MCI
災害救助法が適用されました。
加えての猛暑。人ごととは思わず、みなさんも災害に備えましょう。
なんとか形にはなったけど、字数が少ない。すみません。
岩国航空基地。
戦前は帝国海軍航空隊、終戦占領後はアメリカ海兵隊、大混乱後は海上自衛隊が中心の基地となっている。
取り残された海兵隊は、日本政府と自衛隊の出資を受けてPMCをつくった。
治安維持と湧き穴対策に協力しているらしい。そのPMCがマリンコープスインターナショナル、MCIだ。沖縄以外の、各地に駐屯していた米軍が参加している。
小倉を出て下関までは高速だが、中国道が通行止めで下道を通るしかない。下道も大きな橋が落ちていたりで迂回を繰りかえす。
物流はなんとか機能している。荷物満載の軽トラやら二トン車やらといっしょに途中の空き地で一泊し、二日がかりになる。
夜を明かす前に通ってきた町などは、人の姿がまるで見られないところもあった。
空き地で焚き火を起こし四人でかこむ。補給中隊で用意してくれた食料で夕飯をとっている。
この三人がどんな人間なのか。部下になるならコミュニケーションは大事だな。
俺の騎士たちはどうしているだろうか。ローザ・ライラを守っていてくれるだろうか。
「湧き穴があっても手が回ってないところがあるのか」
「はい。自警団をつくる前に人が死に絶えた所が」
クロウドが悔しそうに話してくれる。
「自衛隊も手がまわりません」
「化け物たちは夜明けとともに出てきて日が沈むと穴に戻るって」
「だからほっておかれてます」
じゃがいもを頬張りながらルルとアカリが説明してくれた。
「出ても弱くなる魔物。魔素が足りない? だが魔素が湧き穴から流れ込み続け、魔素で満たされたら。やつらがここに住み着いたら」
「少尉、そうなったら我々は……」
「抗わねば滅ぶ。ヤツラに家畜にされる」
「あ、あの、そんなことが起こり得るんですか?」
「起こる。国単位、大陸単位で餌食にされて滅ぶ」
「……」
まあ重い話はここまでか。もっと軽い話題にしておきたいとこなんだが。
一番若いのがアカリ三等陸曹。自衛隊に入隊した時に大混乱がおきた。陸曹の教育は混乱と人員不足のなかで、小倉の中隊で受けたという。
一歳上のルル二等陸曹。陸士長から陸曹になる教育を受けるところで大混乱。アカリと同じく中隊内で陸曹の教育を受けた。
クロウド一等陸曹が一番年上。久留米の幹部候補生学校に進む予定だったが、大混乱で連隊内教育を受けている。
大混乱後の入隊希望者は、食いっぱぐれがないだろうと入った者が多いそうだ。上昇志向のない自衛官は農作業に従事していて、自衛官でなくてもいいのでは? と扱いが低いらしい。
歩兵なんてそんなもんだ。
三人は自分たちを、湧き穴討伐で己の無力さを感じ強さを求める自衛官たちの代表と苦笑いしている。俺の戦い方が彼らの目には強烈なものとしてうつったらしい。
かろうじて銃器の訓練を受けた世代とか。クロウド一曹は射撃の成績が良く、狙撃手教育を受けてから久留米に行く予定だったという。
魔法銃の配布はまだしていない。もう少し見極めてからだな。
みんなは家族を大混乱で失っている。親戚はいるが、殆どが音信不通。だから自分は天涯孤独と、ルルがやけに明るく笑って話してくれた。
三人を特殊防衛連隊の階級で呼ぶことにも慣れておこう。……ハズラック王国だと上級、中級、下級の十人長ってとこかな。
翌日の昼過ぎ、岩国市警察署に軽トラを駐車する。
「基地じゃないんですか?」
「ああ、指名手配犯の情報を集める」
「賞金稼ぎですか」
「……アカリ、そこは地域貢献活動って言ってくれ」
「犯人を追いかけて捕まえるって手間じゃないんですか?」
「ルルの言う通り全犯罪を取り締まるなら手間だな。やっすい報奨金はほっとくからそれほどじゃない。それに俺には他の者より有利な手段があるからな」
「それは?」
「貢献活動の企業秘密なんだが、捕縛はこの前の湧き穴でちょっと使った」
小休止での訓練ではなく、集中的に魔法の訓練をしたいところなんだが。
「壁みたいなやつ?」
「弾き飛ばしたやつ!」
「……動けなくなったゴブリンがいた」
「クロウド正解。麻痺の魔法で動けなくする」
「あたしたちも使える?」
「もっと魔法を訓練すればな」
手配書の中に面白いものが混じっていた。
「クロウド、ルル、アカリ。基地では用心したほうが良さそうだな。気を抜かないでいく必要がある」
「この手配書ですか?」
「ああ……岩国基地の状況は高橋一佐からも聞いたが、帰れなくなった元海兵隊PMC、MCIは相当な問題児らしい」
「……」
報奨金はそこそこいい金額だ。どうするかな? 掃除したほうが良いよさそうだな。
「まあ、ハンヴィーを受け取ったらさっさと出発だな」
MCIに検分してほしいやつがいるって……諏訪三佐の知り合い、名前は手配書にないな。
昨夜は風呂に入れなかったけど清潔の魔法はかけてある。常装に着替えるのは面倒だからこのまま行くか。
展示されている戦闘機を横目に、メインゲートから入る。クロウド曹長が四人の身分証を提示して、海上自衛隊第31航空群司令部への訪問を告げる。
「ケント少尉は来訪予定にあります。先導しますのでついていってください」
待っていてくれたのか、警務隊の白パトが先導してくれる。
ゲート横には古びたハンヴィーが並び、迷彩戦闘服をだらしなく着ている日本人ではない者たちがたむろしている。
軽トラに気がついた幾人かが挑発的なポーズをとり、文字にできない卑猥な隠語を大声でがなり立て威圧してくる。
こいつらまで掃除するとなると面倒だな。手配書にない小物らしいからな。風紀は見直さなきゃならんだろう。
誰が飼い主なのか混乱してしまっているのだろうな。
躾てやらなきゃだめかなぁ。
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