《プロローグ》
有名なプロゲーマーが言った。
「俺はプロゲーマーになろうとしてなったわけじゃない。なんか知らんがなってたんだ。だから何かを俺に求められても困るが、称号をもらったからにはハードルが下がらないくらいには頑張るさ。」
このゲーマーが頑張り続けるせいでプロゲーマーの称号は下がるどころか上がり続けた。
22世紀現在、自分からプロゲーマーなどと言える人間はおらず、プロゲーマーは遠い存在となってしまっていた。ただ一つのチームを除いては。
「零度の雨」、2119年の4月あたりから大会でも見られるようになったチームで、メンバーは全員中学生でたったの6人(この頃は、50人ほどの大規模チームが流行っていた)だった。それも大会で姿を見せているのはリーダーともう一人だけで、ほかのメンバーは全く知られていない。
そんな「零度の雨」のメンバー全員にとある推薦状が届いた。内容は、新しくできるゲーム開発およびプロゲーマー育成学校への受験を免除するから、来てみないか?というものだった。
零度の雨のチャットで初めてこの話題に触れたのはリーダーだった。
「今回の話どう思う?」
話はそんなリーダーの質問から始まった。
「俺からしたら、スライムからレアドロップ並みの話だからな~。迷わず受けたいところなんだが。」
すぐに答えたのは、大柄な男で、プレイヤーネームは雷餓狼。タンク兼高火力担当の、つまり脳筋バカである。
「スライムからレアドロップ?なんですか、そのいかにもバカみたいな例え。」
「バカなのはわかってるでしょ?だからおいしい話に聞こえるんじゃない。」
冷静に突っ込んだのは、小柄な男キャラで、罠関連や遊撃を担当している、リンドウ。
それに対してさらに突っ込んだのは、小柄な女キャラの、ライラック。マジックキャスターで、リンドウの双子の妹である。
「結構真剣な話なのにすぐこの空気になるわよね。真面目に考えてるの?」
「まあまあ、進路のことですしみんな考えてますよ。たぶん。」
結構な威圧でみんなを叱ったのは、弓装備で軽装のデルタ。長距離武器が得意で、FPSゲームでは誰にも負けない。見ての通り、姉御肌である。
最後にデルタをなだめたのが、凛とした姿に神々しい装備をした蜘蛛ノ神。ヒーラーで、誰にでもやさしいため、聖女と呼ばれている。名前のことは触れてはならない。
「なにか、挑まれてる感じがしないか?」
リーダーのゼータが、前置きがすんだような感じでまた問いかける。
「まあ、そうだよな。こんなおいしい話、なんか戦略的な何かだよな。」
雷餓狼が考えてる感じを出してつぶやく
「何かって何ですか?でも僕も怪しい感じがしていい気はしませんね。」
「う~ん、私も学力いい方ではないから喜びたいんだけどね、、、」
双子も考えるように、押し黙る
「あたしは、どっちでもいいわよ?どっちにしろゲーム系には行くつもりだったし。」
デルタは、もう考え抜いたような感じで、平然としている。
「私は皆さんに任せますよ。皆さんが行くと決めたならついて行くまでです。」
蜘蛛ノ神はそれが当然かのように、堂々としている。
「でもまあ、リーダーの答えは決まってるみたいよ?」
沈黙の後、察したようにデルタが口を開いた。
「ああ、挑まれたと感じたなら。受けた上で勝つだけだ。相手を裏切る形で。」
「へぇ~じゃあ、どう裏切るってんだ?推薦状で学校に行くことは決まりだろ?」
みんなが裏切るの意味がわからないと、疑問符を打ち込んだ。
「そもそも学校側はプレイヤーとしての俺たちを呼んだんだ。そこで、俺はゲーム製作の方に行こうと思う。」
「そういうことですか。まあ、ちょっとした裏切りって感じですね。」
「楽しそうでいいじゃ~ん。私は乗るよーそのゲーム。」
双子が楽しそうな感じで、反応していく。
「まぁ、やるっきゃねえわな。俺は元からそのつもりだったしな。」
学力がなく、行くところがなくて困っていたこいつにとっては、選択肢はなかったらしい。
「ふふ、面白くなってきたじゃない。あたしも乗りよ。」
「私の結論はもとより決まっていますが、私も楽しみです。」
全員の結論が決まったところで、今日のチャットは終了した。
数日後、新設される学校の校長室で、二人の男が6通の封筒を読んでいた。
「そういえば、科を指定するのを忘れてましたね」
高級そうなスーツを着た男が、失敗した。という感じにため息をつく。
「でもまあ、仕方ないでしょう。彼は抜け穴を見つけるのが得意な子ですからね。どうします校長、このまま手続きしますか?」
白衣を着た男が面白そうにもう一人の男に問いかける。
「まあ、これくらいは認めないとね~。この先長い付き合いになりそうですし。」
「ほんとそうですよ。この学校に来てもらわないと困るのは、こちら側なんですから。」
一人のため息ともう一人のかすかな笑い声によって、零度の雨の6人は学校への入学が決まったのであった。




