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英雄の帰還 ほどほどでいくけど、復讐はキッチリやらせてもらいます。  作者: ヘアズイヤー
霊力ノ章

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40/60

ごあいさつ、ねぇ

水害の影響はまだ続いてます。

近隣のスーパーは休業中。開いているところも品不足。野菜がないです。

災害って日常に戻るのが大変です。


 海上自衛隊第31航空群司令、池田海将補。

 疲れてるのか? 細い体に()けた頬、顔色が悪い。充血した目に隈を作っている。

 基地内でも常装なのか。海軍将官らしくてカッコイイけど。



「海上自衛隊の池田だ」

「特殊防衛連隊浅野ケントです」

「なんだその格好は! 舐めてんのかキサマ! 衣服の乱れは精神の乱れ、自衛官にあるまじき格好! どうやって試験を誤魔化した!」


 急にキレた? 麻の上下に革のブーツ。普通に軍装なんだけどな。怒ると人って本当に青筋がたつんだぁ。珍しいもの見た、新発見だね。


「困ったね。貰うものもらってはやく出発したい。無いならこれで失礼する」

「なんだとぉー! キ、キサマ!」

「司令、落ち着いてください」

「オ、オレは! オレは落ち着いついている! あ、はぁー」

「えっ?」


 池田海将補が目を見開いて、突然昏倒した。俺は慌てて倒れかかる池田海将補の体を抱きとめた。

 電池切れか?


「発作です! 医務官と医官に連絡! 池田司令、こちらにどうぞ」


 副官らしいWAVE(※1)が指示を出して副官たちが池田海将補を連れて足早にでていった。

 自衛官、てんかんはダメだったよな。



「失礼しました。池田海将補は体調不良のため医務室で休ませます。私は三等海佐の丸尾、池田海将補の副官です」

「浅野です。池田海将補はどこかお悪いのでは?」

「……ここのところ任務が重なったためでしょう。芦田陸将補からの通達は受けています。整備ハンガーにご案内します」


 うーん、納得はできないけどプライバシーもあるしな。健康不安は触れてほしくないところか。念のため式神くん散開っと。



 丸尾三佐の薄い緑灰色高機動車について基地内を滑走路近くまで走り、ヘリ用ハンガーについた。

 高機動車から降りる丸尾三佐を見つけ整備隊員が走り寄る。


「丸尾三佐! いま連絡しようとしたところです! MCIからのハンヴィーが壊されました!」

「壊された?」

「こちらです!」


 元は濃緑色であったろうハンヴィーがボンネットを開けて置いてあり、整備隊員たちが取り巻いていた。隊員たちは丸尾三佐に敬礼をしたが、みんな疲れた顔をしている。


「そのハンヴィー、すんげー迷彩だな。ポップっていうかサイケ過ぎないか?」


 赤、青、黃、オレンジ、ピンク、白と黒。渦を巻く花みたいに塗装されたシュールなハンヴィー。


「誰の趣味?」

「昨夜のうちにMCIのヤツラにイタズラされたようです。エンジンルーム内の配線もズタズタで泥水とオイルがブチまけられてます。オーバーホールしないと火を入れられません」

「……ハイアット少佐か?」

「はい。彼らです。見咎めるとすぐに逃げていきました」


 ハイアット少佐? ほう、あるな。なるほど海兵隊じゃなく愚連隊ってわけだな。


「幸い陸上自衛隊から預かっているロクマル(※2)には手を出されていません。計器類、レーダー類、エンジン等地上テストは済んでいます。試験飛行後に受け渡すだけです」

「そちらは引き渡せるのか。……ケント少尉、ロクマルは飛ばせますか?」

「操縦はできないな。クロウド、ルル、アカリ。飛ばせるか?」

「いいえ」


 三人は航空科の訓練は受けていないようだ。


「MCIのルーサー・コート少尉がパイロットとして同行すると聞いています」


 あ、あれか? 諏訪三佐が言ってたMCIの隊員か?


「彼とカーラ・フランシス軍曹から特殊防衛連隊への入隊希望が出ています。ですが車両がこれでは……」

「うん、こりゃ無理だな」

「……。いいでしょう、海上自衛隊の高機動車を提供いたします。お使いください」

「え? いいのそんな簡単に決めちゃって」

「構いません。私は決定する権限を持っています。……池田海将補も海上自衛隊全体を特殊防衛連隊の下に置くとお考えです」

「はぁ? なにそれ?」

「私たちは芦田陸将補、いえ芦田少将の『檄文』に賛同しています。戦さ(いくさ)とは、勝たねば意味がありません」


 あの人はどんなことを言い出したんだ?


