(43) 先輩と後輩
ルオの目線の先は、カイが入ってきた窓だった。カイは扉から帰っていったので、窓の先にいるのはカイではない誰かだ。
「分かりました。ちょっと待ってくださ〜い。」
緩い感じで言いながら窓の扉を開け、部屋に1人の男性が入ってきた。
ルオよりも高い背で、黒い髪を持つルオとは真逆の真っ白い髪をしていた。
「よく誰にも見つからなかったな。ついさっき同じ窓から入ってきた人物がいたけど、みた感じあいつはかなり強いはずだ。見つかったらタダじゃ済まないのに。」
「そうなんですよね〜。びっくりしましたよ。2人の教会騎士にバレないように後をつけて、ルオさんの部屋に窓から行こうと壁を登っていたら、やばい先客がいたんですから。なんなんですかあの人?」
男性はその時のことを思い出し、苦笑いをした。
「ここの町長、ギヌアさんの護衛?かな。」
「あの町長の護衛ならあんなに強くても不思議じゃ無いか・・・。」
男性は腕組みをし、目を瞑り、つぶやいた。
「でもまぁ、なんとか気づかれませんでしたね。母上のお力が無かったら今頃どうなっていたか・・・。」
「なるほど。確かにあの人の力だったら流石に<世界樹の守護者>の末裔でも隠し通せるか。」
ルオは窓を閉め、魔術<セウンディペルウフェ>を発動させた。
「これで、誰にも聞こえない。誰も君がここに来たことに気づかない。」
「お気遣いありがとうございます、先輩。」
男性は頭を下げて礼を言った。
「もし知られたら、俺も巻き込まれるからな。先輩としての役目だ。」
「勉強になります!」
男性は目を輝かせた。
「さて、本題に入ろう。」
ルオは側にある椅子に座った。男性も側にある椅子に座った。
「お前達はどこまで進んでいる?」
「ぼちぼちです。とりあえず<禁書>を探そうと思ってクローギヌ遺跡に行こうとしてたんですけど、封鎖されていましたね。」
「あの遺跡は連合が管理している。基本は絶対に入れない。」
「ですよねー。」
男性は困った顔で苦笑した。
「他の場所には行ったのか?」
「もちろん! 遺跡がダメでしたので、近くにある天空王国で調べることにしました。
遺跡ではなく、<禁書>について。
残念ながら、<禁書>は一般人は滅多にお目にかかれないレア物なので、手がかりになるものは見つかりませんでした。
俺は知の都には入れないので、天空王国での調査の成果はゼロ。」
「フロプトには入ることは難しいからな。」
ルオはやはり<禁書>の情報は、少ないのだなと思った。
「遺跡もダメ、レクテもダメ。そうなったので俺は教会騎士団本部にささっと潜入しました!」
男性は笑顔でそう言った。まるで、褒めて褒めての子供のように。
「はぁ!? 本部に!? よく無事にここに来たな!?」
ルオは驚き、嘘を言ってるのかと思った。
「なんとか、ね。俺の能力、いや加護なら大抵の騎士には気付かれないので。」
笑顔で語る男性を見て、ルオは呆れてため息をついた。
「お前の危機感はゼロを通り越してマイナスにいっていることが改めて分かったから、早く潜入した結果を教えてくれ。明日は人と会う約束をしてるんだ。徹夜はできない。」
「わかってますよ♪
先輩が教えてくださった通り、地の隊の書庫に<禁書>について詳しく書かれた書物がありました。地の隊の書庫の物は許可なく持ち出すと地獄に堕とされるので、写本して持ってきました。
これがその書物に書いてあったものです。」
男性はルオに帳面を渡した。
ルオは迷わずページをめくった。
「さて、何があるのやら・・・。」




