NINJA
好きに読書ができ、執筆できる平和が一番です。
倉田チューヤ翁。
齢はわからぬが、高齢に見える。しかし体つきはがっしりしていて、鍛えられているのがわかる。
「トオル坊から話しは聞いているが、おまえの口から語ってもらおう」
「はい。まずは目的から話します。妻を殺した佐藤順次を追って、熊本県玉杵名市から東京に来ました。俺は特殊な人間です」
賞金稼ぎとして佐藤順次を追うことになった彼の犯行。大混乱前に起こった転生と後に起こった転移。賞金稼ぎとしての行動と自分に出来ること。現在の立場。
「聞いた通りだな。けどよ、須比智之会の事は聞いとらんぞ」
「こっちに来る途中のことですからね」
「しかし、よりにもよって、それが出てくるとはな」
「ご存知ですか?」
「……知る者は限られてやがる。俺も直接は知らぬ。……神事の陰にいる名は、口にしてはならぬもの、触れてはならぬもの、と襲名の時に教えられるだけだ」
「名を口にしてはならぬ、か……」
「新宿須久奈会谷崎敏史組長か。あの辺りの話しはあまり聞こえなくなりやがったな。……物には対価が必要だ。探すのに手をかそうってんだ」
「はい」
「……お前が賞金稼ぎなら、狩って欲しい者がいる」
「はい」
「このあたりで『人狩り』をしてやがる半グレ、『ブラックゲート』を潰して欲しいぜ。 ボスの永上、永上セージをだな。手配書持ちだが、警察には張り出されとらん」
「告示されていない?」
「いま、東京は新半導体の商社に牛耳られてやがる。知事と警視庁が手足だな。握りつぶされてるんだ、手配書が」
「それで少ないのか」
「商社、知事、警視庁ときて、末端の末端、チーマーだとか、ギャング、半グレなんて呼ばせてるが、所詮は愚連隊。ヤクザの下っ端なのは変わらん」
「それを束ねる永上か。手配書持ちなんだな? 罪のない者、翁の邪魔ってだけでは狩れんよ?」
「手配書を手に入れる」
「こっちでも調べさせてもらう。犯罪者なら狩る、それでいいか?」
「ああ、構わん。順次は探させとく」
「お願いする」
サブと呼ばれていた若い方が、ブラックゲートのアジトまで案内してくれることになった。場所は旧上野駅の近くだという。
上野でブラックゲート。寛永寺の辺りか? 黒門町か? 伝七だな。
途中でブラックゲートボスの永上の手配書を受け取る算段だ。
路地を出たところで軽トラを亜空間収納から取り出す。
「おわっ!」
「もっと驚くからな」
「はっ?」
「化身!」
背の低い中年太りのおっさんに変身。
どんな顔と聞かれても、思い出せない特徴のない顔。そこらに蹲っている男たちのように襤褸と呼ぶのがはやい服。
「ひぇ!」
サブが変な声を出す。
「な、なんなんスかっ!」
「車は仕舞っといたの出したし、姿は、化身、変身か。まあ、こういう術だな」
「術! アニさん! アニさん! もしかして忍者っスか!」
「え、忍者? まあ似たようなもんだな」
「すっげー! 本物の忍者っス! マンガと同じっす!」
子どものように目をキラキラさせて見上げてくるサブ。まあ、魔法はそう見えなくもないからな。
手配書を受け取って向かった寛永寺、サブがストップをかけた。
「アニさん、ここから先はやべーっす。あそこに見えてる黒いビルがそうっスが、ここらを見回ってやす。オレっちがいると、袋にされてさよならっス」
サブ、だんだん言葉がヒドくなってないか。緊張か?
