秋の彩り
旦那様に知らせるべきか否か、決心がつかず時間だけが過ぎていった。
両親には頼れない。そもそも口減しに、私を娼館に売ろうとしていたような親だ。
そうならなかったのは、偶々見かけた旦那様が先に私を買い取りそのまま妻にしてくださったから。
"一目惚れなんだ。よかったら俺に着いてきてくれないか?"
旦那様の温かい言葉と笑顔を忘れることは絶対にないだろう。
王都で騎士として働いていた旦那様が特別な任務に就いたのは、一緒に暮らし始めて僅か数ヶ月のこと。
とても危険な任務なので帰って来れないかもしれないと言われ、寂しくて、悲しくて、せっかく娶ってくださったのにお役に立てないことが申し訳なくて、涙が溢れた時のことを思い出す。
"俺のことは気にせず、幸せにつつがなく暮らしなさい。どうしても気になるなら……そうだな、手紙を送ってくれるかい?"
――とうとう、指先から腕まで炭のように黒くなりほとんど動かせなくなった。
足元も覚束ずベッドに横になる日が増え、私は覚悟を決めた。
「……マーサ、お願いがあるの」
明日は旦那様に手紙を送る日だ。
『親愛なる旦那様
お元気でいらっしゃいますでしょうか。
いつもと字が違い驚かれましたか?手を怪我してしまったので、マーサに代筆してもらっています。
若いのに気が利く、優しい子です。
こちらは葉が赤く色づき始め、ダリアやマリーゴールドが満開になりました。
春とはまた違う鮮やかな色合いに、心躍る日々を過ごしております。
旦那様がいらっしゃるところはどんなところでしょうか?
せっかくの実りの季節、なにか美味しいものや天の恵みを受けていらっしゃいますように。
寒くなる前に、シャツやハンカチもわずかながら送らせていただきます。
刺繡が下手ですが、どうか笑わないでくださいね。
旦那様の、皆様の無事を心よりお祈りしております。
どうか、くれぐれもご自愛くださいませ。』




