(14) 魔術師と教会の<神>
教会騎士、獣ノ隊。その部隊はその名の通り教会の獣だ。教会の崇拝対象である創造神に忠誠を誓い、隊の長に命を預け、集団で戦う騎士の集団だ。表は傭兵部隊として魔獣や魔物と戦い、裏では教会に危害を加えるものを排除するしている暗殺部隊の二つの顔を持つ部隊だ。
隊の幹部が大きく動くのは、強い魔獣の討伐か、口外禁止の暗殺任務だ。
獣ノ隊の特級騎士レイグは、副隊長でもあり、仲間思いで上司や部下からの信頼は厚い。普段は温厚でとても優しく、誰かを殺すときはある言葉をいい、死者の魂を鎮めると言われている。
「神よ、この罪人の死後に祝福を!」
ザシュッ!
突然ルオの首を狩らんとする大剣が襲ってきた。
「うわっ!」
ルオはギリギリでかわし、足を崩し、尻餅をついた。
「な、何をするんですか!? 出会っていきなり!」」
大剣をもう一度構え、ただいま絶賛臨戦状態のレイグはきょとんとした顔になった。
「え?僕はただ、罪人を神様の元に送らせようと思ったのだけど?」
忠誠なる騎士の目にはなんの汚れも無かった。
(出会った瞬間から、もうバレてたんだ。おかしいな、メガネで一応変装してるんだけど、効果なしだったかな?)
「レイグさん、なんで僕は罪人なのでしょうか?」
ルオは勇気を振り絞り、レイグに話しかけた。レイグは今にもルオの首を刈りとらんとする勢いだ。
「神の従いに背いたからでしょ?どんなことがあっても神の法に背いちゃだよ? ね、ルオ=ノレス君?」
レイグはさっきと同じような答えを言った。<教会騎士>と話したのは2人しかいないが、もしかしてほとんどの騎士達はレイグのような、神への信仰心が高い人たちなのだろうか。
「どうして、僕がルオ=ノレスだってわかるんですか? メガネで顔がはっきりと見えないはずです。」
「それは、隊長のおかげだよ。」
レイグは嬉しそうに答えた。
「あなたの隊長は、高度<魔力探知>が行えるのですか?」
「そうだよ♪ 隊長は、獣ノ隊の長に就任するときに神様にお力を授けられたんだ。獣にぴったりな<探知能力>をね。たとえ、一度しか顔を見ていないぐらいの人をそのお力で、時間はかかるけど探し当てることができるんだ。そして、その力の恩恵は僕たち部下にももたらしてくれる。おかげで、無事君を見つけれたんだ♪ 」
「そんな、馬鹿な・・・。あなた達が崇拝している神は、人にとてつもない力を授けるというのですか!?」
ルオは驚き、レイグから逃げていくように後退した。
ありえない。世界で未だに観測あるいは確証されていない神の存在。<魔術連合>でも、何度も高度な魔術で観測を試みたが、結果は同じで未観測だった。世の中では、神は存在しているかどうかはわからない、という常識になっている。
そんな中で<教会騎士団>は神が存在していることを知り、そして神の力を支えることができるのだなんて、恐ろしすぎる。意味がわからない。
「罪人君ってさぁ、なんかもったいなよね。見るからにとってもいい人なのに・・・。残念だ。僕は君のために泣くことしかできない。」
レイグは涙を浮かべ、目を閉じ、拳を胸に当て、神に祈りを捧げた。
「神よ、この罪人の死後に祝福を!」
「さっきと何にも変わってねぇ! どれだけ信仰心が高いんだよ! 本当に、神様神様うるさい! 神がいるんだったら俺にも恩恵を分けてほしいもんだ!」
ルオはもう、敬語を使うのをやめた。人と話すのは苦手だからいつも敬語を話すが、こいつは例外だ。話がひとつも理解されてない。
なんだか体中に謎の力が湧き出ている。でも、今はそんなことは気にはしない。
そんなブチギレたルオを見た、レイグの顔から笑顔が消えた。
「あぁ、罪人君。その状態こそが神の法をを背いた理由だよ。なんて醜い姿なんだ。背中に生えるその白い翼が、・・・我が神を・・・、苦しませる!」
ザンっ! ブシャァァアア
「ぐっ!」
レイグは大剣でルオの首目掛けて強く、素早く振るった。ルオはなんとか躱したが、その代わりに胸や腕が大きな犠牲になった。口から血が逆流し、口内は血の味がした。片手で傷口を必死に抑えるが、全く役に立たず、手の隙間から大量の血が重力に沿って下に流れていき、地面に真紅の水溜りをつくらせている。
「はぁ・・・、はぁっ・・・。白い、翼?」
肩で荒い息をしながら、背中の方を見たが、何も翼らしきものは生えていない。一体どういうことなのか?
「見ても何もないよ。今の状態では。僕たちは君に起きていることが君や、それ以外の人に漏れさせないために、君をいち早く殺さなければいけないんだよ。」




