夏の氷 ※夫視点
勇者一行である俺達は世界各地を移動している。
行く先々で討伐や護衛なんかして路銀を稼ぐこともあるが、魔族殲滅のために戦地に向かうことを優先すると、その機会も薄れる。
そのため物資の補給は重要だ。しかし、あまり頻繁に行うと魔族に居場所を探知され待ち伏せや罠を仕掛けられる恐れがある。
なので、魔術師が祖国の術者と密かに連絡を取り合い、日取りを決めてから大きな移送術式で補給物資を受け取っている。
俺の妻からの手紙をはじめ、仲間たち宛の個人的なものも全てこの移送術日に受け取ることになる。
強い日差しを浴びながら草原を進む。
しばらくすると、街道が見えてきた。
魔術師がほっと胸を撫で下ろす。
「よかったー!この調子で今日中に関所のある街に着ければ、予定通り移送術が行えそうです!」
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その日の夜、無事に移送術式が行われた。
勇者達は「久々の街だー!」などと言って飲みに行ってしまった。
手紙を一人で読みたい俺に気を遣ってくれたのだろう。
ベッドに腰掛け、手紙をそっと開く。
見慣れた文字に心が和らぐのを感じた。
氷か、いいな。俺もあとで氷菓を食べようか。
こっちもずいぶん暑くなった。
お察しの通り、鎧に施された加護で多少はマシになっているけれど、やっぱり暑いものは暑い。
魔術師なんか体感温度を下げる魔法を編み出したけど、無駄な魔力を消費するなって僧侶に怒られてたよ。
ああ、君に会いたい。声が聞きたい。
君から届く手紙が何よりの心の支えだ。




