(28) ウィルベリーと町長
ウィルベリーの中央にある巨大な樹の枝の上に、家がピッタリ収まっている。その家の主はこの街の町長、ギヌア=ウィルベリーである。
彼は部屋で水晶玉の中を見ていた。水晶玉は魔術具で、正式名称は<簡易魔術式望遠鏡>と言う。
水晶玉に映っているのは、肩に普通につくぐらいの長さの黒髪の青年と、肌黒の少年、そして肩に少しつくぐらいの短い青い髪の少女の3人だった。
ギヌアは黒髪の青年を見て、驚き危うく水晶玉を落としそうになった。そして、水晶玉に映る黒髪の青年をまじまじと見た。
「カイ!」
ギヌアは水晶玉を見ながら叫んだ。すると、何処からか長い耳を持つ青年が現れた。
「お呼びですか? キヌア様。」
「水晶玉に映るこの3人をここに連れて来い。今、すぐに。」
「分かりました。」
そう言うと、青年は一瞬で消えた。ギヌアは1人、水晶玉に映る黒髪の青年を見ていた。
「彼ならきっと呪いを解けるかもしれん。」
ーーー
「ねぇ、ずっと思ってたんだけど。」
「どした?ファミラ?」
「この街に住んでいる人の殆どが長い耳を持っているのだけど。」
「妖精族だね。」
「エルフって言うんだ。で、なんでこの街にエルフが多いの?」
「ウィルベリーはのあの巨大な樹は世界樹と呼ばれてて、エルフは遥か昔から世界樹の守護者をしていたんだ。その名残で世界樹があるウィルベリーにエルフがよく移住してくるんだ。それに、世界樹はエルフの信仰対象だからね。」
「せかいじゅ?」
ファミラは"世界樹"と言う言葉が初耳のようだ。
「世界樹!?」
反対にカノムは目を大きく見開き、驚く。
「そんなに驚くものなの?」
ファミラはカノムが驚いたことを疑問に思った。
「当たり前です!世界樹はこの世界を支える超大切な樹です!そんな樹がこの街にあるとは思いませんでした!ファミラさんは耳にしたことがないのですか!?」
カノムが興奮気味に言う。
「聞いたことが無いな。孤児院にいた時はひたすら剣を握ってたし・・・。」
「そういえばそうだったな。そりゃ魔法や世界樹のことも知らないわけだ。」
ルオは宿屋のことを思い出した。
「ルオ、世界樹をもっと近くで見る事はできないのですか?」
「うーん、住宅街に行けばわかるけど・・・。て!?カノム!?」
カノムは話の途中で真っ直ぐに住宅街に向かって全速力で走っていった。
「カノム隊長、足速!」
「とにかく追いかけよう!住宅街は道が複雑で入ったらすぐに迷子だ!」
「分かった!」
住宅街は細い道や広い道がランダムに混ざっており、特に細い道は何処に繋がっているか分からず、気づいたら同じ場所をぐるぐると回っていることがある。
住民もよく道を間違え、迷子になるので自分の家の目印となるものを家の扉に付けている。そしてその目印は全く同じものがない。
ルオとファミラはそれを頼りにして迷子にならないようにしながら、カノムを探した。
「太陽神の子?そんな子供は見かけてないわ。なにせここは必ずと言っていいほど迷子になるからね。でも、人族は結構目立つから、他の人にも聞いてみて。」
「「ありがとうございました。」」
「あんたら2人も気をつけなよ。迷ったら魔力でこっちに戻りなよ。」
2人は住民達に聞き回り、カノムの手掛かりを得た。
「にしても凄いね。」
「何が?」
「住宅街に寄り添うように世界樹の枝や根がはりついている姿よ。枝や根の重みで建物が崩れる事は無いし、住民は邪魔に思ってない。だから、こんなにも素晴らしい景色ができるんだ。」
「確かにね。初めて来た時はびっくりした。まさかこんな凄い街があるなんて・・・。」
ズドオォーーン!
「「!?」」
2人の会話を遮ったのは、空から降ってきた1人のエルフの青年だった。
腕には肌黒の少年が抱えられていた。
「「カノム!?」」
「・・・・この少年を返して欲しければ、・・・町長の元に来い。」




