(50) ルオとギヌア
応接間のソファに1人の子供が座っており、優雅に紅茶を飲んでいた。
「ふぅ、、。良い味だ。お主、我が眷属に転職しないか?はずれの神よりかは高待遇だぞ?」
「本体が状態でよくそんなこと言えるよね。流石<創造神>の魔術かな? あっ、確かに美味しいね。ルオ君、この最弱童貞上ニートクソ天使より、僕の方に転職しない?」
町長ーギヌアは子供に皮肉ったらしいことを言っている。そして若干悪口らしいものも言っている。
「・・・考えておきます。」
ルオは部屋の出口の近くで、空気になろうとしている。
(なんだか、めんどくさくなってきた)
ーーー数分前ーーー
「さーてーとっ、。<天使>についてだっけ?たしかに単刀直入だなぁ。でも、それよりも前に聞きたいことがあるんじゃない?」
ギヌアはルオを応接間に招き入れ、真ん中にあるソファにどんと座った。頭に花が咲いていたような雰囲気だが、目は真っ直ぐと一直線にルオに向いている。
(何が目的なんだ?)
「・・・、・・・。ギヌア様は、、何者ですか?」
ルオは頭の中で浮かび上がる疑問を全て一度退け、絞り出すように言った。
「初っ端でそれ聞く?ま、<天使>以外の話を提案したぼくが言えることじゃないけど。」
ギヌアは苦笑した。
「俺の正体を見破ったんだ。あんたはただの町長じゃないよ。」
ルオの声のトーンが下がった。
「だいぶ口調が変わったね? その態度と口調はルオ君の、だね。君は色々と引き継ぐタイプ?」
部屋の空気が鋭い刃物のようになった。
「・・・、視えすぎた目は自信に禍をもたらしますよ。」
ルオは全身にうっすらと魔力を込め、戦闘態勢をとった。
「えぇ〜、僕を消すの? 勝てないのに?」
ギヌアは棒読みのように言った。目は全く笑っていない。
そして、全身から恐ろしい殺気が漏れ出ていた。
「・・・はぁ〜。 ・・・・たかが数百年生きた魔獣が、<羽狩り>に吠えるなよ。」
「!?」
ルオは驚きソファから後ろに跳び下りた。足は僅かに震えていた。
パチンッ!
ギヌアが突然指を鳴らし、何処からかティーセットが現れた。
ルオは突然の謎の行動に困惑し、全身に纏っていた魔力を解いた。
「うんうん。他の8体とは違って話が通じるみたいだ。良かったよかった。大丈夫だよ、ルオ君。君の正体のことは他言無用にしとくよ。」
「へ?」
「その代わり、僕の正体は君には教えない。これでこの質問の答えとしよう、僕と君は互いの正体を知らない。どう?」
「・・・チャラってことですか?」
ルオはギヌアのことを警戒しながら言った。
(表はチャラ、裏は俺の正体の確認、か。俺が動揺させるのが目的か。)
「そーそ。僕も君も、自分の正体は身近な人にはバレたくないでしょ?・・・はい!これで第一の質問終わり! じゃ、次の質問どうぞ?」
さっきまでの殺気は消え、皆んなの前で接していた、にこやかな顔に戻った。
(この人、本当に何者なんだ?)
ルオは恐る恐るソファに座った。そして、深呼吸し、再びギヌアの目を見た。
(敵わないな、この人には、一生。)
「・・・質問ではなく、俺がここに来るまでの経緯を話します。」
「うんうん。それで、僕は何すればいい?」
「俺の身に起きたことが一体何なんなのか、教えて欲しいんです。」
「う〜ん。僕がそれについて知ってるのだったら答えられるけど?」
ギヌアは腕組みをして、目を瞑り、自分の知識を確認していた。
「多分答えられると思います。」
ルオはパサっと羊皮紙の束を机の上に置いた。
「これは?」
ギヌアは羊皮紙の束を取り、紙に書かれた文字に目を通した。
「昨晩、徹夜してエトンと一緒に調べ上げたことです。」
「エトンが!? 他の人と、一緒にぃ!?」
ギヌアはルオの口から出た言葉に驚いた。
「エトンがどうかしましたか? あいつは一応俺の後輩に当たりますけど?」
ルオはギヌアの反応がどういうことか分からず、首を傾げた。
「まさか、あいつが・・・? いや、今は考えないでおこう。だいぶ前のことだし、うん。」
ギヌアは深呼吸をし、自身を落ち着かせた。
「ギヌアさん?」
「あーいや、大丈夫。なんでもない。ちょっと全く同じ名前の知り合いがいたんだ。
・・・うん、人違いだ。
それよりも、君の話だ。ちょっと見た限り、二大組織が複雑に絡んでるっぽいし、僕が一番答えるべきかもしれないからね。
それじゃ、話してくれないかな?」
「はい、分かりました。」
ーーーー
「なーるほど、これはある人物を巡った事件って言ったらいいのかな?」
ルオの話を聞いたギヌアは顎に手をやり、そう言った。
「ある人物?」
「そ〜。その人物は今キマイラ君の体の中にいる。」
「えっ?」
ルオは森の中でレイグに言われたことを思い出した。
「白い、翼・・・。」
「もしかして、もう発現したっぽい?」
「はい、教会騎士の1人が白い翼が出てるって。俺は見えませんでしたけど。」
ルオは自身の背中を見たが、白い翼らしきものは全く見当たらない。
「・・・これは、僕の出番だね。」
ギヌアは立ち上がり、部屋の端にある棚の引き出しを開けて、何かを探し出した。
「?」
「ルオ君、僕は<羽狩り>という者でね。<天使>や<悪魔>を殺すことが出来るんだ。もちろん、人の身体に宿る<天使>や<悪魔>を引っ剥がすこともできる。」
ギヌアは引き出しから古い鏡を取り出した。
「そして、君は今、<天使>は魔力の粒子となって、君の魔力と混ざろうとしてる。
普通は一瞬で混ざって、たちまち生き物の体は<天使>の身体となる。
でも、君の場合は元々二つの魔力が混ざっているから、三つ目の魔力が混ざりづらくなって、まだ<天使>は君の身体を奪いきれてない。」
「・・・つまり、<天使>を引き剥がすのは今が好機、ということですか。」
「うん、そ。 それじゃあ、引き剥がすよ。」
ギヌアは鏡にルオの血を垂らし、ルオの姿を鏡に映した。
「ぎゃぁぁあああああああああああああ!!!!」
悲鳴とともに、白い光がルオの中から出てきた。




