富国強兵
近藤料理長の美食を堪能した翌日、詳細を詰めるべくサリーの研究室を訪れる。
「まず欲しいのは、昨夜話した魔力を保持できる素材だな。新半導体のウェーハが良いじゃないかと考えてたんだが」
「用意したアル。使用目的はなにアルか?」
うーん、どうするか?
新しい式神くんを量産したいんだよな。式神くんの存在をカミングアウトする必要があるか。けどなぁ。盗聴器、盗撮器の量産をバラすのは、手の内を明かすことになる。迷うな。
もう一蓮托生か。信頼を得るには、まずこちらが信頼しないといけない。
「こいつだ」
「……符籙? 紙?」
式神くんを手渡した。符籙ねえ。中華のお神札? 呪符だったけ? あのピョンピョン跳ねる妖怪の額に貼ってあるやつね。
「陰陽師の形代をイメージしたものでね。魔力を込めて俺の分身としたものだな」
「ケントの分身……」
「魔法で情報収集しようと考えてな。色々試したんだ。初めは自分で潜入しようとも考えたが無理がある。必要になったのは二歳の時だからな。それまでに何度か暗殺されかけた」
「え? おい、待て! 二歳の幼児を暗殺って」
「それ以前からだな。生まれてすぐに殺されかけた」
「……」
「それで身を守るために新生児で魔法を覚え、サバイバルのために防御を始めたんだ。だが暗殺が止まない。で、根本を断たなきゃダメって結論になって情報収集が必要になった。それが二歳ごろだな。二歳では肉体的に自由がきかない。で、諜報活動、つまりは盗聴や盗撮だな。そのために手に取れる布から始めて、『式神くん』って名付けたこんな形代になった」
「……わかった。それでこれがウェーハのサンプルだ」
用意してもらったウェーハに魔力を通してみる。和紙よりも機能を込められそうだ。
「こいつでいい。できる限り薄くして、大きさは五mm角で、数は一万個、枚か、用意してくれ」
「作らせる」
「コイツ、式神くんのことは内密にな。俺とサリーだけにしておいた方がいい」
「将謀欲密」
「え? 将謀欲密? ああ、謀は密なるをもってだな。で、次は魔法エンジンだが、飛行する機能を一から設計するには時間がかかる」
「既存の?」
「ああ、有物をガワとして使えば工数が減らせんじゃないか?」
「一から飛行機を設計するよりは減らせるアルな」
「空自のF-35Bを三機持ってきた。コイツを実験機に使ってくれ。それから陸自のブラックホークと空自のC-2、チヌークなんかを用意する。F-35Bはフライトシミュレーターもある。初号機はエンジンと電子部品の換装にしておいてくれ」
「急がせるアル」
「まあブラックホークのように新半導体なんかで換装してもいいんだが、魔法エンジンがいけるとしたら、例えば大型コンテナにエンジンつけて飛ばす、なんてのでも良さそうだ」
「……あとは空力制御なんかネ」
「で、車両関係はおいといて、自衛官の装備だな。銃器の他に、鎧が欲しい」
「鎧?」
「魔力素材で防具を作れば安全だと思う。背中に超小型魔力ジェネレーター装備の兵士用パワードスーツも有りだな。なによりシールドや暗視装置、無線、レーダーの動力として使えるだろ?」
「……研究員にSF好きのアニオタがいるアル。ようやく役に立つかも」
「研究員な……全国から学者、技術者を送り込んでもらうことになっている。兵員輸送機と護衛戦闘機、パワードスーツの順だな。機動偵察隊用を先行してもらうから……機動強化服って呼ぼうか」
「魔力ジェネレータ―が魔力を蓄えたり発生させたりできれば、さらに応用がきくアルね」
「でだ、魔石の利用法、加工方法だが、魔術師教練を使ってだな……」
サリーとの打ち合わせ後は、ヂャンと芦田中将との軽いミーティングだ。
「まずは欲しい企業、工場のリストを用意してくれ。諜報員を潜入させる」
「……出来ますか?」
「そこは気にしなくていい。芦田中将は敵対勢力のリストを用意してくれ。そっちも諜報員を入れる」
「了」
「あとは魔法、魔力関係の市場開拓だな。新半導体のシェアを独占してくれ」
「独占ですか」
「ああ、新半導体Ver2.0でな。魔石加工を使ってコストダウン出来るだろう。粉末をウェーハに合成しなくても、直接魔石ウェーハを作る。安価で利益率はいいはずだ。サリーには製造方法を伝えてある」
「わかりました」
芦田中将の執務室隣室、副官たちの事務室が騒がしくなった。
ノックの音とともに返事を待たず副官が飛び込んできた。
「中将! 救援要請です! 天草の湧き穴に魔物多数!」
「詳細は!」
「ゴブリン50、オーガ10、不明10! 自警団、自衛官に負傷者多数!」
「魔法銃装備で部隊を向かわせろ! ケント少佐、でてくれ!」
「了!」
ヘリポートに走っていきながら、黒崎中尉に連絡する。
「機動偵察隊スクランブル! 出動だ! 5分で出動、ブラックホークででる! リペリング降下が必要になる!」
「了!」
「簡単でもいい、ミズキにお祓いを掛けてもらっといてくれ!」
「了!」
空自のスクランブルじゃないから、5分は無理だな。
ブラックホークで空爆、ついでリペリング、は器材を積んでないな。弓矢と槍、剣を投げられても当たれば損傷を受ける。低空侵入でホバリング、飛び降りて機動展開か。
搭乗後に機動偵察隊で簡単なブリーフィングをしている所に、巨大な黒い塊が走ってきた。
「オレもいく! 連れってくれ!」
「ゴードン? ゴードン・ダックワース少佐? なぜここに?」
「緊急出動だろう? 説明は乗ってからだ!」
「……いいだろう。命令には従えよ」
「サー・イェッサー!」
同格だろ?
「ルーサー! 出せ!」
「Oorah!」
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