(6) 厄災と奇跡
ーーー6年前ーーー
「魔術は魔法を模倣したものであり、正確な術式を行使すれば、誰でも魔術を発動することができる。魔法と魔術は似て非なる存在だ。もし、我々が魔法を使うとき、希望とともに絶望も生み出されるだろう。この世界では何度も魔法使いが起こした厄災に遭っている。魔法は危険だ。この世の全ての魔法使いは厄災の原悪になる運命を背負っているのだろう。
これが、一般人が魔法を使うことを禁止されている理由です。現在存命の魔法使い達は、特殊な技術で魔法を行使しているので厄災を起こすことはないと言われていますが、それ以外の魔術師は一般人が使うと厄災が起こると言われています。1番新しい厄災といえば3年前の<黒血のビセア>の被害を想像できるでしょう。」
教師の言葉に生徒は、魔法を決して使わないことを肝に銘じていた。ただ1人を除いて。
「魔法使い以外の人が魔法を使うとどうなるのですか?」
ある生徒の発言に、一同はざわめいた。魔法は厄災。神に許されたもの以外が使用することは、禁じられているのが普通で、魔法について聞くという行為は暗黙の了解で禁断とされている。
「ルオ=ノレス。いいかげん魔法を使うことを諦めなさい。魔法を厄災でもあり、<麻薬>でもあります。あなたの大切な方を失いたくなければ、魔法という言葉は金輪際口から出してはいけません。」
「はい、分かりました。」
キーンコーンカーンコーン
終業の鐘が鳴り、教室の外からは他の生徒の足音や話し声が聞こえる。
「今日はここまで、次回は魔術の<基本公式>をするので予習をしっかりとしておいてください。」
「起立、礼!」
「「「「ありがとうございました!」」」」(クラス一同)
生徒達は、授業が終わるといなや教室から出ていものや、教師に質問するもの、黒板に落書きするものもいた。
ルオは教室を出て、学校の中庭で、さっきの授業で使った教科書を開いた。
「ここに書かれてあることは、要約すると“魔法は使ってはいけない“ということ。でも、使ったらなにが起きるかは<厄災>だけで明確にはされていない。最近は魔法を目にすることがないから分からないのか、あるいは、、、、。」
「相変わらず懲りないな、KY野郎!」
突如、教科書が視界から消えた。上を見ると、ルオのクラスメイトの少年が教科書を取り上げていた。
「KY?」
「“空気が読めない“の略称だ、バカ! 魔法は触れてはいけないものだっていうのに、なんであんな非常識なことを言うんだ!」
「非常識って、俺はただ分からないから聞いているだけで・・・。」
「ゼルク〜!そんな馬鹿は放っておいて、早く次の授業に向かおうぜ!遅れちまうよ!」
「わかったよ。おい、ノレス。」
「?」
「そんなに魔法が使いたいなら、この教科書なんていらないよな?」」
ボトンッ
少年はルオの教科書を中庭の池に放り込んだ。
「あ、、。」
「じゃあな、未来の厄災君♪」
そう言うと、少年は走り去っていた。
ルオは無言で水面に浮かんだ教科書を取りに行った。
(俺は、奇跡の力を知りたいだけなのに、なんでダメなの?)