春の兆し ※夫視点
※旦那様視点
魔族に奪われた砦に断末魔が響き渡る。
この地方一帯を苦しめていた大魔族に、とどめの一撃を与えたからだ。
「お、のれ、オノレオノレオノレェエエエ!!!」
崩れ去る体からおぞましい魔力が吹き出し俺に襲いかかるが、王より賜った聖騎士の鎧が輝き、弾き返す。
弾かれた魔力は行き場を失ったように漂っていたが、そのうち霧散していった。
なんとか勝てた、と思わず座り込むと怪我した仲間の面倒を見ていた僧侶が走り寄ってくる。
「聖騎士殿、大丈夫ですか!?今の呪いは!?」
「呪い?多分鎧が打ち消したが……」
「他の皆は!?呪い返しを受けてませんか!?」
全員なんともなかったので、動ける程度に回復してもらってから移動した。
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一ヶ月後、大魔族を倒し残党もあらかた殲滅し終えた我々は、次の土地に移動する準備をしていた。
復興もかなり進んだ。あとはこの地に住まう人々に任せて問題ないだろう。
勇者一行のパーティメンバーに聖騎士として選ばれて、そろそろ一年になる。
魔王を倒すだけでなく、各地の苦しめられている人々を助けながらの旅はかなりの時間を要する。それは理解しているし仕方ないのだが、そろそろ一度くらいは家に帰りたいとたまに考えてしまう。
だって家には――。
「みんなー!お待ちかねの移送術日でーすよー!!」
魔法使いの声にハッと顔を上げると、勇者がニヤニヤとこちらを見てくる。
「愛する奥さんからの手紙、あるといいな?」
「うるさいな、あるに決まってるだろ」
いつもの封筒を見つけると、自然と頬が緩む。
高価な陶器が何かを扱うようにそっと封を開ける。
ああ、今そちらは春なのか。
こちらは高地だからまだ雪がチラつくこともあるよ。
体調は崩していない。頑丈だけが取り柄だから。
どうか心配しないで、つつがなく過ごしてほしい。
君の、みんなの生活を、俺たちが守ってみせるから。




