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英雄の帰還 ほどほどでいくけど、復讐はキッチリやらせてもらいます。  作者: ヘアズイヤー
霊力ノ章

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神薙ぎ


 お? 魔力?

 この美巫女さん、魔力がある?

 おお、体に(まと)い始めた?


 美巫女さんは、俺を見て表情を険しくする。

 ついでスポンッと表情が抜けた。

 手にした錫杖を本手に構えて突っ込んでくる。


「悪霊退散! 悪鬼調伏!」


 訓練用の槍を取り出して、叫ぶ美巫女の攻撃を防ぐ。なかなかに速い連撃を、払い、躱し、受ける。

 いやいや! ナニなに、この()! 訳わからん!


「ケント少尉!」


 機動偵察隊のみんなは呆気にとられたが、抜剣する。


「機動偵察隊! 手を出すな!」

「ミズキ様!」


 黒スーツたちの声を聞いて、美巫女さんは槍の攻撃範囲から飛び下がった。


「悪鬼です! 倒します!」

「ミズキ様! その方は」

「悪鬼です! お前たちには、この禍々しい霊力が見えませんか! 悪霊の類です!」

「その方は自衛官では?」

「人にあらざる霊力の悪鬼! 押し包んで攻撃なさい!」


 悪鬼って、俺? 「禍々しい」っていうのはずいぶんな言われようだな。


「人のこと悪霊とか悪鬼って、ヒドくない? しかし魔力が多いねキミ。こっちじゃ初めてだ」

「問答無用! みな打ちかかりなさい!」


 なんだかわからんが、倒すのはまずいだろう。麻痺(スタン)……は、やめとくか。


障壁(シールド)!」


 錫杖を振り回す美巫女さんと、特殊警棒を振り出した黒スーツたち。行動を阻害するために障壁で包みこむ。

 行く手を遮ったモノに戸惑う美巫女と黒スーツたち。


「なんだこれは!」

「ガラス? 打ち破れ!」

「くっ! 悪霊の力か!」

「法力でこわせ!」


 水色に着色した障壁に、美巫女さんは錫杖で、黒スーツは警棒でガキンガキン打ちかかってくる。懐から取り出したナイフのようなもので叩いている者も。

 あれ? ナイフじゃないな。あれは、えーと、何だっけ? 何て名だっけ? ああ、確か……独鈷? 金剛杵(こんごうしょ)だっけ?

 まあ普通の人じゃ破れないから大丈夫かな。

 魔力の多い美巫女さんは……あれ? 魔力の使い方がそこまで上手くない? もっと錫杖の魔力を上げればいいのに。

 しかし、どうやって落ち着いてもらおうか?

 お、その前にっと。


「湧き穴の見張り員! 来るんじゃないか!」

「あ、ああ、くるで! ゴブゴブ……だけやない! 大鬼もくる! 数は? お、多いで! ゴブ、八! あ、うぇっ! 大鬼は三! 多いで! 多いで! 多いでぇぇ!」


 見張りが鐘を叩きながら、警告の叫びをあげた。

 美巫女さんたちよりこっちが先だ。自衛官と自警団員たちに声をかける。


「俺たち機動偵察隊が戦う。自警団は見学だ!」

「了! 陸上自衛隊で討伐する! 自警団員はさがれ!」

「ちっ! 討伐せな手当がつかんやないか。横取りするつもりか!」

「ば、ばか! 数聞いたじゃろう? わしらだけじゃ無理や!」

「ま、まかしてええんやないか?」


 これ幸いと自警団員が湧き穴前から離れていく。安堵とともに不満の声も漏れてくる。


「機動偵察隊ケント少尉だ。こちらで討伐するが、全員に手当がつくよう計らう。素材の報酬は全員で分ける」

「そんなこといっても、まだ倒しとらんだろうが! 大口叩くやつや! 数が多いんじゃぞ!」

「心配するな、俺たちで全部やれる。偵察隊! 先にゴブリンを叩け! オーガは俺が魔法で拘束する!」

「了!」


 アカリ、ルル、クロウド、カーラ、ルーサーが魔法銃を構えて横隊を作り、湧き穴に進んでいく。


障壁(シールド)!」


 湧き穴はコンクリート塀で狭くされているが、逃亡防止に障壁で囲う。

 ゴブリンが出てきてこちらに向かい駆けだしてくる。


「十分に引きつけて頭を狙え! まだだ、まだ! よし! 撃てっ!」


 ダダダダダッン!


