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ボッチ・オブ・ザ・デッド  作者: 骨肉パワー
一章 大川誠二 「終わりの始まり」
17/32

第17話

 20××年4月4日 14時00分


「…おえっ」


 市街地でバイクを走行させていた誠二がその匂いに吐き気を催す。


「ひどい景観だな…」


 街のあらゆる場所にグチャグチャ状態の死体が転がっていた。臓器がめちゃくちゃに飛び散った状態の死体。手足が欠損した状態の死体。頭がスイカのようにパックリ割れている死体。あまりにも異様な光景だ。


(ゾンビ共に食い荒らされたのか?こう…生魚を捌いてその場で踊り食いをするような感じとかか…?)


「うっ…」


 排水溝に詰まったヘドロのような臭い。こみ上げる吐き気に思わず誠二がハンドルを崩しかける。

 

「あっぶねえ…」


 力技で蛇行運転から正常な運転へと修正する誠二。


「マスクも貫通するこの醜悪な匂い…なんとかならねえかな…」


 速度を30キロ程度に落とし直線が続く大通りに出る。


「おかしい。ゾンビが一体もいない……」


 あれだけの死体があったというのに街にはゾンビが1体も見つからなかった。その事に誠二は微かな違和感を覚える。


(俺が警戒し過ぎているだけか?それとも何かが起きているのか?)


(…分からない。そもそも今の俺には圧倒的に情報が不足している)


 マンションで戦った青年を誠二は思い出す。


「まあ、警戒しなければいけないのはゾンビだけじゃないか」


(正直…ゾンビよりも人間の方が恐ろしいぜ)


 街がこんな状態だ。突然飛び出してくるヤバい人間がいるかもしれない。周囲を警戒しつつゆっくりと誠二はバイクを走らせた。


 

  20××年4月4日 15時00分


「ふう…着いた」


 目的地の寺についた誠二が安堵の息を洩らす。誠二の目的は水源の確保だ。この寺では湧き水が常時湧いている。つまりこの場所を確保できればいつでも新鮮な水を飲む事ができるのだ。


(水は非常に重要だ)


(現代社会ではその有難みは薄れてきているが、俺達人間はこれがないとたった1週間であの世行きだ)


(つまり、何があっても水だけは絶対に確保しなければいけない)


「っ…!?」


 誠二が自身の目的を再確認していると、突然、その大きな音が境内から聞こえてきた。

 

「銃声!?まさかっ…」


 その乾いた音に誠二が驚き身を縮め頭部を守るようにバイクの裏側へと姿を隠す。


「ぐっ……」


 その数秒後に再びパンッ!パンッ!という音が連続して誠二の元に聞こえてきた。


(境内から誰かが発砲してやがるのか!?)


 カン!カン!という音と共にバイクからガソリンの匂いが漏れ出し始めた。


「なっ…マズい!!」


 誠二が全力疾走で自身のバイクから離れる。そして聞こえる爆発音。一瞬で誠二のバイクは炎に包まれた。


「…っ!!」


 荷物を背負ったまま誠二が近くの茂みに飛び込み身を隠す。


「クソが…」


 手足に刺さった小枝には目もくれず急ぎ背負ったクロスボウを手に取り矢をつがえる誠二。


(音の感じからして…恐らくは警察が持ってるような5連発のリボルバーだ)


(この状況だと1発でも喰らったら致命傷になるぞ)


 クロスボウを構えつつ、茂みの中をゆっくりと移動し爆発現場から距離を取る誠二。


「すっげえ爆発!あれなら絶対死んだでしょ?」


「だな~」


(……)


 誠二が茂み越しに爆発現場へと近づいて来る2人を視認する。

 

(ハイエナ野郎共が…上等だ。そういうことをしてるとどういう目に合うのか俺が教えてやるよ)


 誠二は既に覚悟を決めた側の人間だ。たとえ相手が同じ人間だとしても容赦はしない。殺さなければ殺される。それがこの世界の新しいルールなのだ。

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