作戦会議だったよな?
翌日。
会議が開かれる霞が関ビルディングに向かう。
ビル周辺、エントランスなど其処此処に黒スーツ姿が隠れるように立っている。
警察官か? 警視庁はまずいな。式神くん散布。
霞が関ビルディングの会議室に揃ったのは、統合幕僚会議と統合幕僚会議事務局。統合作戦司令部司令官、副司令官。各副官たち。
特殊防衛連隊機動偵察隊。
米澤統合幕僚長が部隊を正式に承認した。初案の「特殊防衛連隊第一機動偵察中隊第一機動偵察小隊」は長すぎると現在はこの名称になった。
「まあ、芦田准将の好きにして構わないが、個人的にはMT、Maneuver recon Teamを推すな。呼びやすい。政府承認はまだされていないがな」
須比智之会から和御魂トラメ、霊力の巫女賀茂ミズキ、柴坂ナナカ。
今朝のトラメの格好は緋袴だが立鳥帽子に狩衣。お胸は強調されていない。ザンネン。
自衛官多めだが、政府の文官はひとりも出席していない。
広い会議室に着席すると、全員が沈黙したままでいる。
ルーサーとカーラがソワソワしだした。
始めないのは、何かを待っているのか?
上座は紗のカーテンで仕切られている。その前に黒スーツが数人並んでいる。
しばらくしてカーテンの向こうに入室してくる人影。そのまま腰掛けたのが見えた。
黒スーツは護衛か?
ようやく米澤統合幕僚長が口を開いた。
「入室時に通信機器を預けてもらったな。電子戦用の機器も稼働させている。ケント少佐、盗聴防止の魔法があると聞いたが」
「あります」
「使ってくれ」
「振動結界。空気調和。よろしいですよ」
「ありがとう。紹介はいらんな。では始めよう」
米澤統合幕僚長、カーテンの向こうを見ないようにしてないか? 幕僚長も司令官、副官も緊張気味だ。議題も議題だが……、みんなヤケに上座の人影を意識している。
そうか、こりゃあれか?
いいだろう。
「ケント少佐に説明してもらおう」
「はい。本来は資料をお配りするところですが、軍事機密に関わることが多数であることをもって省略させていただきます。現状の危機打開のために最も必要なことを、特殊防衛連隊主導にて進めています」
聞かせるべきなのは、カーテンに隠れている人物だ。
「湧き穴から出てくる魔物に国民の多くが喰われています。このままでは完全に支配され家畜とされるでしょう。日本だけではなく世界中の人々が喰われ、家畜となるでしょう」
こちらが見えているだろうからな。少しずつ浮あがる。
「われわれ人間が魔物に打ち勝つ方法は、ただ一つ。魔法技術を確立するしかない」
出席者全員が見上げるほどに宙に浮かんだ。右手を胸に置き、カーテンに向かって軽く会釈する。
「星神様の末裔が何千年も国の頂点となってきた日本。大和の国がその尖兵となるべきだ。それを星神様も望んでいる」
「ちょ、ちょっとまて、ケント少佐。宗教を語る場ではない」
「そうでしょうか? 須比智之会は大和朝廷ができるはるか前から、陰ながらこの国を人を守ってきたのでしょう? 和御魂様」
話しを振られたトラメは、あたたかいほほ笑みを浮かべた。
「外敵、災害、戦さ、政変……全てを守れなかったが、生き残れるようにはしてきたのう」
俺はうなずく。
「宗教議論をするつもりはないが、共通認識を構築しなければ生き残ってはいけない。『星神』は存在する。太古の日本から現代まで。信じる信じないではない。信仰する必要もない。そういう神と呼ばれる存在は、確かにいる。湧き穴と魔物が存在するように」
自衛官たちは互いに顔を見合わせる。神が実際にいるといきなり言われても信じられない。だが魔物の被害を被っているのは明らかなのだ。
「これまで築いてきた民主主義は平和なときには有効な考えだが、現状は衆愚政治に堕ちている。生き残る政治形態にしなくてはならない」
全員の顔をゆっくりと見回し、カーテンの向こうに目を向ける。
「精密な人口調査ができなくなった。現時点の納税状況から推測できる日本の人口は、大混乱前の半分から三分の一だ。江戸から明治になる頃と同じくらいだ」
情報本部に至急で諜報、計算させた結果だ。大きくは間違っていないだろう。
「最大の危機は魔物。国民が喰われないようにすること。では魔物との生存競争に勝つにはどうすればよいか。武力戦力強化の一点だ。戦時体制の軍事政権が必須だ。いずれ主権を国民に戻す前提で、強い軍事リーダーのもとにまとまらなくてはならない。座して全国民の死すを待つのでなければ」
カーテンの向こうが身動ぎする。
「現代の武器では魔物を倒せない。ガンパウダーやそれに類するものはその性質を変えていて、銃やミサイルが有効な武器とならない。しかし、そこに『魔力』と『魔法』を組み合わせることで魔物を打ち倒し、殺すことができる。希望はあるのだ」
人影が立ちあがった。
「特殊防衛連隊に取り込んだTSME、サリー・黄を中心として魔法銃の開発と量産を始めている。その他にも機能しなくなった電子機器や装備を『魔法素材』で代替できることが実証されつつある。自衛隊の装備をふたたび使えるものにできる」
自衛官たちがグッと拳を握りしめた。
「それを考慮すれば、必要となるのは有効に活用できる『軍事政権』を樹立すること。民主主義の平和は百年に満たない。それ以前、日本はずっと軍事政権が舵取りをする国だった。そもそもは天皇自身が軍事指導者であり、華族公家はその戦闘部隊だったと理解している」
カーテンの向こうからは何の反応もない。
「現皇はリーダーになってくれるのか? たとえ神輿とされようが『国民』の生存を助けてくれるのか? 不敬を気にかけ、忖度している時間はもうない。いま動かなければ、日本国民、人間、人類、世界は滅ぶしかないのだから」
「わたくしは、もっとケント少佐の話しを聞きたいと思います。ですが、今この場でではありません。皆さま方には国民を守るための方法について、議論を尽くすことを望みます」
カーテン越しに話しかけられた。
否定はしないか。
拒否感はあるかな。敵意、害意は感じない。
しかし、居ないはずのお方が発言。
扇動はできたかな。
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