(16) 地と獣
ファミラとレイグ、2人の騎士の剣を止めたのは、1人の少年だった。その容姿は幼く、10歳ぐらいの年に見える。顔は大きなフードで隠されている。
そしてその少年はこう言った。他の部隊だと。
「獣ノ隊がどうして一般市民を襲うのですか?違反行為になりますよ?」
「彼は我が部隊の暗殺対象です。」
レイグは突然現れた少年に驚いたが、すぐに剣をしまい、答えた。
「暗殺対象ですか。では、騎士団長に聞いてみますか。」
少年は地面の土を少し手に取り、それに魔力をこめた。土は魔力によって鳥の形になった。
「なっ! 待て!」
それをみたレイグは焦り、少年に向けて大剣を振り下ろした。しかし、少年は剣をするりと交わし大剣の上に乗った。
「どうしましたか?」
「この任務は団長に知らせるな。」
レイグの声は震えていた。
「なぜ?」
少年の声は抑揚がなく、剣のように鋭かった。
「それは言えない。」
「わかりました。」
すると少年は剣から飛び降り、ルオの前に立った。
「では僕は獣ノ隊の敵となります。これでいいですか?」
「ふざけているのかっ!」
森にレイグの怒鳴り声が鳴り響く。
「ふざけていません。むしろふざけているのはあなたでしょう。勝手に人を殺すのは、騎士の法に背いています。」
「・・・・。」
レイグは黙っていた。少年はそれに構わず、淡々と喋る。
「私は、このことをすでに団長に知らせています。さっき僕が魔術で伝令しようとしたのは嘘です。少し確認したかったんですよ。獣ノ隊隊長だけでなく、部下もこの任務に参加しているのかどうかを。案の定正解でしたけど。」
「・・・・。」
レイグは大剣を少年に向けた。しかし少年は怯えていない。
「成程。あなた達が本気であることがわかりました。他の部隊の隊長に剣を向ける様子では。」
「我々は、神のためにしていることです。それに反するのであれば、教会のすべての隊を敵に回しても構いません。」
「どうやら、一匹狼を除いたすべての獣が、獣の長に従うということですか。」
少年の周りには、どこから来たのか、武器を構えた騎士達が少年だけでなくルオ達を囲んでいた。
「あ、先輩!」
ファミラの目先には宿屋に潜入していたツェルカもいた。
「元仲間に殺される気分はどう?」
「・・・、断崖絶壁な人に殺されるのは正直よく分かりません。」
「さ、サラシを巻いてるからよ!」
たとえ剣を元仲間に向けようが、この2人は全く変わらないのだろう。
「いててて、<幻術>はあなた達がかけたんですね。あなたの部下の誰か1人がかけたのでしょう。<幻跡>が丸見えです。」
傷口を押さえているルオはレイグに言った。
「よく分かったじゃないか。さすが一等星魔術師だ。」
「レイグさん、口調が180度変わりましたね。慈悲深い騎士はどこに行ったのですか?」
「僕は聖人ではない。聖人である我が隊長を真似ているだけだ。」
ルオは余裕のある顔をしていたが、内心はかなり焦っていた。
(ファミラが来てもう大丈夫かなと思ったけど、なんか敵がわらわら出てきてもっとピンチになってる。)
「仕方ない。他の隊を攻撃するのは違反行為なので、私も協力しましょう。」
「あ、ありがとうございます。ぐっ、がほっ!」
ルオの傷は段々と広がってきている。
「これ以上喋ると傷口が広がるので、ここは私に任せてファミラ二級騎士と一緒に逃げてください。」
「でも・・・。」
「いいんです、ルオさん。私は一応強いので。」
そう言いながら、少年は魔力で土を巨大な飛竜に変えた。土の飛竜は大きく羽ばたき、その風で少年のフードがはずされ、ルオは初めて少年の顔を見た。
「な!? ・・・どう、して。」
少年の顔を見て絶句しているルオを見た彼は、昔の友に再会したような笑みをした。
「お久しぶりですルオ。そしてまた今度。」
バサッ!
土の飛竜は器用に口でルオとファミラを器用にのせ、空にまった。翼で起こした風が森に木々をザァアと揺らす。
「まっ、待って!どうしてお前が!?」
少年は目を伏せ首を横に振った。
「すみません、そのことついて今はお話できません。今起きていることが終わり次第話します。・・・、ファミラさん!ルオをお願いします!」
「あっ、はい!」
少年の合図で飛竜はもう一度はばたき、地上から離れた。
「私も後から追いつくので!」
2人を乗せた土の飛竜が森から抜け出し、指定された目的地まで飛んでいった。
残された少年は獣ノ隊の騎士達を見回した。
「さて、なるべく早く彼らを巻いておきますか。」




