BAR桜舞の夕べ
前話で「無茶振りが過ぎる」との感想をいただきました。
サリーは作者が思っている以上に「天才」のようなんです。
「済まない、ちょっと調子にのって詰め込みすぎたな。悪かった」
BAR桜舞でサリーに謝った。
反応が面白すぎたから、ってのは内緒だ。
今夜は芦田中将、中佐への昇進を承諾しない諏訪少佐、サリーとヴァレン・ス―、ヂャン・フォン・チー。作務衣姿のミズキと柴坂さん。黒崎中尉、井堀少尉。そして江島トオル。
自己紹介と乾杯の後で、別室に芦田中将とサリー、江島、俺が移って密談だ。
「一年後に予定されているものの話しをする。サリー、それまでできる限りで良いからな」
「……」
サリーが怖い目で睨んでいる。許しちゃくれないかな。
「そう恨みがましい目をするなよ。悪かったって」
「オレも恨みがあるぞ」
「お、伝言受け取ったか」
「おまえなぁ、ヤクザ宛の伝言役に検事を使うなよ。心臓止まるかと思ったんだぜ」
「そうだったのか。そこまで指定はしなかったんだがな。いや、すまんすまん」
「ちっともそう思っちゃいねえだろうが」
「話しが進まない」
「だな。全て同時進行だからなぁ。重要なのは、サリーの魔法軍備がどこまで実現できるかだ。優先順位としては魔法科学。次がコングロマリット。そして九州囲い込みだな」
「九州囲い込みは俺と自衛隊か」
「江島といっしょにな」
「まて!」
「これから起こそうとすることの情報を、九州から出さない。だから司法だ。警察庁、最高検察庁は市ヶ谷が工作を始めた。最高裁判所、裁判官たちは裁判で判断をするのが仕事だ。かなり後でもいいとしている」
「だからなんでそこに、ヤクザのオレが関わる!」
「……東京では警視庁が、国民に反逆している。民間人、市民を食い物にしている。ここでもだ。権力があると勘違いして好き放題だろ? どこぞの警察署長のようにな」
「……」
「県警もだ。警察権を間違って捉えている。だが、自分たちが振るっている権力には、何の根拠もないと知らない。暴力装置として機能していないからな。なぜ市民は警察官に従う? 武装した一番身近な人間だからだ」
「……だから、ヤクザか」
「今の警察官の武器は貧弱だ。刺股もって走り回るだけだ。ゴブリン剣を装備したヤクザの方が強い。自衛隊は魔物と戦争をして外敵から市民を守る。直接市民生活を守るのは警察だ。機能してないなら人員を組織ごと入れ替える。今夜は来てもらっていないが、九州管区警察局のトップ候補は選んである」
「自治体は?」
「農作業に忙しい。食うこと、食わせることで手一杯。後でもかまわない」
「……私は魔法科学に集中するアルよ。コングロマリットはヂャンに任せる。彼が適任」
「……予算管理できる人間をってか。いいだろう。M&Aの原資は自衛隊が持つ。強制合併、強制買収、接収だ。文句が出るだろうが、そこに江島警察と芦田自衛隊が出張る」
「心強いバックね。でもヂャンなら上手くやるね」
「注意すべきは五大商社だ。魔法科学を悟らせたくない。そのためにも囮が必要となるだろう」
「囮?」
「自衛隊がまとまって新たな動きを見せれば衆目を集める。相手が納得し、蔑み、目をそらせる囮。そのストーリーが動きだしている」
首都では政治家、知事、警視庁を手駒として大手商社が力を持っている。丸菱、六井、墨友、佐藤清、各紅の五大商社。利にさとい彼らは裏で手を組んでいそうだ。
彼らに悟られれば作戦が水泡に帰す。
勢力が強くなった警視庁。それを見て焦った自衛隊が弱小商社と組んで、湧き穴から産出される魔物素材を金に換えようとする。
しかし世間知らずの殿様商売で失態続き。
さらには陸海空三自衛隊、方面隊や部隊間でも勢力、派閥争いが頻発ってストーリー。
その際に弱小商社に騙され、必死になって役にも立たない魔石を集めているって笑ってもらう。魔石が最重要物資であることが隠せる。
「統合幕僚監部が了承した。情報本部で敵が混乱するよう仕向けている。それと今の報道関係は無視する。太鼓持ちだからな」
「だが、報道は必要だろう?」
「TV、新聞からの報道は途切れがちなんだろう? 今は全国民がスマホを持っている。報酬の受け取り、納税に必須だからな。で、商社、都知事、警視庁を追求している心ある弱小ジャーナリストを参加させて、新しいネット報道機関を作らせてる、情報本部がな」
