にしたいって言ってたな。自衛隊じゃ最高位だろ?」
「やめてくれ」
いやいやいや。なに考えてんだ芦田さん。
そういえばBAR桜舞で「征夷大将軍じゃなく征魔大将軍だな」って、ボソッと言ってたか。「幕府を開く……」とか、時代劇好きの戯言と聞き流していたが。
本気じゃないよな。
天草の湧き穴が見えてきた。上天草市、市街地横の切通しに湧き穴が開いている。
天草四郎像の辺りか。周りの人家は焼け崩れているのが多い。
ゴブリンに囲まれ戦っている自衛官が見える。魔法が使えてる?
「ルーサー! 低空で旋回! 氷弾で掃射する!」
「Copy Major!」
「MT、発砲を許可する! 人間には当てるなよ!」
「了!」
氷弾!
自衛官も自警団員もいない湧き穴開口部、ゴブリン、オーガ、オークを斉射する。
障壁!
魔物の追加が出てこないよう開口部を塞ぐ。
ゴードン少佐が発砲を始める。その魔法銃はどうした? ってそいつが目的だったな。
ルル軍曹とクロウド曹長も、単独でいる魔物を魔法銃で撃ち抜いていく。
「ルーサー、ホバリングでMTを下ろせ! 下りたのを確認しだい上空待機! オランバディが近くにいそうだ!」
「了!」
「MT、降下後、各自の判断で自警団員、自衛官を救出!」
「了!」
ゴブリンたちの動きは氷弾で混乱したものになった。
騒音を撒き散らしながら空から来た黒い塊。ブラックホークから攻撃されたことを理解できずに、奇声をあげて右往左往しているのがほとんど。
その中でもオークは散開していたものが、盾を持つ個体のもとに集まり始める。
氷弾で爆ぜるゴブリンを見て、オーガがメイスを闇雲に振り回す。近くのゴブリンが殴られて血を撒き散らし飛んでいく。
MTが降下して散開、攻撃し始める。
俺も魔法銃を撃ちながら、自警団員、自衛官で倒れている者に障壁をかける。けが人に喰い付いていたもの以外が撃ち倒されていく。
俺の魔法銃は魔力マシマシで魔物を倒せてるが、MTは倒すのに数発必要だ。
うん、ストッピングパワーが足りないな。もっと大口径かパラベラム、ダムダム弾か?
負傷者を囲んで守っていた自衛官からも氷弾が飛んでいる。教練は上手くいってるようだ。
「遮蔽物にゴブリンが隠れている! 油断せずツーマンセルで確実に減らせ!」
「了!」
ゴードン少佐もうまい射撃でゴブリンを狩っている。さらにピンポイントでオーガの顔に集弾し、たおす。さすがだな。
ルルがオークを狙っているが、金属製の盾を抜けないでいる。だが盾は全身が隠せるようなスクトゥムじゃない。
ルルが気がついてくれたようで、盾からはみ出している手足を狙いだした。
クロウドとアカリが周囲に逃げようとするゴブリンを掃討していく。
湧き穴を警戒しつつ、魔力感知を発動。オランバディ三頭を探知。ブラックホークを狙っている。
誘導氷弾で三頭を撃ち落とす。
MT到着十分で粗方の魔物を討伐し、散ったゴブリンを追い詰める。
ハイオークはいないようだ。
「ケントさん!」
迷彩服の自衛官から声がかけられた。
「モナミさん?」
「やっぱり、ケントさん! 戻られたんですね」
「ケントさん!」
「ジローもいるのか。ふたりとも自衛官か」
「はい! 魔術師候補生です!」
そう言ってモナミさんとジローが敬礼をしてくる。答礼して続ける。
「まだ油断はするな。魔力は残っているか?」
「はい!」
「僕もまだあります!」
「よし! では衛生員を守ってくれ。氷弾はまだいけるな」
「了!」
魔術師候補生か。正式任官はまだってことだな。頑張れよふたりとも。生き残れよ。
旧軍は自軍兵士を殺しすぎだ。戦争に負けて当たり前。
兵士は生きているから戦力になるのだ。「生きて虜囚の辱め」とか「潔く一死を遂げ、以て日本男児の名誉を全う」などとは愚者の狂気だ。捕虜になった時に拷問で情報が漏れるのは、織り込み済みだろうが!
残敵を警戒しながら、湧き穴に向かう。
障壁を解除し、奥からの魔力を探る。やはり20mぐらいまでしか探知できないか。
サリーがくれたウェーハのサンプルは、300mmの切り分けていないウェーハ円盤。こいつ一枚を式神くんに仕立てる。和紙よりも魔力を込められ、記録装置としての分身ではなく、感覚まである程度盛り込めた分身になりそうだ。ドローンとしての動きも良い。
ウェーハ式神くんを湧き穴に突入させる。
暗い洞窟のように感じるかと思ったが、おかしい。天井や床、壁があるようには思えない。
亜空間収納のような亜空間とも違う。全くの別空間か?
進んでいることはわかるが、暗闇しか感じない。距離もあやふやになってくる。
いきなり、パッと光の中にでた。
眼前に蠢く魔物たち。高度を取ると平原が広がり、遠くまで一面魔物たちがいる。天幕や焚き火がある。宿営地か。
突然、炎が飛んできた。体が燃えあがる。視覚が真っ赤に、ついで真っ白になり意識が遠のいた。
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