(39) ビセア式魔術と重ねがけ
カノムは手から絵筆に自身の魔力を入れた。絵筆は虹色に光り、元の白色に戻った。
「ビセア式魔術は<絵>を描いて発動させる魔術です。今回は重ねがけをするだけなので詳しいことは後日お願いします。」
「えぇ、<レーベヘェス式魔術>が上達したら教えてもらうわ。」
「今回は、光を灯す魔術と継続時間を増やす魔術を重ねがけしたいと思います。」
カノムは帳面にサラサラとランプの絵を描いていった。そして、ランプの絵の下に『→30秒』と描いた。
すると、絵からランプが出てきて、辺りを照らした。そして30秒後ランプは魔力の粒子になって帳面の絵と共に消えた。
「今のが重ねがけです。」
「おぉー!」
ファミラは手をパチパチと拍手した。
「ビセア式は絵の上に絵を描いたり、魔術の絵の横に補足するように書き足す。この二つがビセア式の<重ねがけ>です。」
カノムは説明を終えた後、絵筆をまた懐にしまった。
「ビセア式の重ねがけは分かったけど、どうして例えがビセア式なの? レーベヘェス式でも良いんじゃない?」
「よくぞ聞いてくれました! 確かにファミラ今はレーベヘェス式を学んでいるから、レーベヘェス式にすれば良いんだけど、レーベヘェス式の重ねがけは少し分かりにくいんだ。」
「分かりにくい? どういうこと?」
ファミラは首を傾げた。
「魔術を<重ねがけ>する技術はビセア式魔術から始まったんだ。レーベヘェス式はその後にビセア式のを真似て作られた技術だ。
ビセア式は『絵』でレーベヘェス式は『計算式』だ。『絵』を重ねるのと、『計算式』を重ねるのは魔術では認識が違う。」
「てことは、レーベヘェス式は魔術をビセアとは違う方法で重なるってこと?」
「うん、そう。でも、方法は違っても原理は似ているんだ。
例えば、<ウエツェル・フィアルエ>。」
すると空中に球状のお湯が現れた。お湯は床に落ちず宙にふよふよと浮いている。
「ざっと説明すると、レーベヘェス式は複数の魔術言語を一つの魔術式に使うことで<重ねがけ>が出来る。<フィアルエ・ドス>みたいな、魔術言語と指示言語を組み合わせて使うことも広く言えば<重ねがけ>だ。」
「じゃあ、私は知らない間に<重ねがけ>をしていたってことね。」
「広く言えば、だけど。レーベヘェス式で言う<重ねがけ>は火や水の魔術言語のように効果が全く違う魔術言語を合わせて使うってことだ。」
ルオは宙に浮くお湯を手で軽く突いた。するとお湯はたちまち半透明の文字に変わった。
文字は『水』と『火』の魔術言語のみで、『水』の上に『火』が重なって見える。
「なんじゃこれ?」
ファミラは今何が起きたのか分からなかった。
「魔術を式として具現化したんだ。こうすると、<重ねがけ>の仕組みがわかりやすいんだ。」
「これ、もしかして<呪い>を解く時に使ってたやつ?」
「その通り!<呪い>は<重ねがけ>と同一だからね。この文字を弾いたりして、消せば魔術、つまり<呪い>は解けるんだ。」
そう言いながら、ルオは『火』の魔術言語を指で弾いた。すると、文字は光の粒子となって消えた。
「さて、ファミラ。」
「何?」
「魔術の<重ねがけ>を実際してみるか、それとも<重ねがけ>もとい魔術の解除、どっちを先にしてみたい?」




