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31話 『視界』

「お、ハヤト。起きたな」


「あ、先輩凄いっすよ。あのドラゴンを一撃で倒すなんて。どんな裏技を使ったんすか?」


 我が封印された事実について思考していると、部屋の外から別の2人がやってきた。

 小柄な少女は、先程居た人間の1人で、もう1人の大柄な少年は初見だ。


「倒したんじゃなく、封印したらしいぞ。これに」


 ハヤトと呼ばれた少年は、我が封印されたアミュレットをその2人へ掲げて見せる。


「これって、先輩の持っていたアミュレット? っすよね」


「は? そんなすげぇアイテムを元から持っていたってことか?」


 2人の言動により、ハヤトがこのアミュレットをどこで手に入れたかの情報が得られた。

 やはり、最近になってから入手した訳ではなく、昔から持っていた代物らしい。

 大方、親の形見とかそんな理由で知らずに受け継いできたのだろう。


「それで、封印した事で何が出来るようになったんだ? ドラゴンの力が身に付いたとかそんな感じか?」


「なんか妙に身体が軽いんだよな。全能感と言うかこれが効果かもしれない」


 ようやく本題に戻った。

 どうやって地面への衝突を回避したかという話だ。

 ハヤトの見解では、身体能力が上がったから、そしてその理由は我を封印したアミュレットを装備したからという結論を出した様だが、生憎とそうはならない。


「いや、それは違うな。それは我の標準的な力だ。我の追加能力としては神のシステムによる妨害を受けぬところくらいなものよ」


 アミュレットの効果で聞き及んでいるのは、封印した相手の特殊な能力が使用できる様になる効果だ。

 肉体的な力は完全に封印される。

 その意味では、ハヤトが自分の生命エネルギーを溜めてブレスとして撃つ事は可能だろうが、竜種としてのエネルギーがあってこその効果であり、その能力に意味は無いだろう。

 

 他の能力とすれば、世界を渡る能力か。

 反転世界からの移動は困難だが、流用して空を飛ぶ位はできる可能性はある。

 ただ、尋常ではない計算力が必要なので現実的ではない。


 後残るとすれば、神族が作る世界のルールで、自身が不利益と感じる事象への耐性がある位だろう。


「って事らしいぜ。残念ながらあまりメリットは無いみたいだな」


 ハヤトはあっさりと我の言葉を受け入れた様だが、その場合、身体能力が上がった理由に別の要因でも思い付いているのだろうか。

 他の者の様子を確認すると、長髪の少女はハヤトと同じ様に納得したのか何やら頷いている。

 だが、後から入ってきた2人の顔には話が理解できなかったのか疑問符が浮かんでいる。


 まぁ恐らく、ハヤトや横の少女の理解力が高いのだろう。

 その様な人物でもいないと、こんな短期間で神族の存在に気付いたり、世界のルールを理解して活動できたりしないだろう。


「あれ、先輩。誰と話してたんすか?」


「念話の様なものじゃないかしら。その条件は判らないけれど、簡単なところでは接触した事があるかどうか、とかね」


 どうやら、理解力の話以前に我の言葉自体が届いていなかった様だ。

 声が聞こえる条件があるなんて話は初耳だが、接触は条件ではないだろう。

 何せ、我は触れずして声を聞いた事がある。


「まぁ減るものじゃないし試してみるか。ヤスタカ、ちょっと持ってみてくれ」


 ハヤトは首からアミュレットを外し、左方向に居た大柄な少年へとそれを手渡した。

 その瞬間、視界が変わった。

 部屋は変わらないが、目の前にはベッドで半身を起こしたハヤトが映っている。

 つまり、持ち主が変わった事で感覚を共有する相手が変わったという事だろう。


 ともすれば、誰も所持していない場合はどうなるのだろうか。

 今は肉体が無くなったとは言え、状況が異質であり、それを解決しようと足掻く人間どもを観測するのも面白い。

 だが、仮に何の感覚も感じなくなったらどうだ。

 あまりに退屈(・・)であり、耐えられそうにない。


 少なくとも、人間どもが急に意識が無くなり、その後回収もされない状況――つまり、魔物に全滅させられる状況だけは避けねばならない。


「持ってみても特に変化はないな。しかし、これにあのドラゴンが入っていると思うと恐れ多いわ」


 この少年は、目の前に白い板を出現させて何やら確認し始めた。

 再び見たこの白い板はハヤトがブレスを防ごうとした際に出現させて物と瓜二つだ。

 さも当然の様に出現させた事より、ここに居る人間全てが出現させる事ができるのだろう。


 折角なので改めて干渉が可能か試してみようとしたが、再度視界が変わった。

 少年が隣の少女へアミュレットを手渡した為だ。

 その結果、視界の中心にアミュレットが大きく映る。


「あ、宝石の色が前と違うっすね。これが封印された証っすかね」


 確かに我が持っていた劣化品は無色透明であったが、このアミュレットの宝石は紫色に染まっている。

 そこが違いなのかもしれないが、少なくとも劣化品には封印する機能は備わっていなかった。


「声はどうっすかね。因みに名前とかあるんすか?」


 そう言えば、それが目的だったな。

 接触だけで効果があるとは思えないが、試してみる分には特に問題はない。

 

 しかし、名前か。

 過去の僅かな期間だけ呼ばれた名前を思い出すが、それをわざわざ伝える必要もないだろう。

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