(3) 脱獄魔術師と休暇中の教会騎士
光が収まり、ルオが目を開けるとそこは大きな丘の上だった。時は夜で、空には星々が光を放っている。
「ふぅ、なんとか脱出できたわね。」
横では鎧を脱ぎ、軽装になった教会騎士ーファミラ=レヴァンネが座っていた。
「あのぅ・・・。」
「なに? 着替えならあそこの大樹に隠れて着替えてきて。」
「いや、そうじゃなくて。」
「じゃぁ、何?」
「どうして僕にあんなことを聞いたんですか?」
「それは・・・。」
ルオの問いにファミラは口篭った。彼女に何か目的があるのだろうとルオは思った。
「今は、着替えてきて! そしたら話す!」
「分かりました。」
ーーー
「あのファミラっていう騎士は何者なんだろう。」
ルオは着替えながらファミラのことを考えていた。
(話しかけたのは俺からだったが、それによって彼女の心変わりのきっかけだとは考えにくい。あの二つの魔術具を持っていたから、やっぱり前から計画されていたことなのだろうか。)
「もう着替えた〜?」
痺れを切らした、ファミラが聞いてきた。
「えぇ。」
ファミラは、ルオの服装を上から下まで観察した。
ルオは白いカッターシャツにネクタイ、黒いスラックスでフードが付いた黄土色のコートを羽織っていた。
コートの胸元には紋章が印刷されたボタンが付いていた。
「へぇ〜、the魔術師って感じの格好ね。その紋章は<魔術連合>の紋章、てことは囚人さんは連合の人だったんだ。」
「知らなかったんですね。」
「隊長は何にも教えてくれないもの。」
ファミラは不満そうに、プクゥと頬を膨らませた。
「いつまでも<囚人さん>と呼ばれるわけにはいかないので、これからはルオと呼んでください。」
「ファミリーネームは?」
「ノイスです。ルオ=ノイス。これが僕の名です。」
「私はファミラ=レヴァンネ。もう知ってるだろうけど。呼び捨てで構わないから。」
「では、ファミラ。早速ですが。」
「ん?なに?」
「どうして、僕に魔術を教えてもらおうと思ったのですか?」
するとファミラはふふっと不敵に笑い、
「決まってるじゃない! <星騎士>に出世するためよ!そのためには魔法か魔術が必要なの!」
(いや、出世とか魔法とかいう前に、もうクビになると思うんだが。)
やはりこの騎士のことは全く読めない。ルオはそう思った。