(19) 禁書と文字
あの禁書が自分や教会騎士達を狂わせた・・・。
カノムから事実を聞き、ルオは自分の推測が確信に至った。
どうせあの禁書が原因だろうと思っていた。あれは見るからにやばかったし、あれのせいでああなった。
分からないことは、あの禁書は結局何だったのかだ。
<禁書>なのだからきっとこの世に出してはならない内容なのだろう。教会騎士が動くのも当然なのかも知れない。だって彼らは<創造神>の教えのもとで、世界の秩序を守っているのだから。
「ルオ、ルオ!何か考え事をしているようですが、戻ってきてくれませんか?」
カノムがルオの目のすぐ前で手を振っていた。どうやら自分はぼーっと考えていたようだ。
「ごめん、ちょっと禁書について考えてた。あれって結局何だったんだろうって・・・。」
「禁書なんでしょ?だったらこの世に出してはいけないくらいの危険な内容でしょ?」
ファミラがさっきルオが考えていた事と同じことを言った。
「ファミラさん、ルオが言っていることはそれでは無いのです。」
「どういうこと?」
「あの禁書には一体何が書かれているのかです。」
「あ、そういうこと。確かにそれは気になる。」
「私が部下から聞いた話だと、ルオがあの禁書の中身を見たんですよね?一体何が書かれていましたか?」
カノムが懐から帳面を取り出した。
(そういやカノムってこんなやつだった。カノム曰く、聞くより書いた方が内容を覚えやすいって。俺はそんなこいつを内心メモ王子って呼んでっけ・・・。)
「ルオ、聞いてますか?」
カノムがもう一度ルオの目のすぐ前で手を振った。
「ごめんまた考え事してた。」
「それであの禁書に書かれていた内容は覚えていますか?」
(そうだよな。俺が禁書を見つけたんだ。)
「うん、覚えてる。確か、あれは・・・。」
「はい、あれは・・・。」
カノムが復唱する。
「見たことがない文字で書かれていて、内容がちっとも分からなかった。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・あはは、期待させてごめん。」
「謝る必要はないですよ、ルオ。この世界にある禁書は大体神代よりも前に栄えた文明に書かれた書物です。見たことがない文字で書かれているのはよくあります。」
「文字はどんな形だったの?」
気を取り直したファミラが聞いてきた。カノムが帳面の紙を一枚破りペンと一緒に渡した。
「確か・・・。こんな感じだった。」
ルオは紙に記憶にある文字を書いていった。
「ふむ、なんと言ったらいいでしょうか。確かに今まで見たことがない文字ですね。読めなくて当たり前です。」
ファミラはルオが書いた文字見て、目を極限まで細め記憶の引き出しからこれに当てはまる記憶を取り出した。
「むむむ?これ、見たことがあるかも?」
「「は?」」
2人はファミラの発言に驚き、固まった。
「2人ともどうしたの?<蛇神の呪い>で石になったように固まってるけど?」
ガタンっ!
2人は勢いよく椅子から立ち、ファミラに詰め寄った。その拍子でルオの腕に刺さっていた輸血をするためのの赤い紐は外れてしまったが、輸血用の血は漏れていなかった。
「「ファミラ!(さん!)」」
「え!? はっはい!?」
ファミラは驚き、変な高い声を出した。
「「どこで、この文字を見ましたか!?」」
「え、えーっと、教会騎士団本部で!」
ファミラの大きな声が部屋の中で響いた。
ルオをカノムは椅子に座り直した。それと同時にカノムが落ちていた赤い立方体の塊を拾い、机に置いた。
「成程、本部ですか・・・。私も隊長なので何度か訪れていますが、この文字を見かけたことはありませんでした。ファミラさん、本部のどこで見たのですか?」
「そ、それは・・・。覚えてない、かな?」
するとファミラは、歯切れが悪い答えをした。顔は天井のランプの方に向いており、2人の顔を見ようとしない。
(一体何を考えているのか分からないけど、自分に不都合がある時だけめっちゃわかるな。)
「ファミラ、何か隠してる?」
ルオがファミラに聞いた。
「ぜ、全然隠してない!」
今度はファミラが勢い良く椅子から立ち上がった。
「隠してますね。話しなさい、これは隊長命令です。あなたが隠していることはルオに関係することですね。」
「私の隊長は獣ノ隊です!なので命令は従えません!」
「裏切りましたよね?でしたらもう、彼女はあなたの隊長ではないですよね♪」
「うぐぐぐ。」
「そうそう。あなたの武勇伝は他の部隊でも有名なので、言わないのならここであなたの伝説を大声でいいますよ。」
「だぁあああー!! わかったわかったよ! 話すから!」
ファミラは両手で自分の頭を掻き回し、降参した。勝者はカノムだ。
(さすがカノム、人の痛い所をつく癖は現役だ。何度口論で精神砕かれたか・・・。)
「そうだルオ♪」
高みの見物をしていたルオにカノムが笑顔で話しかけた。ルオは嫌な予感がした。
「ファミラが隠し事を吐いたら、次はあなたが<禁書>の経緯を話す番ですからね。逃げないでくださいね?」
案の定嫌な予感は当たり、ルオに飛び火した。