 ゴブリンは、頭に数発ずつ銃弾を受けて跳ね飛ばされる。


麻痺(スタン)!」


 後ろから出てきたオーガが痙攣をおこしてその場で膝をついた。



「俺たちは、陸上自衛隊特殊防衛連隊だ。湧き穴の魔物を魔法で討伐する準備をしている! ゴブリンを倒したこの魔法銃が自衛隊に配備されていく! いずれはこんな風に討伐できるようになる! そして魔法! 火弾(ファイヤー・ブレット)!」


 火の玉が数百、回転する。


 フュウィーン!


 火の玉は圧縮されて白い弾となる。


 ドドドドドドッ!


 数百の高温の弾丸がオーガたちの頭を吹き飛ばした。

 声を上げられない自警団員たち。

 見回すと、美巫女たちも手を止めて機動偵察隊の攻撃に見入っていた。


「おおおおおっー!」

「なっ!」

「凄い!」


 ゴブリンとオーガは討伐完了っと。後続は……こないか。またハイオークあたりが出てくるかと思ったがなぁ。


「続きは出てこないようだ。処理を頼む。心臓の魔石は素材として買い取らせるから扱いはていねいにな」

「……ですが業者は買い取りませんが」

「TSME系列じゃないのか? 他の業者か?」

「はい。亜細亜工業です。魔石とは体内の黒い石でしょうか?」

「そうだ、その黒い石を魔石という」

「亜細亜工業は買い取っていきません。設備が壊れるからと言っていました」

「TSMEはここまで手を広げていないか。では魔石は洗浄して自衛隊で保管とする。他の湧き穴の魔石も自衛隊で貯蔵するように。いずれ陸上自衛隊特殊防衛連隊から正式な通達があるとおもう」

「了」

「機動偵察隊、集合!」


 湧き穴前で魔法銃をチェックしているみんなを集める。そのまま障壁(シールド)で囲っている美巫女さんたちの近くまでやってきた。


「みんな、魔法銃はどうだった?」

「いいですね。当てやすいです」


 ルル軍曹がほおずりしそうなほど魔法銃を撫でて笑顔で答える。


「反動が少なく撃ちやすいですね」


 アカリ伍長が冷静に感想を述べてくる。


「もっと試射が必要ですね。命中率を把握したいです」


 クロウド曹長がサイトを調整しながら答えてくれた。


「フルオートはないの?」

「そう、制圧用にフルオートは欲しいですね」


 カーラ軍曹とルーサー少尉が笑いながら聞いてきた。

 うんうん、さすが軍人さんたち。フィードバックをサリーに報告してもらおう。


 もう落ち着いたかな。

 美巫女さんに話しかける。


「さて、あなたたちを公務執行妨害と暴行容疑で警務隊に逮捕させることもできるが、どうするかね?」

「……ほ、本当に自衛官なのか? ミズキ様?」


 美巫女さんを庇うように立つ黒スーツの女性が問いかけてくる。


「そんなはずはありません。穴から出てきた小鬼と大鬼と同じ霊力。同じ化け物です」

「同じ霊力?」


 魔力のことか?


「ふーむ。キミは、ミズキさんといったか。キミも同じ魔力を体にまとっているんだが、魔法が使えるのかな。……錫杖と独鈷、霊能力者ってやつ?」

「……」


 法力をもった霊能力者が戦力になるのであれば、詳しく調べる必要があるな。


「準現行犯逮捕としよう。任意同行に近いが、同道ねがえますか、ミズキさん」

「……」

「ミズキ様。……ケント少尉、相手を確かめずに打ちかかったのは事実です。ですが、我々は警察には行きません」

「俺らは警察官じゃない。一緒に行ってもらうのは海上自衛隊徳島教育航空群と陸上自衛隊北徳島分屯地になる。徳島阿波おどり空港だね」

「……ミズキ様、本宮に連絡いたします。ここは自衛官に従うのがよろしいかと」

「……わかりました。一緒に行きます」

「拘束も武装解除もしないが、隊員に暴行した場合はその限りじゃない。俺なら防げるが、魔力、いや、霊力の行使は控えてもらう」

「……」


 ミズキを見つめて宣言したが、どうしたものか。

 しかし、興味深い。

 魔力=霊力なのか? ≒か?


 この地球にも魔力があり、魔法が存在しているってことなんじゃないか?

 巫女、神子、神薙ぎ。霊力、法力、神通力。

 神を信じる人が多いってことは、地球にもあって当然なのか?

 やれやれ、また星神様とかかわり合いになるのか?

 予感はあったが……。

 なんと、なんと面倒なことだろう。


お読みいただき、ありがとうございます。

以下は押しつけがましくて本当は嫌なのですが、評価はいらないと思われるんだとか。


客観的に見れていない部分もあり、ご感想、ご意見などお送りいただけると感謝感激です。

誤字脱字もお知らせいただければ、さらに感謝です。

★★★★★評価、ブックマーク、よろしくお願いいたします。

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