(18) 隠し部屋と悪友再会
隠し部屋で少年が来るまで、ルオは椅子に座り休んでいた。傷は完全に塞がり、多少激しく動いても平気なほど回復した。救急箱入ってあった軟膏が効いたのだろう。あとで感謝しなくてはとルオは思った。
「これなんて書いてあるんだろう?もしかしてこれも<神代語>?なんか絵みたいな文字ね。」
その一方でファミラは本棚の本を見ていた。
「それは多分<ビセア語>ですね。象形文字はあの国でしか使われていませんから。」
「ビセアってあの王国よね?<黒血のビセア>の。」
「えぇ、9年前に起きた大厄災です。あれを起こしたのは魔法使いだと言われています。死傷者は2千人で、人的被害だけでなく建物の被害も大きく、国の城などの重要施設が全壊するほど事件だったようです。」
「でも、よく元に戻ったわね。2年前にあの国に観光客として行ったんだけど、厄災の面影もないほど元に戻ってたわ。人の力ってすごいのね。」
「ビセアの魔術師は優秀な方が多いですから。」
ギィイイイ!
扉が開く音がした。コツコツと足音を立てて、あの少年が入ってきた。
「遅くなってすみません。教会の獣に少し手こずりまして。」
「獣ノ隊は戦闘特化の部隊だから、当然よ。」
「どうせお前の十八番でなんとかしたんだろ?」
「はい、まさか彼らに効くとは思いませんでした。ところで、もう傷は大丈夫ですか?見たところ治っているようですが・・・。」
少年はルオの腕を見て言った。
「傷はもう治りかけているけど、大量に出血したおかげで貧血だよ。」
「話すことができるぐらいなので、輸血をしたら大丈夫みたいですね。よかった、大事に至らなくて。」
少年はどこからか赤い立方体の塊を取り出した。そして、その塊から細い赤い糸のようなものを伸ばし、ルオの腕に取り付けた。
「しばらく安静にしてください。」
「わかってるよ。」
「さて、改めてファミラさんに自己紹介しなくてはなりませんね。と言っても私は地の隊の隊長なので、ご存知のようですが、名前などの情報は知らないと思うので。」
「確かに地の隊長の名前は知りません。」
ファミラは首を横に振った。
「私は教会騎士地の隊隊長カノム=ギオラニスです。私の部下からはよくカノム隊長と呼ばれています。年は10歳で、現在最年少で隊長をしています。ちなみに、森であった時の最初の口調と違いますが、あれは副隊長君を挑発するためです。」
「隊長ね・・・。まさかあんたが教会の人間になるなんて驚いたよ。」
「ルオ、私と久しぶりに会うから嬉しいのはわかりますが、ファミラが困惑していますよ。」
「え?」
「私と話すときの口調になっているのです。どうせ他の人とは敬語で話しているのでしょう?私の影響でしょうけど。」
「あ、しまった。つい・・・。」
「ううん、大丈夫、ルオの意外な一面が見れてちょっと面白いかも。もういつもの感じで話してもいいと思うよ。」
「・・・わかりました。では・・・、あぁ!」
懐からあるものを取ってかけようとしたが、それは壊れていた。
「あぁ、メガネが。」
ルオは緊張をほぐすための神器が使い物にならなくなり、肩を落とした。目には涙を浮かべている。
「だー!もう!私たちは初対面じゃないから、もうメガネをかけなくてもいいでしょ!」
「そうですね。覚悟を決めなくてはいけませんね・・・。」
「あの、ルオ・・・。」
カノムが恐る恐るルオに質問した。
「どした?」
「ルオは先月までメガネなんてかけてませんでしたよね?なんで急に・・・。」
「それは・・・、僕が人見知りだから・・・。」
ルオはカノムの質問を明確に答えることができなかった。
「ルオが人見知りなんて・・・・、いや、そういえばそうでしたね。私は・・・。」
カノムはルオの言葉を否定しようとしたが、なぜが肯定するように言った。2人の間に気まずい空気が流れた。
「あー、はいはい! カノム隊長とルオの再会はこれで終了! 今は、何が起きているのか確認をしましょ!事の全貌が見えなければ何も解決できないんだし!」
ファミラはパンパンと手を叩き、気まずい空気を無理やり追い払った。いきなり耳元で音がして悪友2人は驚いたが、ファミラの気遣いだとわかり、フッと優しく微笑んだ。
「ファミラの言う通りだ。カノム、僕はどうして無断で処刑されようとしたんだ。確かに僕は処刑されるほどのことをしたと自覚している。でも、ファミラと一緒に脱出して、その後獣ノ隊が僕たちを襲撃してきた。客観的というか広く見れば、逃げた囚人を捕まえるように見えたけど。副隊長は僕が処刑される理由は僕が思っていたのと違っていた。僕は一体何かに巻き込まれていると思うんだ。何か知ってる?」
「確かにルオは大きな陰謀に巻き込まれています。とりあえず私が知っている限りのことを話しましょう。それでいいですね。」
「あぁ、よろしく。
ルオは唾を飲み込み、背筋を伸ばす。ファミラもルオと同じく背筋を伸ばした。
「単刀直入にいいます。ルオが数日前に遺跡で見つけた<禁書>が全ての元凶です。あれがルオの起こした惨劇と獣の騎士達を狂わせました。」




