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英雄の帰還 ほどほどでいくけど、復讐はキッチリやらせてもらいます。  作者: ヘアズイヤー
愚連ノ章

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帰熊?


 関東から移り住んだ俺には、聞き慣れない言葉だった。

 県外から熊本県に帰ってくることを「帰熊」。読みは「きゆう」というそうだ。「きぐま」ではない。

 俺の転移、ハズラック王国から帰熊(きゆう)したと言えるだろう。


 霞が関ビルディングでの会議が何度も行われた。市ヶ谷では夜を徹して詳細が詰められた。

 機動偵察隊(MT)が東京に来てから約一ヵ月後、帰熊することになった。立川駐屯地で整備を行ってくれていたブラックホークを受け取り、東京を後にする。


「ルーサー、隊員とミズキたち全員が上空監視をする。まっすぐ新田原基地(にゅうたばるきち)を目指してくれ。『荷』を受け取ったら、次は熊本県健軍駐屯地だ」

「了」

新田原基地(にゅうたばるきち)は宮崎県ですね」

「オランバディーーー! オランバディーーー! 出ってこーい!」

「ルル! はしゃがない!」

「あたしの魔法でうっちおっとすー!」

「ああ、もう!」

「てへっ」

「ルル~」

「はいはい」

「はいは一回、じゃなくて了!」

「了!」


 黒崎中尉と井堀少尉、ミズキたち、幕僚長たちも魔法教練に参加した。

 みんな一通り魔法が使えるようになったが、ルル軍曹が最も熱心だった。魔法銃の弾丸消費を考慮し、もっぱら魔法攻撃中心で魔法撃ち放題。魔力が続く限りだがお陰で魔力量が増やせたようだ。

 魔法銃弾丸の補給は、サリーからじゃないと無理だからな。


 ルルが呼び込んだのか、途中で三度オランバディに遭遇。東京に行く時よりも早い段階で存在を感知した。

 練度が上がっているな。高度があるから海面まで取りに行くのは燃料の無駄か。



「速度が落ちてます! ルーサー少尉、ケント少佐! エンジンの回転数が落ちてます!」

「まずい! パワーが落ちてるぞ! デュアルエンジン・ロールバック(※1)!」

「出力、回転数ともに上がりません!」

「オートローテーション(※2)! メーデー! メーデー!」

「エンジン回転数回復しません!」


 くっ、立川基地で実施した緊急脱出訓練、フラグだったか!


「ルーサー、脱出する! できるだけ高度と速度を保て! 総員、順次亜空間収納(アイテムボックス)に収容する! ランヤードを外せ!」

「了!」


 ミズキたち須比智之会(すひちのえ)に続いて、カーラ軍曹とルーサー少尉以外を収容する。

 俺自身はMC―4パラシュートを装着。


「カーラ軍曹、コ・パイを交代する!」

「I copy that!」

「現在地の情報をくれ!」

「室戸岬沖合20mile。座標は……」

「I copy. 収容するぞ」

「了!」


 カーラ軍曹を収容し、そのままコ・パイの席につく。


「I Have Control!」

「You Have! サー、ご無事で!」

「Oorah!」


 ルーサー少尉を収容。エンジンをシャット・ダウンし、ブラックホークを亜空間収納(アイテムボックス)に収納する。


 俺は突然空中に放り出された。そのまま見えている陸地に向かって滑空する。

 こりゃ届かんな。海にドボンか。

 俺の飛行(フライ)の魔法は、浮くことはできても空を自由自在に飛べるわけじゃない。サリー、何とか考えてくんないかな。


「南無三、やってみるか! 飛行(フライ)!」


 ちっ! ちょっと落下速度が遅くなった気がする程度か。誤差だな、こりゃ。

 やっぱりMC―4か。ぶっつけ本番、使いこなせるか。

 ハッキー、パイロットシュート、キャノピー。

 見上げて開いていることを確認。トグルを掴んで下に引っ張り挙動を試す。

 くっそ千葉行って空挺訓練受けたかった! あ、飛べる輸送機がないか。

 パラグライダーやっときゃよかったか?


 くぅー、何とかわかってきたぞ。あの灯台目指してコントロール、このまま行ければ……。

 おいおい! そうはいかないってか! ここでオランバディ!

 五頭の群れ!

 気づいて追ってきやがった。俺は半分パニックで、今機嫌が悪いんだ!


「砕け飛べ! 星竜砲(プラズマ・キャノン)!」


 ドゴッォォォォォンー!