「ひとりで行く。隠れ身の術が使えるからな。サブさんはここで待っていてくれ」
「隠れ身! すっげーー!」
ちょっとからかった後は、軽トラにサブを残して前に回る。
「光学迷彩!」
車の中でサブがギャーギャー言っている。後ろから聞こえてきたが、そんなに騒ぐとヤツラに見つかるから程々にな。
黒いビルに近づき、式神くんを撒く。
しばらく様子を覗うと、不穏な会話が聞こえてきた。
『やっぱシブヤレッズはやられちまったらしい』
『クソッ! やつらの裏は丸菱だ。各紅じゃダメか!』
『用心を怠るなよ。エサは早く出荷しちまえ!』
『ちっ! こないだの人狩りで拐ってきたメスガキが壊れちまった!』
『なに! ちっこい方か?』
『いや太めの方』
『ならいいや。ちっこいのは壊れないよう確保しておけよ!』
『壊れたらすぐ出荷しろよ。活かしておくのもただじゃねえんだ!』
『リーダー! 各紅の斎藤さんから電話っス』
『おお。永上だ』
『……』
『払ってもらえりゃやりますがねぇ、こないだの分もまだですからね。あんな上玉最近じゃ手に入らない。クスリと交換じゃなきゃ受けないっていったっしょ……きっちり払えよな』
二時間後、サブのところにもどる。
「サブさん、ブラックゲートのヤツラについて詳しいか?」
「ケントのアニさん、アニさんはずっと上っス。オイラに『さん』はやめて欲しいっス。テイネイなのも」
「お、おお」
他の会話や映像から推測される事で、人狩りについて疑問に思ったことをサブに聞いてみた。
「アイツラがやってるという人狩り。獲物はなんだ?」
「一番は女っス。高く売れるし、自分たちも楽しめるって。ですが、人なら何でもかっさらっていくっス。ジジイだろうがババアだろうが、なんでもっス」
「防がないのか?」
「町内の通りをオイラたちが見張っていて、アイツらが来たら、け、警報? を出してみんなで防ぐっス」
「ふむ。……人狩りの獲物は『エサ』だって言ってたが、何のエサかわかるか?」
「グッ!」
サブは下唇を噛みしめて俯いた。固く握りしめられた拳が、ぷるぷると震えている。
「サブ?」
「……湧き穴で……化け物の罠に使う……っス」
「罠? 出来なくもないのか?」
「オイラも見たことはないっスが……化け物が、く、喰っている間に殺るって聞きやした」
確かにな、時間は稼げるだろうが。いい趣味してるぜ、魔物素材確保だけでそこまでやるとは。
この後に作戦会議があるからな。日数はかけられない。サクッと今日一日で終わらせよう。
「中にいるヤツラは二十人。嬲られている女性たちが五人。ブラックゲートは全員捕まえるとしよう」
「二十人も! そんなことができるんで?」
「できる」
「皆殺しっスか!」
「いやいや、殺さねーよ。手配書の情報が少ないから、全員生きたまま引っ拐う。後の始末は倉田翁とお前たちに任せる。入れとく場所が必要だな」
「生きたままなら、車が必要っスね。あ、人もか。でも生きたままなんてできるんっスか?」
「痺れる術を使うからな。中に嬲られた女性たちがいる。介抱する手伝いが必要だ。そう伝えとけ」
「すっげー! 忍術すっげー! わかりやした!」
「行ってくる」
忍術じゃなく魔法だけどな。
ブラックゲートの黒ビルに、また光学迷彩を纏って近づく。
「範囲障壁。麻痺」
ビルの入口に屯す男たちを無力化し、亜空間収納に取り込んでいく。
今回は強い麻痺だから、心臓止まるかもな。それは諦めてもらうしか無いけど。
一階から順に制圧し、最上階に登る。
十階。エレベーター前と部屋に屯す男たちも亜空間収納に突っ込む。
窮屈でも我慢してもらおう。
部屋の男たちが次々と倒れていくのを、唖然として眺めているスキンヘッドの巨漢。
永上の手配書はある。こいつがそうだ。
「な、なんだ!」
「お迎えだよ」
「な、なにぃ!」
「めっちゃ強く、麻痺!」
「あばばばばばっ!」
へぇー、声が出せたか。頑丈だな。
あ、こいつー! 前も後ろも漏らしやがって!
まあ、亜空間収納は掃除不要だしな。一緒に入ってるやつが汚れるだけだ。いや、サブたちには迷惑か。清潔かけとくか。
つま先で脇腹を蹴って失神を確認。亜空間収納にご案内。
一階に降りてサブに連絡する。収集と介抱部隊を待っている間に、黒崎中尉に定時連絡を入れる。
「ケントだ。現在地、上野」
『了。佐伯空将から、会議は明日1000と連絡がありました』
「明日か。急いだもんだ。もう少ししたら戻る」
『了』
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