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39話 『静寂』

 この世界では、魔物を倒すとドロップアイテムを落とすようだ。

 それは、ミフユが斬り飛ばしている肉片とは違い1つの宝玉だ。

 ハヤト達は魔核と呼んでいるが、放っておくと魔物が復活するという代物らしい。

 つまり、言ってしまえば竜種の卵の様なものだ。


 通常魔物は、勝手にコアのエネルギーを利用して生まれ、倒されるとエネルギー化してコアに戻る様な循環がなされる。

 だが、この様な変化をするのであれば、システム側があえて魔物を作り出している様な印象を与える。

 こうなると、魔物が成長した分は還元される事は無いのだろう。

 レベルの上限があることでエネルギー不足で破綻することは無いと考えはしたが、流石に全ての魔物が上限までレベルアップしてしまえばどうなるだろうか。


 そもそも魔物がレベルアップすること自体がバグなのだろうが、このバグによる世界の破綻は、別のバグにより暫くは考える必要が無くなっている。

 その別のバグ――それが、ゴブリンが回復に使っている方法だ。

 別のエネルギーを取り込む事でダメージを回復する、端的に言えば魔核を補食することで回復している。


 回りには無数の魔物が居たため回復し放題であったが、それもハヤト達の行動により終焉を迎えそうだ。


「先輩! いけるっすよ」


「グブ、グブブブブ」


 そんなミフユの声の通り、今ゴブリンの周囲には魔核も魔物も存在していない。

 ハヤト達が上手くゴブリンを追い込んだ結果だ。


「さぁ、躱してみろ」


「グブ」


 そんなハヤトの声と共にハヤトの右拳がゴブリンへ向かうが、すんでのところでゴブリンの身体が地面へと沈み込み回避される。

 これは、闇属性の魔物の能力の1つだ。

 普段なら絶対的な回避能力ではあるが、今のハヤトであれば、逆に回避不能な位置に逃げ込んでしまったと捉える事もできるだろう。


「地面ごといってしまえ」


「元よりそのつもりだ!」


 ハヤトの振り切る直前の拳は途中で方向を変え、そのまま地面に直撃する。

 結果、地面の土砂ごとゴブリンが空中に投げ出されるが、その状態では回避を仕様がない。

 案の定、ハヤトも抜かりなく左拳をゴブリンの胴体へ直撃させている。


「グボァ」


 その勢いのままゴブリンは吹き飛び、校舎の壁にぶつかって止まる。

 完全なクリンヒット、それが激しい戦闘の終わりを意味する様な空気が辺りに走り、一時の静寂が場を支配する。


 だが、残念無念。

 まだ終わりでは無いようだ。


「緩かったな」


 直撃はしていたが少々体勢が悪かった。

 何か武器でも使用できていたら違ったのかもしれないが、倒しきれなかったゴブリンが立ち上がってくる。


「ゴ、ゴ、グブブブブ」


 そのゴブリンだが様子がおかしい。

 と言うよりは、懸念していた事が起きている。

 ゴブリンの体内から、コアのエネルギーが大量に漏れ始めており、その青い光がゴブリンの身体から透けて見える程だ。

 恐らく、瀕死になったゴブリンが何か解決を図りコアに手を出したのだろう。

 だが如何せん、やはり制御ができなかったとみえる。


「むむ、まずいな。コアが暴走しておる。さっさと止めを指すのだ!」


 この分だと、限界を超えた青のコアのエネルギーが周囲に溢れだしかねない。

 世界を創造できる程のなんでもありなエネルギー――いや、今は『成長』に絡むエネルギーが無闇に溢れた場合何が起こるだろうか。

 全ての魔物がいきなりレベルカンストするような変化であればまだマシだが、無生物である建物やらが成長し始めたり、人間がバグモンスターの様に姿形が変わるような変化になる可能性も十分にある。


 我の言葉により、ハヤトは迅速にゴブリンとの距離を一気に詰め始めるが、どうやら遅かった様だ。

 コアを制御するにはゴブリンにはあまりにも適性が無さすぎた様だ。

 コアのエネルギーは簡単にゴブリンの抵抗を上回り、一気にその力が膨れ上がる。 

 膨れ上がり、遂にゴブリンの身体という最後の砦を突き破ろうというところまで進み、そして止まった。


 制御に成功したというより、強制的にコアへの接続が消えたかの様な止まり方だ。

 そして、その理由は直ぐに判った。

 ゴトリとゴブリンの頭部が転がり落ち、続けて胴体が崩れかける様に崩壊し緑色の魔核だけが残った。


「……倒された? 一体どこから……」


「そこだな」


 こちら側からは何もしていない。

 そうなると何かが起きたとすればゴブリンの背後からだ。

 案の定、背後の校舎の壁には横方向に真新しい裂け目が出来ている。

 そして、そこには新たな裂け目が出来ようとしている。


「こっちに来るようだ」


 横方向に出来た裂け目を拡張するように、縦に横にと刃物の先端が次から次へと現れては消えていく。

 そうしてバラバラと崩壊した壁の先から、それを行なった存在が外へ出てきた。


「ふむ。こやつか」


 まぁ、こんな丈夫な壁を柔らかい素材の様に斬れる存在なぞ、他にそう簡単には居ないだろう。

 大鎌を構えた白い死神――小娘の従者であるヒルデだ。

 体力回復として睡眠を取っていた様だが、ゴブリンとの戦闘が佳境となるこんな時間にようやく起き出して参戦したらしい。

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