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 翌日、俺が登校すると門の前で最近良く見る一年生が仁王立ちしていた。

 俺は何となく嫌な予感がしたので、彼女に気づかれないように気配を消して、彼女の前を通り過ぎようとする。


「あ、先輩やっときた」


「……」


「ちょっと! 無視しないでくださいよ!」


「あぁ、やっぱりバレた?」


「バレた? じゃないですよ! なんで無視するんですか!」


「別に無視したわけじゃない、お前と話をしたくなかっただけだ」


「先輩喧嘩売ってます?」


「あぁ、大安売りだ」


「じゃあ、私が全部買ってやりますよ。だからこっち向けおい」


「なんなんだよ……」


 俺は初白に呼び止められ、仕方なく初白の方を向く。

 あからさまに不機嫌そうな顔で初白は俺を見ていた。

 

「なんだよ、昨日は折角チャンスを作ってやったのに……」


「あんないきなりやられてもこっちにだって準備があるんです!」


「いや、お前のことだから、持ち前の慣れ慣れしさでどうにかなるかと……」


「好きな人の前だと緊張するのは当たり前じゃないですか!」


「にしても緊張しすぎだろ……まぁ、俺はどうでもいいけど。それより何か用か?」


「いえ、まぁ……昨日のお礼をと思いまして……ありがとうございました」


「……それで、本題は?」


「真木先輩からどうやったら連絡先を聞き出せるか、一緒に考えて下さい」


「うわぁ……やっぱりお礼ってのは建前かぁ……」


 予想通りすぎて逆につまらないな……。


「なんで俺がそんなことしなくちゃいけないんだよ」


「だって、昨日は協力してくれたじゃないですか」


「昨日は気まぐれだ、今回は自分でどうにかしろ」


「なんでですか! 最後まで責任持ってくださいよ!!」


 こいつは校門の前で誤解を招きそうなことを……。

 見ろ、登校している生徒が全員俺を見ているじゃないか。

 しかも、なんか軽蔑されてる気がするし……。


「言い方を考えろよ……連絡先なんて普通に聞けば良いだろ?」


「でも、真木先輩は女子に連絡先を教えないって有名ですよ」


「あぁ……そういえばそうだった気がする……」


 確かに初白の言う通り、高弥は女子には自分の連絡先を教えることがなかった気がする。

 中学時代にクラスの女子と交換して、大変な目にあったとか言っていた気がするが……。


「じゃあ、諦めろ」


「でも、ここで連絡先を知ることができたら、他のライバルに差をつけられるじゃないですか!」


「まぁ、連絡先を手に入れらたらの話だが……」


「……と言う訳で協力してください」


「いやだ」


「何でですか! もう私には何もしてくれないんですか!」


「だからお前は! 誤解を招きかねないことを言うな!!」


 第三者が何も知らずに聞いたら、いろいろと誤解を招くんだろうな……。

 ほら、登校中の女子生徒の視線が痛いし……。


「お願いします! なんでもしますから!」


 やめろ!

 これ以上お前は何も喋るな!

 女子の視線が軽蔑の視線に変わってるんだよ!


「あぁ、もうわかったよ! ただし今回だけだぞ!」


「え、本当ですか!!」


「あぁ、だからもう余計なことを言うな……」


 これ以上は俺の今後の学生生活に関わって来る……。


「じゃあ、先輩の連絡先教えてください! 作戦会議をしましょう!」


「はぁ……わかったよ」


 俺は仕方なく、初白に連絡先を教えた。

 ちなみに初白のメッセージアプリのアイコンは友達数名と撮ったプリクラだった。

 なんか、女子高生って感じだな……。

 対して俺のアイコンは去年の夏に買った限定アイスの写真。

 なんでこれを設定したんだ?

 俺は初白と連絡先を交換し、自分のクラスに向かった。


「おはよう」


「やぁ、おはよう。どうしたの? 今朝は遅いじゃないか」


「あぁ、いろいろあってな」


「もしかして、昨日の初白さんだっけ? その子と何かしてたの?」


「あぁ……まぁ……」


「え? そうなの?」


「自分で聞いたのに、なんでそんな驚くんだよ」


「いや、またなんか『アホか』とか言われるのかと思ったから」


「そこまで俺は辛らつじゃねーよ」


 俺が高弥とそんな話をしていると、その初白から俺のスマホにさっそくメッセージが送られてきた。


【今日のお昼、屋上に来てください! 作戦会議しましょう!!】


「……面倒だな」


 俺はそんなことを思いながら、スマホをポケットに戻した。





 お昼休み、俺は高弥に今日は用事があるといって、一緒に昼食を食べるのを断った。

 いつも一緒に食事をしているので、心なしか高弥は少し寂しそうな表情を浮かべていた気がする。

 俺は初白に言われた通りに飯を持って屋上にやってきた。

 屋上は生徒も入れるように常時解放されている。

 しかし、屋上に来る生徒はあまりいない。

 だからこそ、初白は屋上を選んだのだろう。


「あ、先輩」


「おう」


 屋上に行くと初白はフェンスにもたれ掛かって、俺を待っていた。

 手には弁当を持っており、まだ食べていないのが分かった。


「さて、それでは作戦会議を始めます」


「勝手にどうぞ、もぐもぐ」


「先輩! 真面目にやって下さい! もぐもぐ」


「お前もな……」


 まぁ、昼休みなんだし、そりゃあ飯を食うだろ。

 なんてことを考えながら、俺は初白と飯を食い、食べ終わった段階で本題に移った。

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