(4) 教師?と生徒?
「ねぇ、ルオ。とりあえず宿屋を探さない? ここにいても、お腹空くだけだし。あ、お金は大丈夫。私が払うし。」
「それはありがたいですけど。」
ルオはズボンのポケットを触った。ジャラッと鳴り、硬貨の音がした。
(あるんですけど!?、俺の財布!・・・。てっきり教会に取られたと思ったけど。いや、その前に・・・。)
「僕達指名手配になってそうなんですが。」
「なってないわよ。多分これからも。」
「へ?」
「教会はね、あなたが起こした事件をなんとしてでも隠蔽したいの。」
「やはりやばいんですね、あの事は・・・。」
古代遺跡で見つけた<禁書>によって起きた血生臭いあの出来事は、教会がおそらくなんらかの形で関わっているのだろう。
(教会に関係するか否かでも、俺がやった事は相当やばいんだが・・・。)
「私はあなたが起こした事件なんて、全く知らないけどね。<禁書>による精神破壊も聞いたことが無いもの。」
「あなたの上司は何も言っていなかったのですか?」
あの厳しい雰囲気を出していた彼女の上司は、<禁書>のことについて知ってそうだ。
「とにかく今は宿屋を探しましょう。ここはおそらく、フォルノ公国の近くのはず。あの国には私のキョウ・・・、いや、知り合いがいるから、他よりは安全よ。公国の近くに宿屋もあるし、そこに行きましょ。」
ーーー
2人は宿屋に無事到着し、食堂で注文した料理を待っていた。ルオが財布を持っていることをファミラが知ってしまったので、ルオが払うことになった。宿屋はファミラだが・・。
「ようやく、ゆっくり過ごせる場所に来たから、教えてもらうわよ!」
「何を?」
「魔術に決まってるじゃない!あなた、魔法使いではないけど魔術師ではあるのでしょ?どういう違いなのかわからないけど」
「そういえばそうでしたね。ファミラは魔術はどういうものか知っていますか。」
ファミラの魔術の知識がどれくらいなのかが分からないと始まらない。魔術と魔法の違いが分からないのならおそらく・・・。
「ドカーンって爆発して、敵を薙ぎ倒す感じ?」
(あぁ、やはり、超初心者なのか・・・。)
ルオはため息をついた。教会騎士は魔術を使うと聞いたことがあるが、彼女は教わったことがないのか。
「教会の方に教わらなかったのですか?」
「だったら、あなたにあの約束をしてないわよ。」
「学ぶ機会はなかったのですか?」
「質問多いわね。私は小さい頃から、給金が高い教会騎士になるために剣術一筋で生きてきたの。他のことは長い髪と一緒に捨てたわ。」
だからショートヘアなんですね。という発言は心の中に留めておいた。
「で、星騎士になるためには魔術が魔法か魔術が必要なため、詰んでしまったということですね。」
「詰んでないわよ!まだ!」
(今の時点で詰んでると思うんだけど・・・。)
「コホンっ。分かりました。ではまず、魔法と魔術の違いについての講義をしましょう。」
ルオは咳払いをして、眼鏡をかけ直した。
「ねぇ、今更なんだけど。」
「はい、なんでしょう。」
「宿屋に来る前からそんな眼鏡あった?」