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悪意のある普遍的な思想

タナトス・ミラー

作者: レー・NULL

 人は生と死に惹かれるものです。人生という一冊の本において、それは表表紙と、裏表紙。何かを書き込むにはあまりに少なすぎる、それでも尚、一番に眼を惹き付ける。どうしても逃れられないそれから、眼を離す事など出来るものだろうか。


 そう、目を惹き付けるのです。そして、目を合わせる時を待っています。静寂の中で、静かに、振り向く事を願っているのです。オルフェウスは何を見たのでしょうか、確かに、確かに。鏡は自ら何かをすることもなく、そこに在るだけなのでした。


 見れないものを見た時に人は、恐ろしい底無し沼であり、反射、乱反射、何処までも続く連鎖反応。理解するに苦しい、ここから逃げ出すには埋まるしかない。息も出来ず、人はそれを他者にも求める。それだけ、この世界が穢れているという証拠だ。


 目を開く、すると相手も目を開く。始まりと終わりとは、善悪という話では無いのです。それと同じ事、死とは悪ではなく、ただ静寂があるのみ。究極的な静である為に、人は惹き付けられるのでしょう。ただ、休みたいだけなんです、そして、それは誰をも拒絶はしないのです。


 そう、目を惹き付けるのです。そう、見ている限りこちらをみているのです。それは安息であり、自らの中に完結するという事でもあります。少なくとも、悪意というものは他者からもたらされるものであり、これ以上の進行を防ぐものなのです。


 飛び交う悪意の矢、汚泥、酩泥、泥酔者。ケ枯れ、ハレへと誘わん。逸らせ、逸らすな。もはや未来は見出だせず、あるのは腐った心だけ。長い月日に膿んで、サナギは泥々に熔けている。それだけ、人は醜く進歩しないものであり、ここから逃げたいと思うことを否定出来るだろうか。


 また、目を開く。悪意の飛び交う地獄より、静寂ばかりの安息の方が、幾分も良いものだろう。まだ、腫瘍のようにしがみつく者は多いが、疲れたのならばいつでもそれは側にある。人が遺す一冊の本も、時の流れに朽ちていく、いつかは総じて消えていく。意識も、努力も、記憶だって残らない。何をしても無駄になる、今までの事も消える運命だ。


 疲れているのでしょう。目を合わせて、もう何も、考える必要なんて無いですし、こんな汚い世界に居なくとも良いんです。目を合わせて、そして、もう目は開かない。

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