(51) ギヌアと天使
「こ、子供?」
子供の悲鳴が聞こえ、ルオの中から白い羽が生えた子供が出てきた。
プラチナブロンドの長い髪に、紫の瞳をもち、見ただけでは性別が分からない容姿だった。
子供は床を転がりながら、苦しんでいた。
「何百年も使ってないから、性能が弱まってるけど、天使を引き剥がすことは出来たね。」
ギヌアが苦しむ子供の前に立った。
「久しぶりだね、<ラジエル>。 クローギヌ遺跡はどうしたの?」
ラジエルと呼ばれた子供はギヌアの声に反応し、起き上がり、隠れるようにルオの背後に立った。
「こんな忙しい時にお前と会うことになるとは思わなかったぞ、<羽狩り>よ。」
(なんかどっかで聞いたことがあるような口調だな・・・。)
ルオは背中に隠れているラジエルを見て、そう思った。
「君の忙しい時って、<憑依>のこと? 残念だけどそうはさせないよ。」
「んな!? 我がルオ君に<憑依>だと!? そんなことがあるか! 我はキマイラ君と絶賛シェアハウス中だぞ! それに、我は魔力があまりにも少なすぎるがゆえ<憑依>なんぞできるわけがない!
数百年の付き合いなら分かるだろう!? 我は天使の中で最弱であると!」
ラジエルはルオの体にぎゅーっと抱きついて、ギヌアに猛抗議した。
(なんだこれ?)
ルオはこの2人のやりとりがよく分からなかった。唯一分かったのは、このラジエルと言う天使も、極秘レベルの個人情報のことを知っていると言うことだ。
「確かに、君は最弱だったわ。忘れてたわ。」
「お主、絶対に覚えておっただろう?」
「ぜーんぜん。忘れてましたよ? ラジエル様♪」
「お主のその煽る時の顔を何度燃やしてしまおうと思ったことか・・。」
「君が魔術を使っても、マッチ棒ぐらいの火しか出ないと思うよ?」
「分かっとるわ!! ・・・というか、お主は我に何か聞きたいことがあるのではないのか? 我をすぐに殺していないから・・。」
ラジエルはルオから離れて、ギヌアの前に立った。
(ラジエルって、カノムよりも小さいな。)
「聞きたいことがあるのは僕よりも、ルオ君の方なんだけどね。」
ギヌアはルオの顔を見た。
「へ? あ、はい! 」
ルオは突然話を振られて、びっくりして背筋をピシッと伸ばした。
「ルオ君が、我に?」
ラジエルが後ろを振り向いた。目は子供のようにキラキラと輝いている。
「こんな最弱な天使である我に興味を持ってくれるのは、まさに愛があるあ・か・し♡ じゃぁあ!」
「愛ぃぃぃぃぃいいい?」
ルオはまさかの言葉に驚いた。
「知ると言うことは、知る対象のものに好意があるということ。すなわち愛。 ルオ君は顔も見ておらぬ我に好意を持つとは・・・、我、ついにモテ期が到来したぞ。」
「いや、君にモテ期なんて一生来ないから。」
ギヌアは嬉しそうなラジエルを、しょうもない死に方をした獣を、見るような見るような目で見た。」
「あの、知りたいのは天使というものについてです。」
「天使、つまり我を知りたいのだと?」
ラジエルは背中の羽で宙に浮き、ルオの顔に近づいた。(あとちょっとでラジエルとルオの顔面が衝突する距離)
「そうなりますね。」
ラジエルはルオから離れ、ギヌアとルオの真ん中の位置に浮き、拳を宙に突き出した。
「いよぉぉおおおおおし! 我の質問大会を始めるぞ! ギヌアよ! 酒をもってこい!」
「君はクソ雑魚下戸でしょ? 飲んだら死ぬよ?」
ギヌアはラジエルに対して、冷たすぎる声のトーンで言った。
「ちっ、仕方がない。ギヌアよ、何か飲み物をと甘いお菓子を持ってこい。」
「じゃ、紅茶でいいですね?」
「あいつの好物かよ。」
「紅茶に合うお菓子がちょうどたくさんあるんだけどなぁ〜。」
「紅茶でよろしくじゃ!」
「はいはい。」
(ギヌア様とラジエルって腐れ縁の関係なのかな? 羨ましいな、あんな感じで口悪いけど、息が合う仲は。あの頃が懐かしいや。)
ーーーー
「これが! 創世神話で生み出された、始まりの樹、<世界樹>! なんとお美しい! まさか間近で見られる日が来るとは! 私はもうこの人生に悔いはありません!! 太陽神よ! ありがとうございましす!」
カノムは世界樹を間近で見ることができ、感動し、大粒の涙を流していた。
世界樹と太陽が重なっているように見え、世界樹の葉の隙間からあたたかな光が漏れていた。
太陽と重なっているように見える世界樹はまさに、創造神が降臨したような神々しさだった。
「カノム隊長ー。ここで人生終わりにしないでくださ〜い。この物語のターニングポイントたるビセア編の主役は誰ですかー?」
「ご安心を! 私だって自分の見せ場ではちゃんとするので〜!」
「・・・なんだ、これ?」
「今ウィルベリーで流行ってる、<めたはつげん>ってやつかしら?」
カイとクレーネは突然のメタ発言をする2人を眺めていた。




