やっぱりこっちがいいか
現在、福岡県小倉市が舞台です。
何度か行っていますが、夜明け前から焼き肉で生ビールが多いです。
火弾。
眼の前に白い四つの火弾を浮かべ発射する。
回転音や発光、発射音をおさえている。ただ貫通力のみをあげている。
スナイピングは位置を知られないようにすることが、望ましいものだから。
自警団員を追いかける二体のオークの両足を撃ち抜いた。二体ともころがって叫び声をあげる。
デモンストレーションなら派手に頭を吹き飛ばすんだけど。この後兵士剣装備の小隊が来るからな。実戦経験を積ませたほうがいいだろう。
「ビショップ、こちらクイーン。送れ」
『こちらビショップ、送れ』
「開始した。魔物の動きを抑える。実戦経験とせよ……送れ」
『実戦経験、了解。送れ』
「クイーンは女性たちを救出する……送れ」
「救出了解。送れ」
「敵の行動を阻害する。分隊で仕留めよ。終わり」
ぐだぐだな交信だった。慣れないと無線通信のルールが面倒だな。こういうところは俺も一緒に訓練しないといけないんだな。
多国間で行う軍事演習なんかは、打ち合わせや事前連絡に膨大な手間がかかるって聞いたことある。
普通科連隊がどんな風に戦うのか知らないし、ましてや銃器使用の遠距離戦じゃなくて近接戦闘だ。乱戦での行動がまったく予測できない。
女性の救出だ。
犯しているオークたちの狙える両肩、両足を狙撃していく。異常事態にオークたちが騒ぎだした。
送電塔から飛び降りて駆けだす。
兵士剣、片刃でこちらの世界ならアジアのフィランギに近いかもな。刺突も斬撃も行えるようにした物だ。片刃なので峰に手を当てて防御したり体重をかけたりもできる。
彼らは初見でやれるかな。
剣を抜いて走り抜けつつ、障害となるゴブリンにすれ違いざまに傷をおわせる。
オークたちは敵襲と武器を引き寄せ、警戒し始めた。
頭が追いつかないオーガ。異常だとは理解できるので、棍棒で手近なゴブリンを打ちのめすものもでた。
左手に魔法銃を取り出し、駆けながらオークの四肢を撃つ。
「火球!」
火の玉でオーガの顔を焼く。目が見えなくなり棍棒をメッタヤタラとふりまわして、ゴブリンが吹き飛んでいく。
オークたちの前に走りでて叫ぶ。
「ウオオオオオォォォ!」
咆哮の魔法をのせる。
ゲームならタンクが使う「挑発」スキルってとこだ。魔物の戦意を削ぎ、萎縮させる効果を狙った魔法だけど、ヘイトを稼ぐのにも好都合なんだ。
残念なことに相手の知能が低いと、効果が薄いんだけどな。ゴブリンとオーガだと「ちょっとビックリ」程度なんだよね。
最大威力だと軍団や師団単位で効果がでる。味方を巻き込んでしまうと精神障害がでかねないので要注意なんだ。
注目が集まったところで、オークたちと斬りむすぶ。
魔法銃に変えてもう一振り剣を左手に出して、オークの剣撃を受け流す。
女性たちから引き離すよう道路に向かって場を移していく。
「麻痺! 空気機関砲!」
オークたちに麻痺をかけて、空気機関砲で弾き飛ばしていく。
空気機関砲はポンポン砲なんて呼ばれている対空機関砲を空気圧で再現したものだ。火魔法とあわせた火弾機関砲は威力が出すぎるからな。
「障壁!」
オークを離せたので、女性たちを障壁で囲う。
ドローンから、敷地に入ってくる各分隊の姿を受けとった。入口で抜剣し状況の確認に立ち止まっている。
「分隊! ゴブリンを狩れ! ひとりで戦うな! 必ず複数で戦え!」
指揮系統が違うからな、俺の命令に戸惑うのも無理はないか。
