表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
218/228

224

「そろそろくたばれよ! おっさん!!」


「ぐはっ!!」


 大振りなった天田の隙をつき、俺は大きく下から上に拳を振り上げる。

 拳は天田の顎に当たり、天田はそのまま倒れた。


「はぁ……はぁ……」


「へぇ~」


 やっと倒せた。

 俺は呼吸を整え倒れた天田の方を見ながらそんな事を考える。

 そんな様子を見ながらもう一人の男、園田はニコニコしながら俺に近づいてくる。

 俺は咄嗟に構えるが園田はそんな俺を見た瞬間両手を上げてこういった。


「あはは、君強いね。まさか天田が負けるなんて」


「これで一対一だ」


「まぁまぁ、正直僕は君と戦う気なんてないよ」


「何?」


「いやぁ~僕も極道なんてやってるけどね、正直人を殺したり、薬を売ったり、女を売ったり、正直どれも性に合わないからさ、組をやめる為にこの仕事を引き受けたに過ぎないんだよ」


「……そう言う割には随分色々隠し持ってそうだな」


「あはは、バレた?」


 園部はそう言いながらジャケットの内側から拳銃を一丁とポケットからナイフと警棒を取り出し、俺の前に放り投げた。


「これで安心した? それじゃぁ本題に入ろうか」


「本題?」


「あぁ、僕を一発思いっきり殴ってくれないかい?」


「いきなりなんだ、お前そう言う趣味か?」


「違う違う、正直もううんざりなんだよ。誰かを傷つけるのも傷つくのも……だから、僕は君にやられたって事にしてここで伸びてようと思うんだ」


「俺を見逃すのか……」


「まぁ、そうだね。失敗しようが何しようが、この仕事で俺は組を抜けられるからね。それに君もここで変に体力を消費するのは避けたいんじゃない?」


「………」


 確かにこの男のいう通りだ。

 しかし、この男を果たして信用してもいいのだろうか?

 相手は敵、しかも今さっき出会ったばかりだ。

 信用するには相手の情報が少なすぎる。

 まだ武器を隠し持っている可能性も捨てきれない。


「さぁ、殴ってくれ。そしたら僕は君を見逃そう」


「……信用できないな」


「ははは、だよね。じゃぁこうしよう、僕を殴って先に進むだけだ。僕はもちろん君に何もしない、でも君は心配なら、そこにある僕の拳銃やナイフを持って武装しながら先に進めばいい、そうすればいきなり僕が襲ってきても対応出来るだろ?」


「………」


 確かにそうだが、このいつが何かを隠している可能性もある。

 簡単にその言葉を信じることは出来ない。

 だが、正直俺もさっきの戦闘で若干体力を消耗しているし、なるべく戦闘は避けたい。

 一か八かかけてみるか。

 俺は床に転がった拳銃を手に取り、男に向けながら先に進もうとする。


「そうそう、それでいい。あ、ちゃんと殴っていってくれよ? やられた証拠にならないから」


「あぁ、お安い御用だよ」


 俺は拳銃を構えたまま男に近づき、そのまま頬を思い切り殴った。


「うぐっ! くぅ~なかなか効くねぇ~」


 男はそのまま地面に倒れ、目を瞑った。


「これで俺はやられた伸びちまったって事になる。後はさっさと奥に進みな」


 嘘を言っている感じは無かった。

 警戒を解かないまま、俺は銃を構え、先に進んだ。

 姿が見えなくなっても園田は俺を追ってくることはなかった。


「まさか、本当に見逃すとは……」


 一体何者なんだあの男は?

 見た感じは極道というよりもホストって感じなのに、なんだかとてつもない力を感じた。

 強者が持っているオーラとでも言うべきだろうか?

 園田もそれに似たようなものを持っていた。


「さて、早く高弥と合流しよう」


 流石に俺は警戒を解き、高弥が向かった方向に足を進めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