表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄の帰還 ほどほどでいくけど、復讐はキッチリやらせてもらいます。  作者: ヘアズイヤー
霊力ノ章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/60

ボコるボコる、まだボコる


 起床ラッパで起こされる。


 昨夜は陸士長が伝令についてくれた。陸上自衛隊についていろいろと教えてもらう。

 起床ラッパの鳴る直前にハッっと目を覚ますとか、部屋の整理整頓をミリ単位で計測されて怒鳴られたとか……ちょいオタ知識がそう間違ってないことを教えてくれた。


 七年前の大混乱で自衛官に甚大な被害が出て、現在新隊員教育がかなり変更されているらしい。質実剛健、体力重視なのは変わらないが、敵を殲滅し生き残ることに力を入れている。

 ヌルい公務員扱いから脱却しようとしている。だが生産されない装備も多く苦労しているとか。


 軍隊らしくていいんじゃないか。


 意外と入隊希望者は多い。農業以外は仕事がなくなりみんな飢えた。食事目当てらしい。大混乱以降の隊員たちは訓練で実弾射撃をしたことがないなど、興味深い話が聞けた。



 点呼、じゃがいも中心の朝食、日課の訓練を済ませて朝礼。殉職者の遺影が並べられた祭壇が用意されていた。


「殉職した第一小隊隊員に敬礼!」


 陸上自衛隊小倉駐屯地全隊員が遺影に向かって敬礼した。

 俺の敬礼は、鬼教官から指導が入るレベルだろうな。

 音楽隊の伴奏テープで国歌が流れ、国旗を掲揚する。

 通常は君が代ラッパだが、鎮魂のために全隊員大声で君が代を斉唱する。涙を流している隊員もいる。昨日まで隣りにいた隊員たちだから。

 国旗は半旗にされた。

 君が代を聞くのは何年ぶりだろうか。



 課業が始まり、俺も昨日貸し出した剣と槍を点検し、午後からの訓練の準備をする。

 宴会前に手入れをしたようだが、血のりは落ちにくい。清潔(クリーン)の魔法で汚れを落とし、一振一振、刃こぼれを研ぎ直して手持ちの油で磨く。

 作業途中で伝令が人を集めてくれ、分業で手伝ってもらえ助かった。砥石の数がなく、研ぐのは俺の作業だったけど。こっちのじゃ、砥石のほうが削れる。

 砥石で思い出した。髪とヒゲ。こちらの刃物では俺の髪は切れない。家のハサミがナマクラになった。

 ヒゲも家にあった電気シェーバーが壊れた。

 仕方がないので小剣で邪魔なとこだけだけ切って、いまは自衛官にあるまじき長髪を、革紐で束ねている。ヒゲも同じ小剣で剃っている。

 本当に体の組成が違っているのだと実感させられるね。



 じゃがいも中心の昼食後、再び全隊員がグラウンドに集められて戦闘訓練がスタートする。

 俺による短槍の訓練と昨夜の終礼で告げられていたが、ほぼ全員が防具をつけていない。

 うーん、Tシャツ姿? 銃剣道訓練もその格好でやってるらしいからなのか?

 右側前列で88式鉄帽2型に防弾チョッキ3型(改)をつけているかたまりは、昨日共闘した第二小隊と第三小隊か。

 なにが起きるか予想がついたんだろうな。だが、青い顔をして社会復帰していない二日酔いも混じっているようだ。


「特殊防衛連隊ケント少尉による戦闘訓練を行う! ケント少尉から訓練の説明をしてもらう!」


 演台に立った俺の格好は麻の上下に革鎧と魔物革のブーツ。眼前の迷彩服たちとは全く毛色が違っている。帯剣せず、刃先を白い障壁(シールド)で覆った短槍を持つ。

 演台の前にはテーブルが置かれ、短槍が並べられている


「特殊防衛連隊浅野ケントだ。高橋一佐の言葉を訂正しよう。これから行うのは訓練ではない。殺し合いだ。諸君らの目的は私を殺すこと。七十二時間の時間制限を設ける。私と駐屯地全隊員との殺し合いだ」


 何言ってんだこいつって顔だな。


「士官、下士官による戦闘指揮が行われる。だが指揮が下手くそなら私を殺せない」

「……」

「七十二時間後に、私が殺されていなかったら私の勝ち。殺せたら諸君らの勝ちだ。勝ったら褒美をだそう」


 顔を見合わせているのも多いな。多少の怪我は我慢してくれ。


「眼の前にある短槍は魔法で刃引きしている。自由に使って良い。その他にも武器は何を使っても構わない。諸君らの通常装備マチェーテとナイフ、真剣の使用を許可する。殺す気でかかってこい。では始めよう!」


