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41話 『提案』

 その後、ハヤトは倒れた3人の様子を確認したが、皆怪我を負って直ぐには動けないものの命に別状はなかった。

 そのため、ハヤトはゴブリンを追う様に建物の内部から3階へと上がって来ている。


「な! こっちにも隔壁が降りてるのか」


 小娘が、変貌したゴブリンを防いだ隔壁の事だ。

 神族には世界を管理するために、自分の管理下にある領域を召喚する事ができる。

 かつて塔の最上階を牢獄から変化させたのもその能力である。


「大方、咄嗟に部屋ごと隔離でもしたのだろう」


 元々は世界を管理するための管理部屋を召喚する能力であり、部分的に召喚する方が難しいのだろう。

 ゴブリンから逃げる為の隔壁であるが、その隔壁は偶々その管理部屋に付いていた副産物に過ぎないものと思われる。

 要するに、召喚された管理部屋は小娘が乗っていた戦艦の1部屋に違いない。

 この部屋の隔壁と同じものは校舎にも点在していたが、逆説的にそれらも戦艦の一部という事になる。

 小娘の気配はありながら戦艦はどこにいったのかとは思っていたが、校舎と融合するような形で存在していたらしい。


 とにかく、隔壁は部屋自体の防御機構として一気に落とすしかなかった様なので、中から逃げ出すこともできていない筈だ。


「とにかくやってみるか」


 隔壁に対して右拳を構えるハヤトのしようとしている事は判る。

 何にせよこの隔壁を突破しない事には話にならない。

 力任せにこじ開けようとする試みは何も間違いではない。

 だが、果たしてそれは上手くいくものか。


「は? なんだこれ。硬いって言うより全てのエネルギーを持って行かれたような……」


 案の定、ハヤトの拳は隔壁を貫く事も、歪ませる事も、そして反動で拳を痛める事もなかった様だ。


「それはそうだ。元は神の乗り物よ。神のシステムが通じないのは道理であろう」


 下位の存在が上位の存在へと干渉することはできない。

 ステータスボードと似たような現象であるが、ステータスボードは世界そのものを盾にしている為にほぼ破壊不能であるバグであるが、戦艦の隔壁に関しては仕様内だろう。


「あいつは隔壁も壊していたよな?」


 あいつとはゴブリンの事だ。

 隔壁で防がれはしていたが、なんとか入り込もうとするゴブリンの攻撃で、徐々にではあるが隔壁にダメージが入っていた。


「さてな。恐らくコアの影響が出ているのだろうが、レベルとやらの影響かもしれぬな」


 要は相性の問題だ。

 只のシステム下の強さは無効になるだろうが、ゴブリンはコアを持っている。

 戦艦はアーティファクトを超える伝説級のアイテムだが、世界の根源足るコアよりは格が劣る。

 もしくは、レベルの超過がバグであるならば、そのバグり方次第ではシステムに干渉できる可能性もある。

 急激にバグったゴブリンであれば、ハヤトの様にレベル上限も突破している可能性はあり、またその場合はハヤトよりレベルが高い様に思われる。


「何かここを先に突破する方法はあるか?」


 やはりハヤトは切り替えが早い。

 何が問題か認識した上で、その具体的な解決方法へ意識が向かっている。

 1つ手っ取り早く明らかな方法は既に認識しているだろうが、それをただ推奨するだけでは面白味が無いので、もう1つの手段を教えてやる。


「ふむ。お主のレベルならば、天井や床ならば壊せるだろう。だが、早いのは我を解放する事だな。我にとってこの程度の隔壁、障害にすらならんわ」


 神族が管理部屋の召喚する場合、元の建造物に上書きされる訳ではない。

 その場の物、もしくは取り外して支障の無い壁までは入れ替え可能だが、天井や床、重要な柱はそのままだ。

 

 そのため、多少時間は掛かるが階下から天井を、もしくは屋上から床を破壊する事で侵入は可能だ。

 そうでないならば、我のブレスで隔壁をぶち抜くかとなる。

 時間的にはどちらもそれ程差は無さそうであるが、我のブレスであれば隔壁ごと貫いてゴブリンに攻撃する事もできるのでやや分があるか。


「そうだな……いや、それならもっと早く行けるか」


 ハヤトは一瞬我の提案を考えた様だが、どうやら別の選択肢を取る様だ。

 その証拠に、ハヤトはアミュレットを触れるでもなく、階段に向かうでもなく、改めて隔壁へと近づいていく。

 そして、隔壁へと向いていた視線は下方へ向き、隔壁と床の境目へと向かう。

 いったいどうするのか、そう思ったところでハヤトはその境目の床部分へ両手で手刀を勢い良く突き刺した。

 本来人間には不可能な行動であり、レベルの補正があるとは言え、普通の人間なら躊躇いそうな行動だ。


 それを躊躇う事なく出来てしまうハヤトはやはりどこか異常だ。

 まぁ、その行動はともあれ、今ハヤトのやろうとしている事はある意味正常な人間の考えとも言える。


「じゃあ、いくぞ。何があるか判らんから準備しとけよ」


「言われるまでもないわ」


 ハヤトはそう宣言すると、落ちていた隔壁を持ち上げて開き、奥へ続く部屋への道を切り開いた。

 何も、障害を力任せに突破するでも、裏道を通る様な特殊な発想だけではなく、素直に隔壁を開けるという発想だ。

 それが持ち上げるという考えに至るのはやはり異常だと言えなくもないが。

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