(35)クレーネとギヌア
目が開けた先は自分の天井だった。そうか、自分は寝台の上にいるのだと分かった。眠る前は街の端にある畑を近所のおばさんと一緒に手入れしていたはずだ。きっと心配している、早く行って無事だと伝えに行かなくては。
「あっ、町長! クレーネさんが目を覚ましました!」
寝台のそばに座っていた見知らぬ黒髪の青年が、後ろに振り向き大慌てで叫んだ。
彼が振り向いた先を見ると、これまた見知らぬ2人と婚約者と、父親がいた。
「あ、カイ。」
真っ先に婚約者の名を呼んだ。
「クレーネ、おはよう。俺よりも、まずはお前の父親を呼んだらどうだ?」
婚約者ーカイは相変わらず冷静だ。いや、こいつは表情筋が硬くて、中はきっと大変なことになっているかもしれない。
「えっと、お父さん・・・。」
クレーネは久々に家族の名前を呼んだ。この前喧嘩した以降、家族とは口を聞かなかった。
黒髪の青年は椅子から立ち上がり、見知らぬ2人のもとに行った。お父さんが恐る恐るゲルダのもとにやってきた。
「クレーネ・・・。お帰りなさい・・・。」
お父さんは静かに涙を流しながらそう言った。町長としてのお父さんは泣くほど怖い顔になるのに、泣いたら子供のように幼くて優しい顔になる。確かお母さんが惚れた理由がそうだった。
「・・・うん。ただいま。」
クレーネはお父さんの手をこれまた久しぶりに手を握った。
「あの、あなたたちはどちら様ですか?」
愛する人たちの再会を果たした後、思っていた疑問を話した。
「あ、俺たちは、あなたの呪いを時にきた助っ人です。」
黒髪の青年はそう言った。
「クレーネ、この人たちのおかげで、お前を助けられたんだ。残念ながら僕は何もできなかった・・・。」
お父さんが依頼したのか。
「あ、私たちはそろそろ帰ります!」
3人の中の少女がそう言った。
「ちょっと、待ってくれ!」
お父さんが3人を呼び止め、木でできた鍵を黒髪の青年に渡した。
「その鍵を<リーフレスト>に見せるんだ。そうすれば、無料で滞在できる。」
「リ、リーフレスト!? あの高級ホテルに泊まれるんですか!?」
黒髪の青年は驚いた。それに対し残りの2人は頭にハテナマークを浮かべた。
「明日もう一度ここに来てほしい。礼を言いたいから。」
「分かりました。では、また明日。」
そう言って3人は帰っていった。