 演台から隊員たちの前に飛び降り、槍を横にして数人まとめて弾き飛ばす。


「常在戦場! ボーとしてるんじゃねぇ!」


 当たるを幸い、突きの連撃を四方に撒き散らす。顔面、腕、胸、腹、足、体中を突き何人もが血を流して吹き飛んでいく。

 一応殺さないように手加減はするが、殺気を乗せて叩きのめす。


 第二、第三小隊に突っ込む。

 彼らはいち早く演台前の短槍を手に取っている。押し包むように囲んでくるが、ひとりが体勢を低くして向かってきた。

 短く鋭く突いてくるのを躱して、連撃を防弾チョッキの上から胸に打ち込む。昨日動きが良かった第二小隊のWACか。

 呼吸できずにゲハッ! と動きが止まるが、俺の後ろから別のWACが突いてくる。素早く振り返りながら身をかがめ脛を打ち、転がす。右から勢いよく踏み込んできたさらに別のWACの三連撃に、五連撃を合わせて昏倒させる。


 最初のWACに向き直ると、呼吸が整わないにもかかわらず体ごと突っ込んでくる。体を入れ替え足をかけて転がし、倒れたところを背中に三連撃。

 左からの突込みを受け止め、弾き返す。ついでに四連撃を返しておく。

 サッと振り返り、転がった隊員を飛び越えて囲みを破る。

 防具を一切装備してない隊員を的にして連撃を放つ。何人か吹き飛んでいくが、足が止まってしまうものが多い。演台を背に駆けていくと距離を置いて包み込むように隊員たちの塊が動き出した。


 反転。

 防具のない隊員たちを打ち据えながら、演台側の士官を目がけて槍を突きだし威圧しながら走る。驚いた士官の面前で軌道を変えて、高橋一佐へと身をかがめる。

 一足飛びに懐に入り、高橋一佐の腹に四連撃。腹を押さえて屈んだところを膝蹴りを顎にみまう。たたらを踏んだ顔面に右ストレートをいれる。


「大将を狙うのは戦さ(いくさ)の常道! 大将を守れない近衛はクズだ!」


 クルクルと体を回転させ、指揮隊の士官、下士官に連撃を浴びせ、打ち据える。


「俺は言ったはずだ! 駐屯地全隊員との殺し合いだ、と。お前たちも敵だ!」


 佐田一尉がヨロヨロと立ち上がり、俺を追ってきた隊員たちに大声を出した。


「第二、第三小隊はケントの攻撃を防げ! 全員で押しつつめ! 残りはテッパチと防弾チョッキを装備してこい! 急げぇー!」


 ほう。

 佐田一尉に向かってニヤリと笑いかけた。ま、彼はものすごい形相で俺を睨んできたけど。


 左からの殺気に槍を振り回す。突っ込んできたWACの槍を弾き返す。体勢が崩れた彼女の胸と腹に三連撃。

 取り囲んでくる小隊を引き離すように駆けて、槍を巻き上げてその手から飛ばしていく。


 俺の行き先は建物に向かう無防備な隊員たち。後ろから連撃を浴びせ、各個撃破していく。


「ケントに攻撃させるな! 時間を稼げ!」


 佐田一尉の声に反応しようとするが、無手ではかなわない。槍で突き、蹴り飛ばし、拳を顔面に叩き込む。

 もちろんヒドく怪我しないように、狙うのは顎の先。歯の治療が必要なくらいだと可哀相だからな。

 頭の回る隊員たちが偽装網を引っ張り出して向かってくる。数人で広げ俺を取り込もうとする。網の中央に向かって走り、被せられる直前でジャンプし、網を飛び越える。

 追いついてきた三人のWACが、再び突っ込んできた。


 いい根性してるぜ。


 ふたつの小隊全員が槍を突きだして、俺を取り囲む。ひとりを狙おうとすれば距離をあけて円で俺の行動を阻害する。


「いい手だ! だがこれならどうだ!」


 彼らの頭上を飛び越えて囲みから抜けだす。

 もう一度囲もうとする彼らの隙間を、槍を防ぎながら高橋一佐へと駆け抜ける。

 小隊は俺について全力疾走し、押しつつもうとする。高橋一佐の前では士官たちが槍を手に壁を作った。

 壁の直前で俺は軌道を変えて、建物から防具をつけながらあたふたとでてくる別の隊員に向かう。

 隊員のびっくり顔が引き締まった表情になり、マチェーテを抜剣して突いてきた。

 マチェーテを弾き飛ばされ五連撃を受けて沈む。


「楽しいな、オイ! さあ、祭りは始まったばかりだぞぉ!」


お読みいただき、ありがとうございます。

以下は押しつけがましくて本当は嫌なのですが、評価はいらないと思われるんだとか。


客観的に見れていない部分もあり、ご感想、ご意見などお送りいただけると感謝感激です。

誤字脱字もお知らせいただければ、さらに感謝です。

★★★★★評価、ブックマーク、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