「棒立ちになるな! 麻痺!」
小隊を攻撃しようとしたゴブリンを軽く麻痺させる。好機とばかり自衛隊員はゴブリンに斬りかかる。ゴブリン剣で受け止められ、数度斬り結んでいる。
分隊の残りが斬りかかる隙を探して取り囲んでいる。
「斬るな! 全員で突け! 斬るのではなく、四方から一度に突いて傷をおわせろ!」
なんとか指示に従ってくれて、ゴブリン一匹を複数人で囲んで突きだした。剣道で一対多なんてないからな。それでも彼らは適応してくれている。
「麻痺!」
オーガに強めに麻痺をかけて、行動を阻害しつつオークと斬りむすぶ。簡単に斬り伏せられるんだが、こいつらは教材だ。殺さずに行動阻害にとどめる。
素早くあたりを見回し、ドローンも使って戦いを観察する。
WACはリーチが足らずに苦戦気味か。
「麻痺!」
オークたちも麻痺させて、戦っている分隊、特にWACのいる隊をまわる。
「武装交換! これを使え!」
亜空間収納から柄が2mほどの短槍を取り出して手渡していく。小剣を穂先にしたものだ。菊池槍をモデルに造らせた短槍で、訓練不足の兵でも戦えるようにしている。
ハズラック王国では常設軍も置いていたが、徴兵による戦争も多かった。各領の集める歩兵は農民が主で、どうしても対人戦の訓練が不足する。
彼らも魔物狩りの経験はそれなりにあったが、四つ足以上が多く人型は冒険者か狩人に任せるのが普通だった。
槍は歩兵が使うにちょうどよい武器なんだ。
二匹のゴブリンを相手に苦戦している分隊。
すばしっこそうなWACがゴブリンと打ち合っている。払い小手を狙うが、変則的な動きをされてかわされてしまう。体勢が崩れ、体当たりを受けて転がされる。
「麻痺!」
ゴブリン二匹を麻痺させ、動きを止めている間に剣を短槍に持ち換えさせる。この分隊にはWACが三人いるようだ。他の二人にも短槍を使わせる。
「どこでもいい敵の体を素早く、何度も刺せ!」
一瞬ポカンとした顔をする三人。
「槍で手傷をおわせ、全員でメッタ斬りにしろ!」
「了!」
うずくまる二匹のゴブリンを三人が刺し、他の隊員たちが剣で斬り刻んでいく。
「剣も斬るだけではなく、突き刺せ! 届くところ全てを傷つけろ! 行動不能が目的だ!」
「了!」
短槍を中心に兵士剣でも突きの攻撃が主となり、ゴブリンを減らしていく。
剣道の試合みたいにキレイに戦おうとしてたなぁ。
一対一じゃないんだから型通りに戦う必要はないんだ。一対多は自分が傷つかないようにすれば、どこを狙ってもいい。
相手が傷ついて動きが鈍ったら、みんなで突き殺してしまうのが一番だな。
やっぱり剣の増産よりも槍を揃えるか。短槍も長槍も両方必要だな。創作なのかもしれないが、藤吉郎は偉かったんだね。
槍も剣もゴブリンに有効。
革鎧まで斬れるので自衛隊員たちはこれまでの鬱憤を晴らすかのように、ゴブリンを追いかけ斬り刻んでいく。
麻痺しているオーガも取り囲んで屠っていく。
分隊長が指揮をしているが、隊員同士でも声を掛け合って殺していく。いつの間にか怨みごとの声や笑い声まで混じっている。
倒れた息をしていないゴブリンとオーガを突き刺し続けて、原型を留めていないものもある。
返り血を浴び、笑いながら攻撃する姿は、狂気的で酸鼻なものになっていった。
しかたないか。
効果の低い武装で辛酸を舐めてきたんだろうな。責めることはできない。
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