(26) ウィルベリーと検問所
光が収まると、目の前には巨大な樹が三人を見下ろしていた。実際は樹は三人よりもだいぶ遠くにあるが、あまりにも大きく、ここでも根が少し見えるぐらいだ。
樹は街全体を覆い、樹の葉の隙間から光が差し込んでいる。まるで大きな傘が街を覆い被さっているように。
樹を囲む様に建物達が集まっている。建物は大きいものや小さいものがあるが、樹と比べるとまるで小石のように全てが小さく見える。
街の外側は畑や農場が広がり、草木を食べる動物達がちらほらいる。
<自由都市>ウィルベリー、それは樹々の中にある隠れた大都市だ。
「ここが、ウィルベリー。本当に山の中に都市がある。あのでっかい樹はなんだろう?」
「ファミラさんの言う通りです。転移した先がこんな見たことがない、素晴らしい都市だなんて!」
ファミラとカノムは子供のようにはしゃいでいた。実際カノムは子供だが。
「数日ぶりだから、何も変わっていないな。」
そんな2人とは対照にルオは落ち着いていた。
「ルオは落ち着いているわね。」
「まぁな。ここには何十回も来たし、もう第二の故郷と言わざる終えなくなるかもしれない。始めて来た時は興奮したけど、流石に2人にたいな感じでは興奮しなかったかな。カノムは子供だからまだしも、あの騎士様が子供の様に跳んではしゃぎ回るのは面白かったな。
「ふーん。じゃぁ案内頼めるかしら? 何十回も訪れたんだから、流石に土地勘はあるでしょ?」
ファミラはルオの少し自慢げな言葉、と失礼な言葉にイラっとし、上から目線でルオに言った。
「もちろん、案内するけど。・・・つま先で立つのやめたら? ちょっと辛そうだよ?」
ファミラは言葉だけでなく、物理的にも上から目線だった。
「・・・、えぇ、辛かったわ。」
ファミラはつま先立ちをやめた。
ーーー
入る前はどの街も国も決まって検問がある。検問は、訪問者の荷物や健康状態を検査・するだけだが、ウィルベリーの検問は他と比べて厳しいことで有名だ。厳しい理由は諸説あり、一番近い理由はこの街に害を与える者が入って街を破壊されない様にするためだ。
都市ということもあり、検問は長蛇の列だった。
「ようやく私たちの番ですね。」
「いつも通り結構時間がかかるな。」
自分たちの番がようやく来て、三人は荷物を見て何か誤解される様な物がないか確認した。
「ねぇ、もし検問で害を与える存在だったらどうするの?」
荷物を確認し終えたファミラがルオに質問した。
「検問で怪しかったら町長に連絡が入って、大樹の間で面接のようなものを受けて、そこで害があると判定されたら入街禁止。樹の間から転移魔術で教会騎士に送られるって聞いたことがある。」
「そういえばウィルベリーから不審者がよく送られてきましたね。しかも不審者全員が指名手配でしたし。」
「ウィルベリーって犯罪者を見つけやすいのね。ってか言い換えたらどれだけこの街に害を与えようとしているのよ。」
「ファミラの言う通り、ウィルベリーは街を破壊しようと企む人が多い。そしてその理由は未だ不明だ。」
「ウィルベリーって謎が多いわね。そう思わない?カノムさん?」
ファミラは珍しくカノムに降った。ここは自分と同じく初訪問であるカノムに意見を求めたいのだろう。
「私も同意見です。ウィルベリーの歴史も謎だらけですから。・・・あの<道化>と同じぐらい。」
最後だけカノムの声が低く、小さくなった。内側で怒りが燃えたぎっているように。
「・・・<道化>?」
ルオは首を傾げた。それに対しファミラは「あー、確かに」と頷いていた。
「おや?これは知らなかったのですか?ルオ。」
「あぁ、あまり耳にしたことがないもんで。」
「では、検問終わりに少し私の講義を開けましょうか。」
「「賛成〜!」」