「……しかし……いまさらだが……そんなことしていいのか?」
「安心しろ。……幕末の志士たち、思想は何だった?」
「……尊王攘夷?」
「魔物は欧米列強と同じく追い払えない。攘夷は無理だ。残るのは……」
「ほんとか?」
「必要な言質は取った。秘密裏に、詔も下賜された。錦の御旗をでっちあげる了承もな」
「こっちは囮を使うとして、天、いやその、彼らから漏れないか?」
「情報を持っているところからは、必ず漏れる。歴史上数々の『乱』が証明しているな。あちらは近衛に情報管理してもらう」
「近衛? 近衛家か?」
「いや近衛兵組織だ。皇居警察だな。彼らは警察庁に付属する機関になっているが、『警察官』とは呼ばれずに『皇居護衛官』と呼ばれる。全くの別組織だ。実質は警察ではなく『禁軍』『近衛兵』『親衛隊』『皇室騎士団』といったところか。知られてはいないが、独自の情報機関も組織している。そこに情報管理を担当させる」
「……ケント。お前は少佐のままか? 全てを指揮する将軍、征夷大将軍か?」
「話しはあったがな。だが、それは無理だ。俺は他国の王族。仮の国交は結んだ。外交官待遇のアドバイザーってとこだな。草莽の志士でもいいが」
「戦線には出てもらうぞ」
「もちろんだ。……もうひとつ情報がある」
「……あの和風美少女たちか?」
「美少女に美人さん。近寄りがたい雰囲気があるよな」
「だな。彼女たちは神社の人間だ」
「……神事が必要なのか?」
「うーん。俺たちがやろうとしているのは物質的な国民の救済と言えるな。だけど人はそれだけじゃあ安心できないだろ? 縋るものを欲する精神的な、魂の救済もないとな」
「……武将たちは神社仏閣を建立したな」
「まあ宗教を武器にしようってんじゃないんだ。サリー、魔力の測定機器なんてのは開発したか?」
「測る対象の研究、奥が深いアル。大雑把に、これじゃないかという未知の粒子を観測した、ような気がする、かもしれないと興奮している研究員もいる」
「不調のブラックホークをお祓いしてもらったときに、ごく僅かながら薄く魔力が機体全体を包んだ。彼女たちは霊力と言っているが、俺の魔力を感じ取れる。陰陽師なんだ。神通力か法力か、魔法に近い術が使える。魔術師部隊候補になるだろうな」
「ふむ。神仏の霊験あらたかなる壺とか、印鑑とか、悪徳商法じゃないよな。法力や霊感とかは眉唾もんだと思っていたがな」
「実際に魔力は感じるからな。インチキじゃない。名称が違っているだけで陰陽師はすでに魔術師なんだろうな」
「なあ、湧き穴自警団は魔法が使えるようになるって話しだったが……東京のやつら、警視庁も使えるんじゃないのか?」
「可能性はゼロじゃないな。だが、魔法は危険なんだ。素人が手を出せば死が待っている」
「修行が、いや教練が必要か」
「魔力が多くないから死人がでていない。訳もわからず銃を弄っている子ども。危険だろ?」
「諏訪少佐にも注意しておこう」
「俺の方で教練内容を見直すよ。で、サリー、物質に魔力をまとわせる研究を中心にしてくれ」
「……新半導体アルね」
「ああ、それのVer2.0。それから魔法素材。手っ取り早いのは今のように魔物を粉末にして混ぜる方法だが。魔力とは何かが解明できれば、もっと効率良く素材精製ができるかもしれない」
「始めてるアルよ。ん? 我懂了! そうか、そうか……魔力だ! ははは!」
あれ? その笑い、なに? 背中に黒い炎が見える? あ、やば! 天才のプライド刺激しすぎたか?
「さ、さっすが!」
「可能性は……あるアル……魔力、魔法で推進……第二宇宙速度に? ……ならば、第三……手順は……」
サリーはブツブツつぶやきだした。
「……できるか……光速なら……」
「サ、サリー? で、でだ、対魔物用、対人間用で武装を考えると人間は行動不能になればいい。殺す必要はない。大事な資源だしな」
「資源?」
「労働力という名のな。よし、みんなの所に戻ろう。近藤さんの料理を食いそこねたら事だ」
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