 極太の光流が、五頭のオランバディを飲み込み焼き尽くす。

 光流はそのまま空の彼方に消えていった。


「うん、過剰だったな。わかってる。反省反省」



 何とか室戸岬まで届いた。

 林の中に着陸。いや、木の枝にパラシュートが引っかかるので、空中でハーネスを解いて亜空間収納(アイテムボックス)に収納。


 ズッザザザザザァーーー


 飛行(フライ)障壁(シールド)を補助に、枝を折りながら着地しひっくり返った。


「フゥッハァー。なんとかなった」


 まあ、考えてみれば海面に落ちても何とか出来るだろうが。ルアーの着水音でブラックバスが食いつくように、魔物がでてはかなわん。

 みんなを出せる開けた場所に行こう。


 ああそうだった。パラシュートを畳むのには資格がいる。

 パラシュートリガー(※3)が畳んでくれるから信頼して空に飛び出せると、芦田准将が言っていた。リガーが資格取得の最後にするのは、自分で畳んだパラシュートで自身が降下することだという。

 降下する方とさせる方との間にも『傘の絆』があると。

 整備も真剣勝負なのだ。

 それにこのご時世、物は大切にせねば。



 式神くんを偵察ドローン代わりにして辺りを警戒。何とか道路に下ってきた。

 人家はあるが人影はない。

 高機動車を出してさらに海を目指し、漁港で停車する。朽ちて沈みかけた漁船ばかりで人はいない。

 凸凹になってしまっているが広いアスファルト面にみんなを出した。

 亜空間収納(アイテムボックス)では呼吸は出来るが、みんな気分が悪くなるからな。野営道具と飲料、食料を出して、しばらく休憩してもらう。


 離れたところにブラックホークを出して冷却する。

 偵察用に式神くんドローンを追加し、地図で現在位置を確認していると、ルーサーが近寄っていきた。


「故障の原因、ブラックホークではよく起こるインシデントかもしれない。過去にも報告されている」

「……聞いたことあるな。原因は不明、じゃなかったか?」

「ええ、整備して試験しても、なぜ起こるかわからない。偉い人は認めませんがね」

「ふーむ。エンジンか。今回は燃料が変わっているか。バイオ燃料で不具合が起きるのかもな」

「断言はできませんが」

「……やっぱり開発が必要か」

「開発ですか?」

「魔法技術、魔法科学を推進するって話だ。再起動してみるか?」

「エンジンをかけて、様子を見ましょう」

「了」


 夜になるまで亜空間収納(アイテムボックス)から取りだした燃料を入れて、断続的なエンジンテストを行った。



 翌早朝からテストの続きをしたが、不具合はなかった。


「よし、再給油して出発することにしよう」

「急激な操作はしないことですね。宮崎まで保ってくれることを星神様(ほしがみさま)に祈ってください」

「おや、クリスチャンじゃないのか?」

「何にでもいいんですよ、助けてくれるのなら。そうだミズキさんに日本のOHARAIをしてもらいましょう」

「了」


 ミズキに伝えたところ、快諾してくれた。

 身を清めるため海へと入り、巫女装束に着替えてブラックホークの正面に立つ。全員がその後ろに並んで(こうべ)を垂れる。

 錫杖を掲げて、祓詞(はらえことば)を唱えてくれた。


 かけまくもかしこきほしのおほかみよ

 もろもろのまがごとつみけがれあらむをば

 はらへたまひきよめたまへとまをすことをきこしめせと

 かしこみかしこみもまをす



 お祓いと祈りを聞き届けてくれたのか、その後宮崎新田原基地までトラブルはなかった。

 魔物もなしで、ルルがむくれてたが。


 新田原基地で「荷」を受領する。三機のF-35Bに整備物資、訓練用シミュレーター一式。

 ブラックホークは一通り整備を受けたが、異常は見つからない。

 F-35Bの整備員には、陸路で健軍駐屯地に向かうことを提案した。まあ、定員オーバーだし、亜空間収納(アイテムボックス)は気分が悪くなるしな。

 と思ったが、100km強なら陸路のほうが怖いという整備員が多く、機体と一緒に二十名を収納した。


「次墜ちる時は、満員だな」

「不吉なことを」

「フラグですよ!」


 機動偵察隊(MT)のみんなに怒られて出発。

 九州山地を飛び越えて、1時間後に無事に帰熊した。



※1 デュアルエンジン・ロールバック:両エンジンの回転数低下。

※2 オートローテーション:ローターがエンジンから切り離されて飛行している状態。

※3 パラシュートリガー:パラシュート整備自衛官。自身も降下訓練を受ける。


お読みいただき、ありがとうございます。

以下は押しつけがましくて本当は嫌なのですが、評価はいらないと思われるんだとか。


客観的に見れていない部分もあり、ご感想、ご意見などお送りいただけると感謝感激です。

誤字脱字もお知らせいただければ、さらに感謝です。

★★★★★評価、ブックマーク、よろしくお願いいたします。

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