(33) <呪い>と違和感
ルオは寝台に横たわる、クレーネに<可視>の魔術をかけ、呪いを実体化させた。ルオの予想通り<レーベヘェス式>魔術が<呪い>のベースになっており、魔術言語だと思われる文字がたくさんある。
「カノム、この部屋に<呪い>を無効化させる<ビセア式>の魔術をかけてくれ。」
万が一のことを考え、頼れる悪友カノムに魔術をかけてもらった。
「<呪い>の<属性>は?」
「<花>だ。」
「わかりました。では<火神>を付与します。」
カノムは<魔術の絵筆>を懐から取り出し、魔力を込めながら慣れた手つきで、扉に描いていった。
この世界の生死を司る八百万の神々の一柱である、<火神>。姿は、炎を纏いし剣を持つ勇ましくも美しい女性が一般的に考えられており、民衆はよく<火神>のことを、<台所の守護者>、<鍛冶屋のボス>、<おかんの化身>と呼ばれている。ちなみに、『母』を象徴する神は他にもいるが、<火神>は『母』ではなく『おかん』を象徴している。
<火神>の火は花属性の呪いに特攻で、軽い<呪い>ならば<呪い>の感染を容易く防いでくれる。
「ルオ〜、描き終わりました!」
「カノム、ナイスゥ!」
ルオは早速<呪い>のベースとなった魔術を解いていった。
「一番上は、<スレィエイピ>? おかしいな、悪夢を見せて眠らせる<呪い>ならば一番下に書かれているはずなのに、なんで一番最後にかけたんだ?」
ルオは今まで解いてきた<呪い>とは違うことに気づく。
「今はとりあえず、解くことに集中しよう。<ルエリィエス>。・・・よし、一つ目クリア。残り二つ。」
一つ目の魔術は難なく解くことができた。
「おぉ〜! これが<呪い>を解くというのか! どんどん続けてくれルオ君!」
クレーネの手を握っていた町長は子供の様に目を輝かせていた。
「落ち着いてください、町長。まだ一つ目です。この<呪い>は少し不自然です。」
カノムははしゃぐ町長を落ち着かせ、実体化した呪いを睨んだ。
「一番最後にかけた呪いが眠らせることだなんて、おかしい。それに、<スレィエイピ>が解けたのに、クレーネさんは起きる気配がない。残りの二つは一体何なんだ。」
「カノムの言う通りだ。これ、もしかしたら<花の夢>なんかじゃないかもしれない。」
ルオとカノムはこの<呪い>が異常であると思った。
ルオは二つ目の魔術を解いた。二つ目も簡単に解けた。
2番目にかけられた魔術は<強化>の魔術だった。普通魔術の重ねがけでは強化の魔術は、強化したい魔術があれば、対象の魔術の後にかける。つまり、
「一体何の魔術を強化したんだ?」
ルオはますます訳がわからなくなった。
「これで、三つ目。さて一体何をかけたのか・・・。は? 自立式魔術<花の天使>?」」
一番最初にかけた魔術はルオの予想だにしないものだった。
「な!? ・・・ルオ! <火神>の魔術が消えかけています!」
扉に描かれた<火神>が段々と消えていく。
「マジか! じゃぁ、結界だ! ありったけの魔力でこの部屋に結界を張ってくれ! 今から最初にかけられた魔術を解く! 凄い衝撃波が来るから、それに耐えれるくらいの結界を頼む!」
「衝撃波!?」
ファミラは驚く。
「・・・、分かりました! みなさん、下がってください。」
カノムはルオがこれからすることを理解し、床に絵を描いていく。込めている魔力はさっきよりも多い。
カイは町長をクレーネから引き剥がし、カノムの元に連れて行った。
ルオは自身の魔力を一点に集中させ、魔術の発動準備を開始した。
「結界張りました! お願いします!」
ルオ目を閉じ、目を瞑っているクレーネの額に手を当て、魔術を発動させた。
「『惑わす花は消える、永遠の悪夢は終わる、悲しき涙は止まる、そして呪いは解かれる。』」