「お、おお。高機動車とブラックホーク、受領しよう」

「今の話に出たふたり、ルーサー・コ―ト少尉とカーラ・フランシス軍曹からケント少尉との面談希望が出ています。連絡しますので、そちらに参りましょう」



 丸尾三佐に連れてこられたのは体育館。正面に星条旗と日の丸が飾られている。マットが敷かれた一角に、Tシャツ戦闘服姿の海兵隊員が二人立っていた。


「紹介します。元米軍海兵隊、現MCIのルーサー・コート少尉とカーラ・フランシス軍曹です。こちらが特殊防衛連隊浅野ケント少尉です。ケント少尉、両名とも日本語が堪能です」


 丸尾三佐に紹介されたが、ふたりともすんごい無表情じゃないか? 目だけギロってして怖い。こりゃあれだな、オレらは弱い奴の下にはつかんゾってところだな。

 まあ、兵士ならこんなもんだな、世界が違っても。


「ケントだ。話してもしょうがないんだろ? どっちからくる? おっとその前に拳を守るグローブとマウスピースをつけろ」

「?」

「素手で十分だ」

「いやダメだ。部下にするのに、怪我人じゃ足手まといで困るからな。さっさと用意しろ」

「……怪我が怖いのはどっちなんだか。少尉取ってきます」

「……俺も行く」


 使えるのなら、部下にするのはやぶさかではないんだけど。

 クロウドたちもそうだが私兵までは考えてなかったからなぁ。特殊防衛連隊第一機動偵察中隊、どんな編成にしようかな。


 二人が戻ってきて俺にもグローブとマウスピースを差しだした。


「ありがたいけど俺には不要だ」

「な!」

「こうすりゃいいんでね。障壁(シールド)


 青い光が俺の両手を格闘用グローブのように包みこんだ。透明より色がついてた方が良いだろう。


「クッションも効かせるから、痛くないぞ。どっちからくる?」

「自分がいきます」


 ブルネットの長い髪をお団子にしたカーラ・フランシス軍曹。Tシャツ姿からも絞られ鍛えられた肉体がよくわかる。

 訓練のジャマになるんじゃないかと心配するくらいの、ボン、キュ、ボン!

 パンパン(柏手)。眼福、眼福!



 スッと腰を落として低くタックルしてくる。勢いがあるが、そのまま受け止める。衝撃を受けても動かない俺に、腕を膝裏まで回して締め付けて転がそうとしてくる。

 すまんね、そんなんじゃ俺のバランスは崩れない。

 一歩踏み出し、空気機関砲(エア・プレッシャー)を一発だけ。カーラはポンと弾き飛ばされた。

 立ち上がったカーラは、両拳を固めボクシングスタイルになる。


 ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 素早く左、右と繰りだされるパンチを、何もせずに顔面で受け止める。ボディにくるパンチも防御せず殴られるままにする。

 顎を狙ってくるが好きなように打たせる。


 ドンッ! ドンッ!


「ツウッー!」


 一歩下がったカーラが痺れた拳をふる。


「拳痛めてないか?」

「効いてない? 壁を殴ってるみたい……」

「ま、そんな感じだろうな。ケリを入れてもいいぞ」


 そこからしばらくはカーラの好きなように攻撃させた。そうそう体にまとわせた障壁(シールド)は柔らかくしといた。攻撃する方も衝撃があるからな。

 30秒のラッシュを十数回繰り返したカーラは一歩下がり、肩で息をし始めた。


「じゃ、こっちからいくぞ。しっかり防御しろよ」


 スピードのスイッチを切り替え、素早くカーラの左横に移動。戸惑うカーラの肩をポンと叩く。体を回すカーラ。こっちは背中に回りタッチ。さらに回って振り向くカーラより先にまた背中をポンッ。


「グッ!」


 ドンッ!


 苛立つカーラの正面に立ち止まってボディに拳を埋めた。


「ゲホッ!」


 崩れ落ちたカーラに声を掛ける。


「ここまでかな。なかなか良い攻撃だった。次はルーサーだな」


 身をかがめて苦しがるカーラに変わって、ルーサーが弾むような軽い足取りででてきた。


 そこに体育館の入口からガヤガヤと人が入ってきた。


『なんだ? お前らなにしてんだ?』

『ダンスしてんだぜー』

『お、カーラじゃん。俺も混ぜろよ』

『いつもすかした海自のねーちゃんもいるゾ』

『見ない顔のねーちゃんたちも! オレのを舐めたいか?』

『ヒャヒャヒャ! みんなでやろうぜ!』


 品の良くない英語で話す彼ら、ゲートで冷やかしてきた顔が混じっている。

 ルーサーの前に大掃除かな。




※1 WAVE:Woman Accepted for Volunteer Emergency 女性海上自衛官。

※2 ロクマル:UH-60JA ブラックホークの愛称を持つ陸上自衛隊の多目的ヘリコプター。


お読みいただき、ありがとうございます。

以下は押しつけがましくて本当は嫌なのですが、評価はいらないと思われるんだとか。


客観的に見れていない部分もあり、ご感想、ご意見などお送りいただけると感謝感激です。

誤字脱字もお知らせいただければ、さらに感謝です。

★★★★★評価、ブックマーク、よろしくお願いいたします。

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