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勉強を再開すると何故か城崎さんは俺を質問攻めにしてきた。
「あのここはどうするんですか?」
「あぁ、ここはこうして……」
「それじゃあ次はここは?」
「そこはさっきの式を応用して……」
「じゃぁここは?」
「そこは……さっき教えたと思うんだけど?」
こんな感じで間髪入れずに質問してくるので、俺は俺の勉強に集中出来ずにいた。
しかも、背後からは知り合い二人が俺に視線を送って来るし……あいつら何がしたいんだ……。
「ん、もうこんな時間か……そろそろ帰ろうか、城崎さんの両親もあんまり遅いと心配するだろうし」
「い、いえ……うちは全然大丈夫ですから」
「でも、そろそろ腹減って来る時間だろ?」
「ま、まぁ……は、はい……」
時間は既に20時を過ぎようとしていた。
正直言うと腹が減ったのは俺なのだが、そろそろ家に帰さないとあの父親が色々うるさそうだし……。
俺は鞄に勉強道具を仕舞い始め、帰りの支度を始める。
すると、またしてもアホ……もとい初白がこちらにやって来た。
「島並先輩、ちょっとこの後付き合ってくださいよ」
「はぁ、いきなりなんだよ?」
「良いから付き合ってくださいよ! 減るもんじゃないし!」
「お、おう……」
なんだこの迫力……なんかこいつ怒てないか?
てか、俺じゃなくて真木と行けよ……。
「あ、でも城崎さん送った後な、夜道を帰らせるのは危ない」
「わ、私は別に……だ、大丈夫ですけど……」
「いや、送っていくよ、何かあったら怖いし」
俺がそんな事を城崎さんに話ていると、今度は高弥が俺のところにやってきてニヤニヤしながらこう言った。
「じゃあ、みんなで飯でもどう? ファミレスなんて良いんじゃない?」
「俺はそれでも良いけど……城崎さんはどう?」
「は、はい! 全然大丈夫です!」
「そ、そっか……アホ、お前もそれで良いか?」
「アホってなんだ! 私の事か! 名前で呼べよぉ!」
そんなこんなで俺たちはみんなでファミレスに行くことになった。
俺や高弥は良いが、城崎さんは初めてあった人達といきなり食事なんて大丈夫だっただろうか?
初白とは性格全く違うし、高弥は……うっかり惚れられそうだな……。
「先輩、先輩」
「なんだ、アホ」
「だからアホって言うな!」
ファミレスに向かう道中、なぜか不機嫌な初白は俺に声を掛けてきた。
「たく……誘う相手間違ってんだろ、なんで高弥を誘わないんだよ」
「島並さんに話があったんですよ、まったく……先輩の良い後輩ポジは私一人で十分ですよ」
「はぁ? 良い後輩? そんなのどこにいんの?」
「あん? 踏むぞ、いっぱい踏むぞ!」
「何だよ……機嫌悪いなぁ……道場にだって顔を出してるんだ、お前以外にだって後輩は居る」
「ぶー……なんですか? 先輩は年下が好みなんですか?」
「なんでそうなる…さっきからなんでお前は不機嫌なんだ」
「別になんでもないですよ~!」
初白はそう言いながらそっぽを向いてしまった。
なんなんだこいつは……俺、こいつの機嫌を損ねるようなことしたか?
てか、俺はこいつの恋愛を手助けしてる立場だぞ……感謝されても機嫌をそこなうようなことはしていないと思うんだが……。
俺と初白の後ろでは高弥と城崎さんが話をしていた。
早いもので二人はすっかり意気投合したようで、仲良く話している。
これもきっと高弥がイケメンでコミュ力があるからだろうな。
「先輩、あの子と付き合いたいんですか? てか、まさか付き合ってるんですか?」
「アホ、だからさっきも言ったろ? 道場の門下生なんだよ、それ以上でもそれ以下でもない」
「まぁ、そうですよねぇ~あんな可愛い子が先輩を相手にするわけないですよねぇ~」
「どういう意味だよ……まぁ、でも確かに城崎さんは美少女だからな……俺みたいなのは相手にしないだろ……」
「先輩は幸せですよぉ~、美少女の後輩が二人も近くに居て」
「え? どこ? もう一人どこ?」
「先輩? そろそろ踏んでも良いですか? いっぱい踏んでも良いですか?」
「だから何をだよ……」




