(21) 任務と務め
ー数日前ー
「団長、どうして私がここに呼ばれたのでしょうか?もしかして解雇、ですか?」
天井に散りばめられたステンドグラスが太陽の光を受け、美しく光り輝いている。大理石でできた部屋のあちこちに<魔法の花>が咲いていた。部屋の中央には大きな机と椅子が置いてあり、上には大量の紙や本が積み上げられていた。
「あなたを解雇するためにわざわざここに呼びに来たのではありません。全く別の重要な任務のために来てもらったのです。」
椅子に座っていた男性がそう答えた。30前後の歳で遠くから見れば女性に見間違えるかもしれない、中性的な見た目だ。彼こそが<教会騎士>の長、騎士団長アステヴェ=スプリケルだ。
彼の目の前には、獣ノ隊二級騎士ファミラ=レヴァンネが立っていた。
「では、一体どのような任務なのでしょうか?」
ファミラが口を開いた。
「単刀直入に言うと、ある囚人を助けて欲しいのです。護衛でしょうかね?」
「囚人の護衛、ですか?」
「はい。護衛対象の名はルオ=ノレス。<魔術連合>の一等星魔術師で、現在ある遺跡で起きたいざこざである隊に逮捕され、死刑待ちとなっています。」
「いざこざとは?」
「それは本人に聞いてください。その方が正確ですし。」
「わかりました。もう一つ聞きたいことがあるのですが、ルオ=ノレスを逮捕した部隊とは?」
「言いにくいですが、獣ノ隊です。」
アステヴェは静かに言った。
「あ、やはり?」
対してファミラはポンと手を打った。
「あなたは正気ですか?この任務はあなたの仲間を裏切るようなものです。ここに来る前、あなたに渡した文書にも書いてあったはずです。」
「『これを開けると、仲間を失うことになる』ですか?」
「はい。まさかここに来るとは思っていませんでした。来たときは驚きました。」
「私もまさか送り主が団長であることを知り、驚きました。」
「あなたがここに来たことは、この任務を受けることを意味します。」
「はい、もう受ける覚悟はしています。」
「どうして受けるのですか?あなたにはデメリットが大きいですが。」
「デメリットは隊を裏切るだけです。以前からあの隊はおかしくなっていました。隊全体が殺気立っていますし。」
「ならばいっそ隊を裏切り、離れようと?」
「それもありますが、誰かを護ることが騎士の務めだと思っています。重要な任務が護衛だと聞いてますますやる気になりました。」
「!?・・・・」
アステヴェは驚いたが、その後大きく笑った。
「ははは!そうですね!我々<教会騎士>は誰かを護ることが務めです。あなたは本当にすごい!まさか今の時点で務めを理解しているとは!ならばあなたにこの任務を頼んでも問題はない。」
「ありがとうございます!」
ファミラは勢い良く頭を下げた。
「ゴホンっ。話を変えますが、この任務の報酬についてなのですが、私のできる範囲であればあなたが望むものを用意してあげましょう。」
「ほ、本当ですか!?」
ファミラはアステヴェの発言に大喜びした。
「何がお望みですか?」
「はい! 星ノ隊に昇格したいです!」
「私の部隊ですか、構いませんよ。」
「やったぁああああ!」
ファミラは嬉しくなり、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「ちなみにですが、魔術師の資格は持っていますか?」
「・・・資格?」
ファミラは跳ねるのをやめた。
「星ノ隊は魔術が一等星並みでなければ入れないのです。すみませんが、これは騎士団が設立した時からの規則でして・・・。持っていますか?」
ファミラの時間が止まった。
「・・・持ってないです。そもそも魔術とかあんまりわかりません。」
アステヴェはファミラの返答に苦笑した。
「申し訳ありませんが、星ノ隊には入隊できません。」
「・・・・・・・・・・。そ、そんなぁああああああああああああああああ!」
ファミラはアステヴェの言ったことの意味が段々とわかり、天に向かって叫んだ。




