(2) 囚人と教会騎士
「今、何と言いました?」
ルオは執行人のレヴァンネの言葉が理解できなかった。
それは彼だけではなく、この場にいるレヴァンネ以外の騎士全員も理解できなかった。
彼女はこう言った、魔法を教えてくれと。何の前触れも無く、ただ突然に。
「だから、私に魔法を教えてって。あなた、魔法使いなんでしょ?」
「えーっと。」
(いや、俺魔術師なんだけど・・・。)
「魔法はできないですけど、、魔術なら使えます。」
(この状況は一体なんなんだ?このやばい騎士の質問に答えている俺もやばいし、ていうか他の人たち驚きすぎて固まっちゃってる。)
「魔術なら、教えてくれるの?」
「まぁ、はい。」
(いや、どうして返事するの!? 俺!? 今にも処刑寸前の状態でこの人に魔術教えんの!?)
ルオは混乱していた。謎の質問をした騎士の行動が全く読めない。
レヴァンネはルオの答えに、ニンマリと笑顔を浮かべた。
「よしっ! 交渉成立! じゃぁあなたは無罪! ここから脱出するわよ!」
「はい?」
レヴァンネはルオの拘束具を解き、小さなガラス玉を渡した。
「その中にあなたの荷物が入ってるわよ!」
「どうして俺のを持ってるんですか!?」
ルオはますます疑問に思った。彼女はあらかじめこうなることを予想していたのか?
「囚人さん! 私の手を握って!」
「はい!」
ルオは言われるがままに、レヴァンネの手を握る。すると彼女は光り輝くコンパスを取り出した。
(<転移系魔術具>!? )
「待て! ファミラ!」
レヴァンネの上司である隊長が彼女の名を叫ぶ。おそらくファーストネームだろう。ルオは直感で思った。
「隊長! 私ファミラ=レヴァンネは1年間の有給休暇をもらいまーす!」
「ちょっ、ファミラさん!?」
コンパスの光が増し、2人を包み込んでいった。
「ファミラ、どうして・・・?」
残された隊長と騎士達は呆然と立っていた。